2015-02
文責:玉木教育企画
2015年2月号 水と安全とトイレ。日本では無料?
ベルギーからやって来たお客様。
お巡りさん:ちょっと、そこのぼうや!待ちなさい!
小便小僧 :Wat is er met jou?
お巡りさん:あれあれ、外国の人やね。ようし、玉木タイムズでいつも出てくる翻訳機 を使って…あーあー、「坊や、待ちなさい!」
小便小僧 :Heb je me bellen…僕のことでっか?
お巡りさん:いつもの通り、この翻訳機は関西弁に翻訳するのやなぁ。
小便小僧 :おっちゃん、何かようか、ここのか、とおか?
お巡りさん:あれあれ、夢路いとし・喜味こいしのギャグまでかまされたでぇ。
小便小僧 :おっちゃん、ちがうでぇ。中田ダイマル・ラケットのネタやがな。
お巡りさん:そ…そうやったかな?あのな、私は警察官や。とにかく、ちょっと
待ちなさい!
小便小僧 :おまわりさん、何かご用でっか?
お巡りさん:あのな、いくら小さい子やいうても、町の中で、すっ裸でおしっこを
したら、いけません。
小便小僧 :すんません。僕はなぜか、いつもおしっこがしたくて、400年もおしっこを
し続けています。
お巡りさん:長いこと、おしっこをしているんやね。まあ、止まらないのなら仕方が
ないなぁ。ぼうや、どこから来ましたんや?
小便小僧 :ベルギーからやってきました。
お巡りさん:ほう、遠くから来たんやね。名前はなんていうの?
小便小僧 :ジュリアンといいます。
お巡りさん:可愛らしい子やね。でも、こっち向かないでね。私にかかるからね。
小便小僧 :すみません、止まらないんです。
お巡りさん:さっきからあっちへ行ったりこっちへ来たり、何をさがしてるの?
小便小僧 :はい、公衆トイレを探してるんです。僕の国では公衆トイレがあって、
入口に人がいて50円ほど払わなくてはいけません。今、僕はお金の持ち
合わせがないので、無料で入れるトイレを探しているんです。
お巡りさん:駅のトイレなら無料やよ。
小便小僧 :お金を持っていないので、改札口に入れませんでした。
お巡りさん:駅の人に一声かければ、改札口を特別に通してくれたやろうに…。
小便小僧 :日本語が、しゃべれないんです。
コンビニエンス・ストア。素晴らしいお店。
お巡りさん:コンビニエンスストアに行けば、トイレは無料や。
小便小僧 :日本中にある、あの「コンビニ」ですか?
お巡りさん:そう、そのとおりや。
小便小僧 :本当ですか?!では、どこにでも無料トイレがあるのと同じではない
ですか!
お巡りさん:その通りや。…あのな、こっちに正面を向かなくても、ええよ。
小便小僧 :どうしてお金を払わずにトイレを使えるのですか?
お巡りさん:こっちから逆に聞きまっせ。なんでトイレに、お金を払いますのや?
小便小僧 :だって、トイレを建築するのも、美しく保っておくのも、とても大変な
ことでしょう?もちろん、排泄物を処理する施設、水を流す施設、メンテ
ナンスやも掃除する人にも、しっかり費用がかかるはずです。
お巡りさん:それは理解できるよ。ただ、日本のコンビニエンスストアでは、「トイレ
を貸してください」って入っていった人は、たいてい「ありがとう」の
しるしに何か買っていってくれるのだよ。
小便小僧 :買わずに知らん顔してトイレだけ使っていく人もいるでしょう?
お巡りさん:もちろん、そういう人もいるよ。でも「心ある」人たちも、多い。
小便小僧 :店の中で自由にトイレに出入りできることが信じられません。防犯上
良くないのではないですか?
お巡りさん:どういうこと?
小便小僧 :店の品を盗んでやろうと考えている人なら、トイレの中に商品を持ち
込んで、服の中に隠して店の外に持ち出すことくらい簡単だと思うのです。
お巡りさん:その可能性はあるね。マナーの悪いお客様に困り果てている店もある。
売り物の雑誌をトイレに持ち込んで読みながら用をたす人や、ゴミや変な
ものをトイレにつまらせて、知らん顔して立ち去って行く人も数多くいる
らしい。でもね、ごく一般的にいえば、この国の中では、マナーを守る人が
多いのや。
小便小僧 :先日も郊外の道で、野菜や卵が道端の停留所に置いてあって、横に
「代金をいれてください」って箱がありました。驚くことに中にお金が
入っていました。お金を、いや、置いてある野菜や卵も、持ち去っていこう
という泥棒はいないのですか?
お巡りさん:もちろん、日本にも泥棒もいるし、万引きもいるよ。でも、世界中で最も
強盗は少なくて、夜の道も安全な国のひとつだよ。
小便小僧 :駅で、ティッシュ・ペーパーを配っている人がいるのに、通り抜けていく
人たちは、受けとらないんですよ!何度も行き来すれば、何十個でも
ティッシュが手に入るじゃないですか!
