2021-04
2021年 4月号 消える運命?内燃機関で動く車、オートバイ。
あのライダーが…
ライダー: へーん・しん!
バイク屋: あっ、あなたは!
ライダー: しっ!大声を出すな。私がきたからには、もう大丈夫だ!
バイク屋: あ、あの、ここは…
ライダー: かわいそうに…。こんなところに閉じこめられてたんだな。
安心しろ、連れ出してやる。
バイク屋: ど、どこへ?
ライダー: 決まってるだろ、安全な場所にだ!
バイク屋: このオートバイで?
ライダー: そうだ。早く後ろに乗れ!
バイク屋: あの…
ライダー: はやくしろ!
バイク屋: で、でも…
ライダー: いったい、何だ?
バイク屋: このバイク、二人乗りが禁止されてるバイクですよ。
ライダー: …しまった!こいつが原付バイクなのを忘れてた!
バイク屋: おじさんは、だいぶ前、定年退職した時に当店にいらっしゃった人ですね?
ライダー: それ以上しゃべるな、私の年齢がバレる。それに「おじさん」とよぶな。
バイク屋: わ、わかりました、月光仮面さん。
ライダー: …あのな、以前も言ったとおり、私はそんな古いヒーローじゃない!仮面ライダーだ!
あたらしい正義の味方だ!
バイク屋: あ、あたらしい…のですね?
ライダー: そうだ。1971年・昭和46年、大阪万博の翌年だ!
バイク屋: 50年前の…
内燃機関が消えていく
ライダー: 実は私も、スーパーカブで走るのは、そろそろ疲れてきた。
バイク屋: そうでしょう。仮面ライダーが時速30kmしか出せないのでは困りますよ。
ライダー: どのくらいの排気量のオートバイがいいのだ?
バイク屋: 125ccより大きければ高速道路も走れますよ。
ライダー: 二人乗りもできるのだな?
バイク屋: もちろんです。
ライダー: しかし、でかいバイクに乗る自信がない。もう少しこれで…
バイク屋: そんなこと言ってると、老人になってしまいますよ。
ライダー: でも、このスーパーカブは乗りやすいぞ。さすがは本田宗一郎の力作だ。
バイク屋: 50ccのバイクは消える運命です。2017年7月号でお伝えしたでしょ?
ライダー: たしかに、大きなオートバイの腹にしみるような排気音は、すごく魅力的だ。
バイク屋: そうでしょう?今なら大型オートバイが、好きなように選べますよ。
ライダー: あのな、うまく言って私にオートバイを売りつけようと思ってるのだな?
バイク屋: いいえ、そうではなくて…。
ライダー: 日本はオートバイ大国だ。4つの優秀なメーカーがオートバイを生産している。
私も10年のうちには1000ccを越えるような大排気量のオートバイに乗ることに
なるだろう。
バイク屋: それは、不可能だと思いますが…
ライダー: 失礼な人だな。あと10年もたてば私は老人になって、よぼよぼになるから、
大きなオートバイにはまたがれないと言いたいのだね?
バイク屋: いいえ、ちがいます。内燃機関で走るオートバイは、地上から消えてしまうのです。
ライダー: ちょ、ちょっと待ってえな!えげつないこと、言いないな!
バイク屋: 仮面ライダーさんは、関西の出身だったのですね?
ライダー: い、いや、動揺するとなまるのだ。オートバイが地上から消えるというのは…
本当か?
バイク屋: いえ「内燃機関で走るもの」自体が消えてしまうのです。
排気ガスが問題か?
ライダー: …排気ガスの問題か?
バイク屋: それも大いにあります。1998年にはユーロ1という規制で2サイクルのオートバイが
消えました。
ライダー: ああ知ってるぞ。あのいっぱい煙をはく単車たちだな?
バイク屋: 2007年のユーロ2という規制では、キャブレターで動くエンジンのオートバイが
全滅しました。
ライダー: それも知ってるぞ。電気的に燃料を気化させる方式にすべて変わったのだろ?
