エアロゾル中の有機成分には,脂溶性を有するものと水溶性を有するものがある.脂溶性有機成分の分析は,一般にガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS),高速液体クロマトグラフ法(HPLC),液体クロマトグラフ質量分析法(LC/MS)などを用いて行われる.分析の前処理として,目的成分を有機溶媒に抽出し,必要によって誘導体化を行う.水溶性有機成分の分析は,純水に抽出し,イオンクロマトグラフ法(IC)を用いて分析する.あるいは,水溶性有機成分中の炭素量のみ分析する場合は,全有機炭素分析計や元素分析計を用いて定量する.
ただし,こうした方法により定量される各種の有機成分は,様々な分析法を用いて網羅的に定量し足し合わせても,熱分離・光学補正法により求められる有機物中の炭素量(有機炭素;OC)のすべてを説明することが今のところできていない.有機成分分析は,エアロゾルの発生源や動態を解明する上で非常に有効であるが,熱分離・光学補正法により有機成分全体を押さえることも同時に重要である.近年,二次元クロマトグラフやタンデム質量分析などが発展してきており,把握できる有機成分が増えることが期待される.
参考文献
長谷川就一:入門講座PM2.5 ―第2講 PM2.5の測定・分析と実態―,大気環境学会誌, 45, A61-A68,2010
伏見 暁洋ほか:連載 エアロゾル学基礎講座 ―計測― 9. エアロゾルの炭素性成分分析,エアロゾル研究,33, 183-194, 2018
(埼玉県環境科学国際センター・長谷川 就一) 2022年5月9日 ★