ストークス数は流体中のエアロゾルの慣性を特徴づける無次元数であり,気流の曲線運動にエアロゾルがどの程度追従できるかの尺度を表している。無次元数とは同じ次元を有する2 つの量の比として定義でき,ここではストークス数を時間についての比として定義してみたい。(一般には距離の比として定義している場合が多い。)
障害物のある場に,エアロゾルを含んだ流体が図のように流れている場合を考える。エアロゾルを含んだ気流が障害物を通過すると,流体からエアロゾルに外力が加わる。この時,気体分子に比べてエアロゾルは慣性が大きいために,気流と同じ方向に曲がろうとするが,気流に追従できず緩和時間 τ だけ遅れて曲がることになる。気流が障害物を通過する時間が大きい(ゆっくり通過する)場合は,エアロゾルは気流にほとんど遅れず追従できるが,通過時間が小さい(瞬時に通過する)場合は,気流に追従する前に障害物に衝突してしまう。従って,エアロゾルが障害物に衝突するかどうかは,粒子の緩和時間 τ と障害物の通過時間の比によって決まると考えられる。この比をストークス数(Stk)と呼び,次式で与えられる。
となる。また,代表径を半径でなく直径を使って,慣性パラメーターと呼ぶことがある。慣性パラメーターΨは
と定義される。慣性パラメーターとストークス数は混乱しやすいので,論文を読むときには注意したい。
参考文献
日本エアロゾル学会(編)『エアロゾル用語集』、慣性運動・沈降、42-43、京都大学学術出版会、2004.
W. C. ハインズ(早川一也 監訳)、エアロゾルテクノロジー、110-116、井上書院、1985.
日本エアロゾル学会(編)・高橋 幹二 (著)、エアロゾル学の基礎、28-30、森北出版、2003.
高橋幹二著、基礎エアロゾル工学、25-28、養賢堂、1978.
S.F. Friedlander, Smoke, Dust, and Haze: Fundamentals of Aerosol Dynamics 2nd, Oxford University Press, 2000.
W. C. Hinds, Aerosol Technology: Properties, Behavior, and Measurement of Airborne Particles 2nd, 42-46,Wiley-Interscience, 1999.
(群馬大学・原野 安土) ★