DMAの電気移動度技術は40年以上前より利用されている古い技術で 、粒子の分級や粒子径の測定、また粒径の均一な単分散粒子を取出す等の目的で使用されることが多い。測定できる粒径範囲は約1~1000 nmと幅広く、高分解能に粒子を分級できる。
分級精度が高いことから計測装置の校正などで使用されるPSL標準粒子の粒径を評価する技術としても利用されている。またDMAは日本のみならず世界的に広く利用されていることから2009年に国際規格ISO 15900 「Determination of Particle Size Distribution – Differential Electrical Mobility Analysis for Aerosol Particles」が作成され、2020年に改訂されている。
DMAの前段には一般的にインパクターやサイクロンが装備されており、測定対象外の粗大な粒子をカットする目的で用いられる。また通常では中和器と呼ばれるものが内蔵されており、対象粒子の帯電を平衡帯電状態にする目的で使用される。中和器にはイオンを放出する発生源が含まれており、主に放射性源や軟X線源、又はイオナイザーが用いられる。
DMAの2重管の外側と内側の間には清浄な循環空気(sheath air)が流れており、平衡帯電状態になった粒子と共に上流から下流へと流れていく。また、DMA内側の筒は電極(High voltage rod)になっており、0~-10000Vの電圧が印加される。マイナスに印加された電圧は帯電粒子の軌道に影響を及ぼす。[NH3] マイナス帯電の粒子は外壁へ弾かれ、ゼロ価の粒子はエクセスフロー(excess air)と共に排出される。プラス帯電の粒子は電極に向かっていく。この中の+1価のある特定の電気移動度を持つ粒子のみが電極下のスリットに向かって移動する(現実的には+2価以上の帯電粒子もごく微量混入しており、これらは多価帯電補正が必要)。スリットはDMAの出口に繋がっており、DMA下流は粒径の均一な粒子のみが運ばれる。最近ではマイナス印加だけでなくプラスに印加できるモデルも存在する。
粒子径電気移動度の関係を示した式は以下の通り
ここで n = 粒子における電子素量の数、e = 電子素量 (1.6 ×10-19 Coulomb)。 μ = ガス粘度(dyne. s/cm2)、Dp = 粒子径 (cm)、C = カニンガムのスリップ補正係数。
また、これらをDMAの寸法などに置き換えると以下の式となる。
ここで, V = 電極の印加電圧(v), L = スリットまでの電極の長さ (cm)、 qsh = 循環空気流量、 r2 = 外部管の半径(cm)、 r1 = 内部管の半径(cm)である。
(TSI社 DMA/SMPSマニュアルより)
微分型電気移動度分級器(DMA)の下流に凝縮核測定器を設置し、DMAの印加電圧を短時間で連続的に可変させることで、粒子径分布を得ることも可能である。このような組み合わせの装置を走査型移動度粒径測定装置(通称、SMPS: Scanning Mobility Particle Sizer)と呼ぶ。
参考文献
日本エアロゾル学会(編)、エアロゾル学の基礎、207~208、森北出版株式会社、2011.
TSI社(USA), Electrostatic Classifier model 3082 Scanning Mobility Particle Sizer™ (SMPS™) spectrometer model 3938 Operation and service manual, 2016
(東京ダイレック株式会社・濱 尚矢、船戸 浩二) 2022年3月31日