バイク屋: 2016年のユーロ4で、さらに排気ガスへの規制がきびしくなり、適合できない
多くのオートバイが消えました。
ライダー: そこで50ccの原付バイクも息の根をとめられたということだな。
バイク屋: そうです。
ライダー: 心配するな。さっきも言ったように、日本のオートバイメーカーは素晴らしい。
エンジンを高度に電子制御して触媒とか還元装置を備えた吸排気システム、
さらに低騒音のエンジンをつくりだしている。これからどんな過酷な条件を
突きつけられたとしても、大丈夫だ!
バイク屋: 実は、2024年のユーロ6では、ガソリンエンジンはもはや動かすことができない程の
条件になると予想されています。
ライダー: …どういうことだ?
バイク屋: 電動化への政治的な思惑もあると考えられています。
ライダー: 電動化?
バイク屋: そうです。2030年にはヨーロッパでは内燃機関、すなわちエンジンを搭載したものは、
四輪であろうと二輪であろうと販売することが禁止されることになっていて、
さらに2040年には、世界中で禁止されます。
日本の自動車産業が
ライダー: 日本にはたくさんの自動車会社とその関連会社があるじゃないか。内燃機関で
走るものが禁止されたら…。お、おい、たいへんなことにならないか?
バイク屋: はい、自動車産業は根こそぎ廃業に追い込まれ、日本経済はズタズタになります。
ライダー: あ、あかんやないか!どないせえいうのや?
バイク屋: 関西の表現がたびたび混ざるところをみると、かなり動揺してるようですね。
ライダー: あのな、だれが、どいつがそんなことを主導してるのだ?
バイク屋: はい、ドイツもイギリスも主導していますし、日本の菅首相も先日同様な意向を
発表しました。
ライダー: おい、ちょっとまて。日本の首相が日本の自動車産業の足をひっぱるようなこと
言うて、どないするのや?
バイク屋: 地球温暖化をくい止めること、二酸化炭素を排出しないことが最終目標なのです。
ライダー: 日本のように発電の多くを石油に頼っている国は、充電で走る車や単車に
換えたところで、国全体で排出する二酸化炭素の総量は、あまり減らないぞ!
バイク屋: おっしゃるとおりですね。トヨタ自動車の豊田章男社長も、あなたと同じことを
言ってます。
今のうちに買っておけば…
ライダー: ようし、エンジンつきのバイクがいずれ販売されなくなるのなら、
今のうちに買っておけばいいわけだな?
バイク屋: はい、そのとおりです…。
ライダー: よし、わかった。免許はないが大型オートバイを1台、今から買う契約をしよう。
バイク屋: 1台だけでよろしいのですか?もう内燃機関の単車は消えてしまうのですよ。
ライダー: …な、何台買っておけばいいのだ?
バイク屋: もう2台ほどあれば、充実した単車ライフを送れるでしょうね。
ライダー: …わかった。じゃ、これと、これも買うよ。
バイク屋: ありがとうございます。
ライダー: おお、買ったぞ!ようし、今買ったオートバイ、大切にガレージで保管して、
長持ちさせるぞ!
バイク屋: それはいいことですね。
ライダー: なあ、バイク屋、こんな大変革の時代、私はどうすればいいのだろうか。
バイク屋: 簡単ですよ。貯金するのです。
ライダー: な、なんでだ?
バイク屋: ガソリンを燃やして走るもの自体がなくなるわけですから、遅かれ早かれ
ガソリンスタンドは、どんどんなくなっていきます。
ライダー: ガソリンが…高くなるのか?
バイク屋: いずれワインなみの値段になるでしょうね。
ライダー: ワインなみ?
バイク屋: そうです。1リットル2~3千円です。
ライダー: …わ、わかった。家にタンクも備えて、ガソリンを安いうちに備蓄して…
バイク屋: エンジンで走る車やオートバイは、すぐに走るなとは言われないでしょうが、
それでも二酸化炭素を排出しながら走ります。10年か20年も過ぎれば、
走行すること自体が禁止されることも覚悟しておかねばなりません。
ライダー: お、おい、冗談じゃないぞ。そうなったら、どうすれば…
バイク屋: 当店では、そのためによい方法をご用意しておりますが。
ライダー: よい方法?
バイク屋: 今月オートバイをお買いあげいただいた方だけの特典です。
ライダー: なんだ、それは?
バイク屋: 優先的に最新型の大型電動バイクの予約をしていただくことができます。
文責:玉木英明