2010-01
文:玉木英明
2010年 1月号 寅年の新年に考える・「えと」ってなんだろう?
子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥。いつも年賀状を書
くときに気になる「~年」。「えと」とか「十二支」とかよばれるものなん
だけれど、くわしくわからない。さらに、「還暦」なんて言葉も、60才を
迎えたおじいちゃんやおばあちゃんが使っていて、何となく「60歳のこと
だろうなあ」とはわかっていても、何で暦がもとに戻るのか、どうも分かり
づらい。ようし、今月は、「えと」について知るザ・タマキ・タイムズだ!
「えと」って何?
とら : がおーっ!がおーっ!私はとら年 生まれのトラよっ!ちょっと、
そこの 肉のかたまり、おどきなさい!
うし: もぉ~っ!なんやら変な奴が きたなぁ~。
とら : 何よ!大きな図体して、ジャマよ!あんたの年は去年で終わったの
に、どうしてこんなところでウロウロしてるの?今年は私の年なの
よ!そう、とら年よ!すばらしいわ!これで私はヒロインよ!主役
なの!12年間ガマンしたわ!本当につらかったわ・・・馬や犬な
らまだしも、鳥や蛇にまで主役をとられた年もあったわ。くやしか
った・・・うっうっうっ・・・・。
うし: おいおい、泣いてるでぇ~もぉ~。ひとりで、いや一頭で、ぶつぶつ
何いうとんのや?
とら : そやからね、今年は私が「主役や」ていうてるのが、まだわからへ
んの?終わった出演者は、はよ引っ込めいうてるの!
うし: メチャいうやっちゃなぁ~。ウシ年が終わったら、なんやらいっぺん
に肩身がせまなってきたでぇ。
とら : 早くどかないと、ビーフシチューにしちゃうわよ!それとも焼き肉
がいいかしら?
うし: いくら「今年はトラ年や」いうたかて、むちゃ言うのも、タイガーに
しとかなあかんでぇ。
とら : うまいっ!座布団5まいあげて!
うし: へへっ、おおきに、おおきにぃ。
とら : まあ、去年ウシ年でがんばってたから、ちょっと大目にみてやるわ。
うし: あのなぁ、「えと」いうのは暦のことやから、何かの動物が「主役」
いうのとはちがうのやで。
とら : 「こ・よ・み」って、ティッシュペーパーをするするっと丸めて、
鼻の穴をくちゅくちゅっとする、あれのことでっか?
うし: それは「こより」やがな。なんぎな人、いや、けものやな。
とら : 知ってます・・・知ってますがな。その「こよみ」が、何で12匹
おるんでっか?
うし: そやから、簡単にいうたら、12の月に合わせて、覚えやすいように
動物をあてはめたものなんやがな。
「えと」は誰が考えたの?
とら : 「えと」は、だれが考えたの?聖徳太子?それとも、徳川家康?
うし: ちゃいまんがな。12匹の動物は「十二支」いうて、中国で前漢の時
代に年暦に用いられたのが始まりだと考えられているんや。ただ、
日本にこの十二支が伝えられたのは、日本書紀によれば、西暦553年
頃や。ほんで、日本で暦として使われたのは、さらにこの後で7世
紀に入ってからや。
とら : そうか。そやから、へんてこな動物がならんでるんやな。日本人が
かんがえたんやったら、鶴やら亀やらはいっとるやろな。
うし: そのとおりや。ベトナムの干支には水牛が入ってるし、モンゴルには
豹(ひょう)、タイには猫も入ってるんやで。
とら : ほな、日本の12匹の動物は、中国のまねなんやね?
うし: うん、中国のものをそのまま日本に移入したようなんやけど、なんで
中国でそれらの動物を採用したのかは、ようわかってへんのや。
「子」や「丑」なんて漢字には、本来動物の意味は、なかったらし
いで。
とら : そうでっか・・・ほな、ヒロインとか主役、いうのとはちがうんや
な?
うし: そうやがな。さっきもいうたように、覚えやすいように、動物の名前
を付けただけなんや。
60歳はどうして「還暦」なの?
とら : 私のおじいちゃん、60歳の「還暦」迎えて、赤い「ちゃんちゃん
こ」着てお祝いしたんやけど・・・。
うし: トラのくせに、ちゃんちゃんこ着たんかいな?
とら : 何で60年でひとくぎりで「還暦」いうんですか?還暦いうたら、
「こよみ・還る」いう意味でっしゃろ?
うし: じつは「十二支」の他に、「十干」という考え方があるんや。「干」
は木の幹を意味し、さらに「支」は、その幹の先の枝を、表わすん
や。10個の干は、甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸や。
とら : ちょ、ちょっとまってえな。十二支いうたら12、十干いうたら
10の単位のくぎりやろ?還暦の60歳とは関係ないがな。
うし: きのえ・子から始まって、きのと・丑、ひのえ・寅…と、十干の方は
10個の言葉が1サイクルで登場し、もう一方の十二支の方は、
12の言葉が1サイクルで登場するやろ。ということは…そうやが
な、10と12の最小公倍数が60やから、ひととおりの組み合わ
せが全部終わるまでに、60通りの組み合わせがあるのや。
とら : 最小・・・・工場・・・椅子・・・?
うし: 最小公倍数やがな。あんた、ちゃんと小学校卒業したんかいな?
とら : わたしの時は、とらは義務教育でなかったんや。
うし: 2人の女の子と3人の男の子が順番にペアを組んでダンスをおどるの
に、最初のペアにもどるのは、何人目や?
とら : A-a、B-b、A-c、B-a、A-b、B-c、A-aああ!
6番目や!
うし: そうや、そやから2と3の最小公倍数は6やというのや。
とら : そうか!「きのえ・子」の年に生まれた人が、2回目の「きのえ・
子」の年を迎えるのに60年かかるから、60才という年齢を、「暦が
ぐるりとひと回りして還る」という意味で、還暦と言うんやな。
うし: いっぺんに、3行しゃべったな。あんた、なかなか飲み込みがよろし
いな。
とら : えへへ・・・ありがと・・・おーきに・・・てれるな・・・。
うし: そやから、12年に一回の年をあんまり気にせんでもええ、いうこっ
ちゃ。
ひのえ・午の年の出生率は低い!
とら : そやかて、「トラ年生まれの女性は強い」とか、「ウシ女は楽をす
る」ておばあちゃんに習いましたでぇ。
うし: 十二支にそれぞれ動物名があてはめてあるから、俗信や迷信も多いん
や。その年に生まれたひとが、全員そんな性格を持つわけもないや
んか。
とら : 血液型といっしょやな。「O型の人はどんぶり勘定だ」とか「B型
には変人が多い」とか、話題に上げておしゃべりを楽しむのやね。
うし: そうや。そやけど、縁起のいい話ならともかく、縁起の悪い話にはあ
まり巻き込まれたくないと思う人は多くて、実際に、ひのえ午の年
の出生率は低いんや。
とら : ということは...そうか!わかった!ひのえ午の年にに生まれれ
ば、大学への進学も、就職も、ライバルが少なくなって、ぐっと楽
になるはずやんか!
うし: そのとおりや。何事もヒトの、いや、他の動物の逆をいくように心が
ければ、有利なことは多い、いうこっちゃ。
とら : なあ、教えてんか!つぎの「ひのえ午」はいつなんですの?
うし: 次は、2026年や!あんたも子供を持つなら、絶対この年やというこっ
ちゃやがな。