2020-02

文責:玉木英明

2020年 2月号 小学校の英語教育が変わる。どうすれば英語が上達する?

テレビをはさんで…

外国人 : クイントリックス。

おじさん: なまってるよ。クイントリックス!

外国人 : クイントリックス。

おじさん: 英語でやってごらんよ、クイントリックス。

外国人 : クイントリックス。

おじさん: あんた外人だろ、発音悪いね。

外国人 : Oh, maybe Nobody can understand the commercial…

おじさん: なんだって?よくわからんなぁ。しかたないから、いつものタマキの翻訳機を使おうか。

外国人 : The characters in Tamaki Times are old …おじゃましまんにゃーわ。

おじさん: このタマキの翻訳機、吉本のギャグに翻訳するのだな。

外国人 : ごめんやしておくれやしてごめんやっしゃー。

おじさん: わかったわかった、絶好調だな。

外国人 : あのねおじさん、いくらタマキタイムズの読者でも、このCMを知っている人は…。

おじさん: 1974年の松下電器のカラーテレビ、坊屋三郎のCMだ。60歳くらいのヤングな人なら、

        よく知ってるはずだよ。

外国人 : 60歳のヤング…。

小学3年生からの英語の授業

おじさん: あんた、外人だろ?

外国人 : あのう、「ガイジン」という言い方は、やめてください。気分がよくない。

おじさん: 何と呼べばいいのだ?

外国人 : 「外国人」ならまだ許せます。ただ、リーチマイケルや大阪なおみを応援する

         日本の人たちが、まだ「ガイジン」なんて言葉を発するのは、時代遅れでしょ?

おじさん: それもそうだな。ところで、わしらがしてた話は…

外国人 : この春から、小学3年生から英語が始まるのを知ってますか?

おじさん: 小学3年生?

外国人 : そうです。さらにいうなら小学5年生からは、必修教科として週に2時間「英語」が

        入ってきて、成績がつけられるのですよ。

おじさん: あのなぁ、日本の小学校で、英検準1級以上の教員は1%しかいないよ。先生が英語を

        話せないのに、どうやって教えるつもりなんだい?

外国人 : 確かに不安材料はたくさんあります。でも、とにかく始まるのです。

英語は早ければよい?

おじさん: 英語を勉強する年齢は、早ければ早いほどいいんだろ?

外国人 : それは「神話」ですね。

おじさん: どうして?年をとればとるほど、言葉は頭にはいりにくくなるぞ。

外国人 : 二ヶ国語以上を話す人たちみんなが口をそろえて言うのは、

        「外国語を話すには、母語をしっかり学んでからの方がいい」ということです。

おじさん: ど…どういうことや?

外国人 : あなた、関西人だったのですね?

おじさん: 動揺すると、なまるのだ。

外国人 : たとえば、小学生に「具体的に」という言葉はどんな意味かをきいてみましょう。

おじさん: うまく説明できる子は、どれくらいいるだろうなぁ。

外国人 : さらにその「具体的に」ということばの反対語はなんですか?

おじさん: え?なんだ?具体的の反対語?えーと、なんだっけ?

外国人 : 「抽象的に」です。では、その2つの言葉を英語に訳すと…

おじさん: そんなの、わかるわけがない。

外国人 : 「具体的」と「抽象的」などという言葉を母国語で説明できないのに、それを英訳して

        どんな意味があるでしょうか。

おじさん: そ、そのとおりだな。

外国人 : 小さい頃には母語が思考力の原点となるので、まずは母語をしっかり勉強して、

さらに母語が使われてる社会の中での習慣とか常識を先に学ばねばなりません。

おじさん: いっぺんに、たくさんしゃべったな。つばが飛んでるぞ。

小学校で教えたら、英語が上達するの?

おじさん: 小学校で時間割に英語が入ったら、英語をバンバンしゃべる子供が増えるだろか?

外国人 : 小学校で水泳やピアノを教えたら、みんな大会に出場できるような人になりますか?

おじさん: ううむ、ちがうなぁ。学校の教科と「使えるまでにして身につける」こととは

        全く別のことだね。

外国人 : 時間を十分に費やして、努力をしないと無理ですよね。ということは学校で必修教科に

        入ったから英語ができるようになるということは全くない、ということです。

おじさん: ちょっと聞いてもいいか?

外国人 : なんなりと。

おじさん: 小学校6年生までに、単語はいくつ覚えることになったのだ?

外国人 : 文科省は600~700といってます。

おじさん: かなり多いな…。This is a pen. からはじめるのかい?

外国人 : いや、もう少し実生活に役立つ表現から始めるらしいですよ。

おじさん: 中学校1年生でも「英語がわからん」子がたくさんいるのに、国語力がさらに低い

        小学生で、英語嫌いをつくりださないだろうか?

