ガスの旋回運動により粒子に遠心力を働かせて,粒子を捕集する集塵装置がサイクロンである。サイクロンは図に示すように外筒部,内筒部,円錐部からなり,粒子を含むガスは外筒部の壁に接線方向に流入する。粒子は外筒部および円錐部の内壁に遠心力により衝突し除去される。清浄ガスは上部の内筒部から排出される。一般的なサイクロンで捕集できる粒径は数μm以上であるから,高性能集塵装置の前処理として使用する場合が多い。また,サイクロンは食品や材料プロセスでも使用されており,特に噴霧乾燥により生成した微粒子の回収に多く用いられている。さらに最近では,サイクロンを用いた掃除機が家庭で広く普及してきている。遠心分離でゴミと空気を分けるのでフィルターが汚れ難いため,従来の紙パック掃除機と比べて,長期間使い続けても吸引力が落ち難いメリットを有している。
現在,サイクロンは小型化とマルチ化により,サブミクロンの粒子も捕集が可能になってきており,今後の発展が期待されている。
(参考文献)
日本エアロゾル学会(編)『エアロゾル用語集』 、サイクロン,214-215,京都大学学術出版会、2004.
吉田 英人、最近のサイクロンに関する研究、エアロゾル研究、7(4)、319-324、1993.
化学工学協会編,化学工学便覧 改訂三版,990-994, 丸善、1968.
奥山 喜久夫,増田 弘昭,諸岡 成治, 新体系化学工学 微粒子工学,138-140,オーム社 、1992.
(群馬大学・原野 安土) 2016年5月2日 ★