文責:玉木英明
2019年 5月号 入国管理法改正。何をすべきか日本の若者。
チコちゃんに叱られる…
チコちゃん:なんで勉強しなくちゃいけないの?
兄ちゃん :なんでって…そんなの
あたりまえじゃない。
チコ: 勉強するのは、なんで、あたりまえなの?
兄 : 勉強しなきゃ、頭がよくならないじゃないか。
チコ: 字が読めて、計算ができたら、ふつうに生活はできるわよ。
兄 : 勉強がわかると、毎日の学校が楽しいよ。
チコ: 今のままでも充分に楽しいわ。
兄 : でも、友だちに成績で負けるのはくやしいよ。
チコ: 少子化で日本の若者は数が減ってるのでしょ?ライバルは少なくなる一方よ。
兄 : それは、そうだけど…。
チコ: 学校の授業も、午前中だけやれば充分じゃない?午後は休みにすれば、
学校の電気代や水道代も節約できるでしょ?
兄 : そうか…休みが増えれば、校舎もいたまないから長持ちするだろうなぁ。
チコ: 夏休みを長くして欧米なみの2ヶ月にして、さらに冬も5度以下の日は休みにすれば、
冷暖房の費用も節約できるでしょ?
兄 : そうだ…ねぇ。
チコ: 忙しすぎる先生も休養できるし、いいことばかりよ。みんなで勉強なんかやめましょう。
兄 : そ、それもそうだね。チコちゃんの言うとおりだね。
チコ: ……。ボーっと生きてんじゃねーよ!
兄 : あ、あかん、チコちゃんに叱られた。
外国人を日本に
チコ: 5歳児に勉強やめようって言われて、兄が納得してどうするのよ。
兄 : でも、チコちゃんのいうことはもっともなことだよ。
チコ: お兄ちゃん、入国管理法の改正が衆議院本会議で可決されたの知ってる?
兄 : 5歳とは思えない発言だけど。
チコ: 玉木塾で勉強してるわよ。
兄 : へぇ、だからもの知りなんだね。
チコ: じゃ、なんで、入国管理法を改めるのか知ってる?
兄 : 日本への旅行者が2800万人を超えて、入国管理官の数が足らないから?
チコ: … 旅行者が増えたのは間違いないわ。ただ、日本への出入りを管理する
イミグレーション(出入国管理)は、顔認証の機械化が進んで、ずいぶんスピーディーに
なってきたのよ。
兄 : じゃぁ、どうして法律を改めるの?
チコ: 日本で働ける人、住める人を増やそうというのよ。
兄 : 日本で働く人?
働く人を増やさないと
チコ: そう。日本の労働人口が減って、老人の割合が増え続けているのは、知ってるでしょ?
兄 : ああ、ザ・タマキタイムズ2017年4月号で読んだよ。あと30年もしたら、
若者一人で老人一人を支えなきゃならないんだろ?
チコ: その通りよ。子どもの数が増えないから、あたりまえだけれど、
これから働く人の数も増えないわ。だから、外国から優秀な「働き手」を日本に
招き入れる必要があるのよ。
兄 : そうか。それで外国人に新たな在留資格を与えるのだね?
チコ: そうよ。新しい法律では、家族もいっしょに連れてくることができるし、
更新すれば長期の滞在も可能になるのよ。
兄 : テレビで見たよ。今は日本の農業や製造業、介護の分野などで、外国人を
「技能実習生」としてつれて来ているのだけど、単純労働で気の毒な低賃金の待遇の
外国人がいるとか、ベトナムの技能実習生たちが「失踪」したとか、なんだか
問題が多いみたいだものね。
チコ: …とりあえず、ボーっとテレビ見てたわけじゃなさそうね。
兄 : よかった。チコちゃんに叱られなかった…。
働きたい国、ドイツ、韓国
兄 : 能力の高い人たちを優遇して招き入れてるドイツは、たとえば、ベトナムの人たちにとって
人気の的だと聞いたけれど。
チコ: そう、韓国も「働きたい国」として日本より人気が高いわ。
兄 : 給料が高いの?