外国人 : 国立教育政策研究所のデータでは、すでに小学6年生の1割が

       「英語がきらい、どちらかといえばきらい」というアンケート結果が出ています。

おじさん: そうか。大事なことは「早く始めること」よりも、いかに「好きになるか」

       「ものにしようと意欲をもつか」だな。

興味をもち続けるには

おじさん: 英語に興味を持ち続けるにはどうしたらいいのだ?

外国人 : まず英語以外のことに、深い興味をもつべきです。

おじさん: ど…どういうことや?

外国人 : また動揺してますね。趣味やスポーツ、乗り物でも音楽でも何でもいいので、

        自分が周りの人に得意になって話ができるものをもつことが必要です。

おじさん: 英語の教科書ではダメなのか?

外国人 : あんなもん、面白いわけがありまへんがな。

おじさん: この翻訳機、とつぜん関西弁になるのだな。単車が好きな人なら英語の雑誌を

        辞書をひきながら読むし、映画や音楽なんかも興味をもってかかれば、

        英語を理解しようと必死に字幕や歌詞の訳をひもとくことになるわけだな。

外国人 : そのとおりです。英語のテストの「点数を上げるため」では、勉強する意欲を

        上げるものにはならないのです。

Show and Tell

おじさん: 趣味から英語につながる、手っ取り早い方法は何かあるかい?

外国人 : アメリカでは、子供たちが自宅から自分のお宝を持ってきて、みんなに話す訓練

       「Show and Tell」というのをよくやります。

おじさん: なんだい?それは?

外国人 : 自分の趣味に関した大切なもの、すなわち「お宝」は、自分が一番よく知っていること

でしょ。それを持ってきて、みんなに見せて分かりやすく簡単なことばで説明するの

です。とてもいいプレゼンテーションの訓練になるのです。

おじさん: なるほど。ということは、趣味やお宝が何にもない人は、日本語であろうと

英語であろうと、人に「話ができない」ということなんだね。

外国人 : そうです。だからまずは「人に得意になって話せること」をつくって、それを英語で

Show and Tell ができるようになれば、上達する早道になるというわけです。

英語がうまくなる方法…

おじさん: わたしは英語が話せないので、孫に「英語ができれば世界が広がって楽しいよ」

        といっても、説得力がまるでないのだ。

外国人 : いや、そんなことはないですよ。日本語しかできなくても、いろんな事を知っていて

話の世界の広い人は、とても大きな影響力をもっています。

おじさん: 英語の先生がおもしろい人なら、英語が好きになるだろうか?

外国人 : 「先生」が大切なのはその通りですが、それにたよれば何とかなるものでないし、

逆に教え方がへただから英語の上達が遅いというのも他力本願ですね。

おじさん: わしも英語がしゃべりたいなぁ。どうしたら、うまくなる?

外国人 : 反対にきくとするならば、どのくらいまでうまくなりたいと思っていますか?

おじさん: どのくらい…? 

外国人 : そう、うまくなって、何をしたいと思ってるのですか?

おじさん: 旅行した時に、マクドナルドで英語でハンバーガーを注文して…

外国人 : そんな程度でいいのですね?

おじさん: い、いや、国連の職員になってはたらいて…

外国人 : ずいぶんさっきの目標とはレベルがちがいますね。

おじさん: 英語を理解できれば、いい職業につけるから…

外国人 : それを達成するために、何を犠牲にするつもりですか?お金ですか?時間ですか?

おじさん: お金と時間がかかるのか?

外国人 : 京都あたりに行くと、英語のガイドをボランティアでやっている大学生が多くいます。

みんな英語習得のために、時間とお金を費やしているのです。

おじさん: 英語ができるとかっこいいし、何かに役立つから…。

外国人 : 逆に「これがしたいから英語を勉強する」という立場でないと、英語は身につきません。

「さんま」が大切

おじさん: わしの孫に英語を話す能力をつけるには…。

外国人 : 「さんま」をつくれといわれますね。

おじさん: さんま?

外国人 : 英語を勉強する「時間」「空間」「仲間」の3つの「ま」です。

おじさん: なるほど。

外国人 : さらに、雑談力(ざつだんりょく)が大切だと言われています。

おじさん: 雑談力?

外国人 : いろいろな文化の人と交流する時、仕事の話はできても、ユーモアのセンスがない、

いっしょに食事に行って何も話ができないというのでは、個人的な信頼を得られる

ことになりません。雑談こそ、語彙力とコンテンツ、広い知識が必要で、

知的レベルを相手に示す有効な手段になるのです。

おじさん: 食事の時の話題は、どんなものがよいじゃろか?

外国人 : あなたの得意な話はなんですか?

おじさん: 古いテレビのCMの話なら…。

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