お巡りさん:そうだね。でも、そんなことしてティッシュペーパーを集める人は
「はしたない」って私たちは考えるんだ。
食べ放題、飲み放題のレストラン
小便小僧 :先日レストランに行きました。
お巡りさん:ほう、いろんなところに行ってるんだね。
小便小僧 :お客さんが、「食べほ」に「飲みほ」つけて4人分、と注文してました。
お巡りさん:食べ放題、飲み放題のことやね。
小便小僧 :そうです。なんと、その店は、ある金額を支払えば、2時間食べ放題、
しかもお酒やビールまで飲み放題なんですよ!
お巡りさん:あまり、大きな声をださないでね。それから、こっちに正面をむけない
ようにね。
小便小僧 :こんな店はヨーロッパでは見たことありません!
お巡りさん:そうだね。たくさん食べる人と、少ししか食べない人とがいて、
平均したら、あれくらいの金額で「もうけが出る」ということやろうね。
小便小僧 :ガバガバ飲み食いして、カバンの中に鍋かタッパーウェアを忍ばせて
いって、2~3日分の食料を確保して帰ってやろうなんて人はいないの
ですか?
お巡りさん:はっはっは。いるかも知れないね。でも、そんな人、二度とその店には
行けないでしょ?日本に住む人たちは、そんな、はしたないことをして
まで食べるものを家に持ち帰ろうなんて考えないのだよ。
小便小僧 :逆に、欲張ってたくさんの食べ物を注文して、大量に食べ残して帰る人は
いないのですか?
お巡りさん:そのレストランに嫌がらせをしようとか、暴力でそのレストランを潰して
やろうと考えている人たちが、大量の食べ残しをしないように、食べ放題の
注文では必ず「大量の食べ残しには料金をいただきます」と声をかけるね。
小便小僧 :日本に住む一般の人たちは、本当に奥ゆかしいのですね。
お巡りさん:悪いことをしたら、必ず神様が見ていて、バチが当たると考える人が
たくさんいるのや。
小便小僧 :太鼓をたたく、あの「バチ」ですか?
お巡りさん:ちがうちがう。「罰があたる」と書いてバチがあたるというんだ。神仏の
天罰が下るということだよ。ヨーロッパでもそんな表現があるでしょ?
小便小僧 :はい、あります。でも、これほど徹底して「持ち去られる」ことに対して
「無防備」に近い状態の国は見たことがありません。
道の駅にパーキングエリア。美しく安全。
お巡りさん:無防備?
小便小僧 :はい。高速道路のパーキングエリアで、オートバイに乗った人たちが
自分の単車を停めてレストランに入っていくのを見ました。
お巡りさん:単車でツーリングを楽しんでいる人たちだね。彼らがどうしたの?
小便小僧 :オートバイの上にヘルメットはもちろんのことジャケットや無線機器、
カーナビまで置いたままにしてレストランに入っていくではありませんか!
お巡りさん:そうだね。「盗られる」ことに対して、気を配る必要がほとんどないの
だろうね。
小便小僧 :ヨーロッパでは、鍵をかけた自動車でも運転席の前の見えるところに
カーナビを置いたままにしていくと、窓を割られてカーナビを持っていかれ
ます。だから、取り外せるカーナビは、車から離れる時には、必ず持ち歩か
なければなりません。
お巡りさん:日本人が駅や空港で「置き引き」の被害にあいやすいのは、この
「超・安全」環境が原因かもしれないね。
誇るべき日本の公衆トイレ。
小便小僧 :もう少し、トイレについて聞かせてください。
お巡りさん:ああ、いいよ。何でも言ってみて。
小便小僧 :日本の高速道路や道の駅のトイレ、あの美しさは、いったいどういうこと
ですか!
お巡りさん:あの、こっちに正面をむかないでね。
小便小僧 :どこに行っても、すごくきれいで、トイレの入り口には、日に3回、誰が
責任をもって掃除をしたか、名前まで書いてありました。
お巡りさん:ああ、ほんとうに気持ちのいいトイレが多いね。日本では、水と安全、
トイレは無料だと考えてる人も多いね。
小便小僧 :トイレに落書きをする人や、トイレットペーパーを持ち去る人はいないの
ですか?
お巡りさん:もちろん、ゼロとは言い切れないね。それに、ガムや吸殻については
まだまだマナーがよくない人たちがいる。掃除をしてくれる人たちだけに
頼るのではなく、一人ひとりが気をつける、自分のものと思って公共の
ものを使うようにすることが大切だよ。
小便小僧 :おまわりさん、いろいろ教えてくれてありがとうございました。実は、
僕はベルギーで、通常は水を噴水しているのですが、ベルギーのビール会社
「デリリウム・トレメンス」のイベントでは、ビールを噴水するんです。
今日は、特別におまわりさんのために、ビールを噴水します。さあ、飲んで
ください!
お巡りさん:あ、あ、ありがとう…。