2016-03

文:玉木英明

2016年 3月号 太陽光パネル、高速道路に敷きつめたら

童子(わらべ)とホタル

童子 :ほー、ほー、ほーたる来い、あっちの水は苦いぞ、こっちの水は甘いぞー。

ホタル:…いやなチビッ子が来た。知らん顔したろ…

童子 :こっちの水は甘いぞぉー。

ホタル:…目ぇあわさんとこ。

童子 :こっちの水は甘いぞー!

ホタル:…しらんふり…。

童子 :こっちの、みぃーずは、あーまいぞぉ!

ホタル:…じっとしてよ…

童子 :こっちの、みぃーずは、あーまいぞー!

ホタル:…。

童子 :こっちのみぃーずは、あーまいぞー!

ホタル:わかった、わかった、しつこい奴や!そっちへ行ったるから、大きな声を

だしないな!

童子 :やっと来てくれたなぁ。いじわるなんやから。

ホタル:あのな、ぼくは最近いそがしいのや。チビッ子になんか付き合ってられへんのや。

童子 :ほたるが、いそがしいことなんか、あるもんか。

ホタル:あのなぁ、僕のおしりは光るのや。英語ではファイア・フライ、闇に灯る希望の

光や。蛍雪の功いうたら蛍の光で努力して得られた大きな成功やで! 

童子 :ほたるの光いうたら、お別れの悲しい歌や。火垂るの墓(ほたるのはか)いうたら、

戦後のかわいそうな兄弟の話やし、高倉健の「ホタル」は、不治の病になった

悲しい妻の話や。

ホタル:…ちびっこのくせに、よう知ってるやないか。

童子 :ぼくは、天才クイズで天才賞をとったんや。      →天才クイズ? 昭和の部屋へ行こう!

ホタル:古い…半世紀も前にやってたテレビ番組や。

童子 :あんたも、ホタルのくせによう知っとるやないか。

ホタル:とにかく、ぼくらホタルが暗い夜道にいるだけで、道が明るくなる。

     街路灯の代わりになるのや。

童子 :知りまへんのか?街路灯はなくなるかも知れまへんのやで。

ホタル:な、なんやて!?

ソーラーパネルを道路に敷きつめたら

童子 :道路で発電する太陽光パネル、ソーラーパネルが開発されたんや。

ホタル:…どういうことや?

童子 :道路の土台の上にソーラーパネルを敷き詰め、ソーラー発電道路を作ろうと

いうのや。

ホタル:道路にソーラーパネル?ばかな!

童子 :アメリカのScotto Brusaw(スコット・ブルーソー)夫妻がSolar Roadway社 

いう会社を設立して、2009年にはアメリカ連邦運輸省(USDOT)から、10万ドル               の予算を得てすでに実現に向けて走り始 めてるのや。

ホタル:何をいうてますのや?そんなもんで、いくらも発電なんかできまへんやろ?

童子 :アメリカを走る高速道路をすべて12インチ四方のソーラーパネルでおおったら、

1枚が7.6kw発電すると計算して、アメリカの電力をほとんどまかなえるという

のや。

ホタル:…ほんまかぁ?

童子 :道路かて変わるでぇ。センターラインや速度制限なんか、様々な道路標識や

矢印も道路にLEDライトを埋め込めるし、さらにヒーターを埋め込めば、道路の

上の雪も溶かすことができる。

ホタル:除雪が必要なくなるのやね?

童子 :そうやがな、そうやがな、そうやがな。

ホタル:おっ、中田ダイマル・ラケット のフレーズ、久しぶりやがな。

童子 :おおきに。

クラウド・ファンディング、期待と投資

ホタル:あのな、ホタルのぼくが心配することでないかも知れへんけど、道路の上が

ガラスなんて、つるつるで滑ってあぶないがな。

童子 :だいじょうぶ、今のアスファルト舗装と同じくらい滑りにくいガラスで、

ざらざらにコーティングするのや。

ホタル:道路の上なんて、泥水で汚れるやろ?