チコ: 給料もそうだし、自分やいっしょに連れて行った家族たちへの補助や福利厚生も、
韓国は日本より進んでるのよ。
兄 : 日本だって、住みやすくて楽しい国なのに。
チコ: 今まで日本政府は、外国人に対して、日本で「短い期間」、「技能を身につけるまで」、
「住ませてやる」という態度をとり続けてきたのよ。
兄 : なるほど。政府が本腰をいれてなかったわけだね。
チコ: そうよ。だから例えば多くのベトナム人などは、日本へ来るために、ブローカーと
呼ばれる人たちに高いお金を払い、その借金を返すために、日本で低い賃金で
働き続けなければならなかったのよ。
兄 : 千葉県は、森田健作知事が、県主導で外国人が働きやすい環境をつくって、
ベトナムの人たちを受け入れるってきいたけど。
チコ: そう、日本の政治家も、みんながボーっと生きてるわけじゃないのよ。
外国人をもっと受け入れたら
兄 : 外国人が日本にくると、治安が悪くなるって…。
チコ: 誰が言ってるの?ひどい島国根性ね。その人は、きっと自分が「外国人」として
海外に行ったことがないのよ。
兄 : 日本の労働人口を増やしたいのなら、どうやったら外国の人が「働きたい」って
思う国になれるか、真剣に考えるべきだよね。
チコ: そうね。日本人は、「外国」とか「異文化」が入りこんでくることに対して抵抗感が
大きいのよ。
兄 : 日本に入ってくる外国の人たちを「移民」とは呼ばないの?
チコ: 日本政府が「移民」という言葉を使わないのは、日本人特有の「抵抗感」に
気を使っているのよね。
兄 : シリアやソマリア、アフガニスタンの気の毒な難民たちも、日本は受け入れてないの?
チコ: 2017年、法務省に申請された1万9628人の難民認定申請者のうち、日本政府が
受け入れを認定したのは20人だけよ。
兄 : 働ける人を増やしたいのなら、内戦で苦しんでる人たちを、日本がもっと積極的に
受け入れてあげたらいいのにね。
外国語の看板があれば「グローバル」?
兄 : 町内のゴミ置き場にポルトガル語やスペイン語の注意書きが増えて、
「日本はずいぶん国際的になった」っておじいちゃんが言ってたけど。
チコ: 1990年の入国管理法改正で、この30年ほどで日本に永住する外国の人たち、
特に日系の人たちが増えたのよ。
兄 : ということは、今回の入国管理法改正で、さらに世界の人たちを受け入れれば
「日本のグローバル化」が進むわけだね。
チコ: そうね。でも日本社会には、町の行事など、依然として日本人だけの
集まりを前提として、外国の人たちへの配慮に欠けてる部分があるわ。
兄 : だって、ここは日本なのだから、日本のしきたりに従うのがあたりまえさ。
チコ: その日本のしきたりを、外国の人に伝える作業を、きちんとおこなえているかしら?
兄 : …おこなえて…ない?
チコ: たとえば町のゴミ処理ひとつをとっても、市役所の印刷物をわたして
「よく読んでね」で終わってないかしら?
兄 : どうすればいいの?
チコ: まずは「外国人」という呼び方をやめて、いっしょに日本に幸せに住む「仲間」に
なる作業から始める必要があるわ。海外に住む日本人の多くは、現地の人たちに
とても親切に手助けを受けているのよ。
日本を老人国でなくすには…
兄 : 日本に永住して、働いてくれる外国の人を増やさなきゃいけないのだね?
チコ: そうよ。それで、お兄ちゃん自身はどうしようと思ってるの?
兄 : 多くの外国人がやってきて働いてくれれば、労働人口がふえて、日本も安泰で…。
チコ: あのね、世界中の人たちが日本に自由に入ってきて、平等に働けて、いろんな場所で
チャンスや権利を日本人と平等に受けられるように、社会全体が動くのよ!
兄 : いいじゃない。賛成だよ。日本は、もっと世界中に門戸を開放すればいいんだ。
チコ: そうなったら、能力の高い人たち、高度な教育を望む人たち、計算の素早い、
たくさんの言語を理解し使いこなす人たちもどんどん日本にやってくるのよ!
兄 : チコちゃん、大きな声で叱らないで。
チコ: そうなれば、日本の「勉強もしないでくつろいでいる若者」は、仕事もチャンスも、
さらにその先にある経済的に豊かな生活からも、置き去りになってしまうのよ!
兄 : や、やっぱり、日本は「外国人は入って来ちゃだめ」って鎖国をするべきだ…。
チコ: ボーっと日本を江戸時代にもどしてんじゃねーよ!
兄 : じゃ、外国人は「出稼ぎ労働者だけ」なら入ってきてもいいってことに限定しよう!
チコ: ボーっと日本人に都合のいい、勝手なこと言うんじゃねーよ!
兄 : じゃ、難民で、働ける人だけ受け入れよう!
チコ: 難民は能力が低いの?頭が悪いの?ボーっと決めつけてんじゃねーよ!
兄 : ぼ、ぼ、ぼくは、どうすればいいの?
チコ: ボーっと生きてないで、勉強して、いろんな国からやってくる人たちと率先して、
それでいて仲間になって、社会のために大いに貢献するんだよ!
兄 : やっぱり、チコちゃんに叱られた。
「チコちゃん」って、誰だ?