童子 :光触媒で、表面が汚れないような技術も考えられてる。道路をすべてソーラー

パネルの屋根でおおってみることも考えた。ただ、コストの点で屋根より舗装を

すべてソーラーパネルにする方が、ずっと安いらしい。

ホタル:トラックが走れば、すり減って磨耗するし、その前に重たいトラックがのったら、

割れてしまいまっしゃろ?

童子 :100tのトラックでも大丈夫なように設計してあるのや。今年6月には、製品化に

向けてIndiegogo で資金調達のキャンペーンを実施したら、技術部門で過去最高額

となる220万ドル(約2.3億円)を獲得しましたでぇ。

ホタル:なんや?そのインディー・ゴーゴーいうのは?

童子 :インターネットで不特定多数の人から資金を調達する、今話題の「クラウド・

ファンディング」いうやつでっせ。

ホタル:そんな怪しげな投資なんか、誰もしまへんで。

童子 :さっきからいうてる、地面に敷き詰めるソーラーパネル、欲しいと思いませんか?

ホタル:そら、売ってるのなら買いたい。

童子 :ほな、買ってください。

ホタル:…おかしなことをいうチビッ子や。まだ、このソーラーパネル、完成してないの

でしょ?

童子 :だから、今からお金を払うことでこの製品に「投資」をして、できあがったら、

実際に投資した人に有利に売ってくれますのや。新しい投資獲得の方法でっせ。

ホタル:…おもしろいやないか…。

発電所は…

ホタル:道路に敷き詰めたソーラーパネルの発電が成功したら…。 発電所はどうなります

のや?

童子 :いりまへん。不要でっせ。

ホタル:ということは、火力発電所は…

童子 :いりまへん。石油や石炭を燃やさなくてもよくなります。二酸化炭素で地球が

温暖化していくのを食い止めることができるのです。

ホタル:原子力発電所は…

童子 :いりまへん。地震も津波もこわいことありまへん。

ホタル:自動車のガソリンは…

童子 :いりまへん。道路自体がが発電してくれますのや。充電ステーションをいろんな

ところに作って、電気自動車を走らせればええのです。

どうした、電子立国日本。

ホタル:ええことだらけやないか!アメリカのスコット・ブルーソーさん、がんばれ!

童子 :…そこが、ちがう。

ホタル:なに?どういうこと?

童子 :そやから、何で日本人が指をくわえてみてるのや?あかんがな、電子立国「日本」

ががんばって作り上げなあきまへん!

ホタル:なあ、ちびっこが大声だしないな。技術的には日本のソーラーパネルは優秀なん

でっしゃろ?

童子 :ソーラーパネルの発電量で比較すると、アメリカのファースト・ソーラーが世界で

一番や。

ホタル:2番は?

童子 :…残念ながら、中国のサンテック・パワーや。

ホタル:日本は?

童子 :3番にシャープがおるのやけれど、4番の英利も5番のトリナ・ソーラーも中国や。

ホタル:あかん…あかんやないか…。日本が、もっとがんばらな…

童子 :去年の10月に千葉の幕張メッセで開かれたシーテック・ジャパンに、ソニーも

東芝も日立も出展しなかった。

ホタル:日本は…どうなってしもたのですか?

童子 :世界中の人が欲しがるような、素晴らしいソーラーパネルを、日本が作りださんと

あきません。そのためには日本の次世代、私ら若者が、しっかりと勉強せなあきま

せん。

ホタル:あんた、ちびっこのくせに、しっかりしてますなぁ。なんやら、あんたについて

行きたくなってきました。おねがいや、僕を連れて行ってんか。

童子 :僕は、どちらかというと蝉みたいな賑やかな虫が好きや。君らホタルは鳴きまへん

やろ?ジージー鳴いたら一緒に連れて行ってやるのに。

ホタル:「鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が身を焦がす」いいますやろ。

(口に出さずに想い焦がれる恋愛のほうが、熱いものです)

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