2010-09
文:玉木英明
2010年 9月号 10分の1に減ってしまったさんま。
熱気で焼けたレタス。9月は大丈夫か?
レタスの高騰、不漁のさんま
さんま:いち・にっ・さんま、
にー・にっ・さんま、
お嫁、お嫁、
おーよめさんま~♪
レタス:誰かしら?古い歌を、しかも、大きな声で歌っているのは。
さんま:ふっふっふっ…。今日の僕は、すっごくかっこいい登場のしかたを
しちゃってるね。まるで、「郷ひろみ」だ。「およめサンマ」とい
う歌は、まさに僕のために作られた歌じゃん。
レタス:あのねぇ、それをいうなら「お嫁サンバ」やないの。30年も前に、
はやった曲やよ。そのころ青春のまっただ中だった人は、もう50歳
よ。現代の青少年はそんなレトロな曲は歌わへんわ。
さんま:ごちゃごちゃ、うるさいなあ。僕がいい気分で、JPOPを歌ってる
のに。僕はサンマだ。2匹でもサンマだ。
レタス:…(汗)あんたのギャグ、素直に笑えへんのはどうしてかしら。
さんま:あんさん、誰なんでっか?
レタス:あら、あんたも関西人、いや、関西魚やね。
さんま:バレたら、しょうがない。ほんまは、大阪の天保山の海で泳いでた
んや。ぎょうさんの仲間がおったはずやのに、みんなどこかにいっ
てしもた。あんた、魚か?
レタス:やめてちょうだい。あなた達のような生臭い魚類じゃないわよ。
私は、野菜の中の野菜代表「ミス・レタス」よ。青くてシャキシャキ
していて、サラダの中のヒロインってところね。
さんま:なんや、僕のおばあちゃんは「ちしゃの葉っぱ」いうて呼んでたで。
レタス:やめて!そのひらがなで、しかもマルのついた「ぱ」で終わるよう
な呼び方だけは、いやなのよ!
さんま:わぁ、怒った怒った。や~い、葉っぱ、菜っぱ、らっぱ、出っぱ、
くるくるぱ~!
レタス:うっうっううう…いじめられた…。
さんま:ごめん、ごめん、泣きないな。なんぎな人、いや、菜っぱやなぁ。
レタス:また「菜っぱ」いうた…!
さんま:ゆるしてんか。君、みずみずしくて、かわいいよ。
レタス:ほんま…か…?
さんま:ほんまやて。
レタス:頭なでて、よしよし言うて…。
さんま:なでなで、よしよし…。
レタス:よーし、元気出てきたわ。おい魚類、よう聞いてなあかんでぇ。
さんま:えらい変わりようやなぁ。
「規格外野菜」の活躍
レタス:私らレタスだけを使ったサラダは、英語で「ハネムーンサラダ」て
言うんやよ。Lettuce only、もしくはLettuce alone(レタスだけ)
の発音をLet us onlyやLet us alone(私たちだけにして)にひっか
けて、二人だけでラブラブで食べるサラダいう意味で、「ハネムー
ンサラダ」なんて素敵な名前がついているのよ。すっごくハッピー
で甘い二人だけの恋の味よ。
さんま:いっぺんにようけしゃべりましたな。ちょっと、あんた顔色悪いの
とちゃいまっか?
レタス:うっ!な、な、なんで、わかりましたんや?
さんま:世間では大騒ぎやがな。きびしい暑さで特に山梨県あたりでは、
レタスだけやない、カリフラワーやらキャベツやら、みんな色が
変わってしもて、ほとんど出荷できないほどひどくて全滅状態いう
話や。みーんな商品にならんほど「ぶさいく」やから、捨てられる
運命やと騒いでまっせぇ!
レタス:ヒトの顔色が悪いからいうて、そんなひどいこと言わんでもええや
ないですか。甲府なんか9日間連続猛暑日、平年の気温を6度も上
回ってまんのや。私らレタスやカリフラワーの花のつぼみが熱気に
あおられて、黒く変色してしもたんや。
さんま:農家の人らは困ってまっしゃろ?
レタス:曲がったキュウリさんや、傷つきトマトさんらは、「規格外野菜」
いうて、形の整ってない野菜として売られてる。消費者が、「形は
どうでもいいから安く」いうて、こぞって買うていってくれる種類の
野菜はええでぇ。ところが、わたしら菜っぱみたいに、色がかわって
病気になってる野菜は、なんぼ安くしても、売れまへんのや。
さんま:自分で「菜っぱ」いいましたな。
レタス:そういう、あんたらサンマかて、日本の近海にほとんどおらんよう
になってしもたやないですか。例年1000トンある北海道のある港の
サンマの初水揚げが、今年は100トン少々しかなかったいう話や。
例年の1割しかとれてない「記録的な不漁」や、いわれてまっせ。
さんま:うっ!な、な、なんで、レタスのあんたが知ってまんのや?
レタス:私がならんでた、八百屋のテレビで、NHKが言うてましたがな。
あんたかて、群れからはずれてる、規格外の小さいさんまでっしゃ
ろ?160グラムもないサンマなんか、「しょぼくれたサンマや」いう
てだれも相手にしませんでぇ。
さんま:「しょぼくれ」とは何でっか!ぼくらは秋の食卓の王様やありまへ
んのかっ!
レタス:怒ったらあきまへんがな。ほんで、つば飛ばしないな。
さんま:さんまと大根おろしが口の中で広がる幸せを、あんたはどう考えて
まんのやっ!
レタス:ごめん、悪かったって。もう言わへんから…。おねがいや、つば飛
ばさんといて。
さんま:日本人の秋の味覚を取り戻すために、民主党が早く円高に対応せな
上海万博は終わってしまいまっせっ!
レタス:つばだけやない、だいぶ、暑さで頭が混乱してまんなぁ。
さんま:海水の温度が高すぎるんや。いつもと、あまりにもちがった環境に
なってしまったんで、群れをつくれへんようになってしもたんや。
レタス:一匹500円のサンマなんて、魅力あらへんで…。
さんま:あんたに言われたないわ。1個300円のレタスかて、魅力なんかあら
へんで…。
地球温暖化の恐ろしい影
さんま:レタスさん、なんぼなんでも、ちょっと暑すぎるとは思いまへんか?
レタス:そや。そこが問題や。地球温暖化が、すべてを狂わせてるんや。
さんま:ここ何年かの間でさえ、気温や海水温の変わり方が尋常やない。
レタス:鈴鹿でも、磯山の中ノ川で、数万匹のコイやフナが死んでた事故が
8月19日にあったばかりや。
さんま:水温が上がりすぎて、中に溶けてる酸素の量が少なくなったことが
原因や、いうこっちゃ。
レタス:ロシアかて、1ヶ月以上続いた猛暑で、森林火災が起きてる。各施
設の周辺や、原子力発電所の事故のあったチェルノブイリにも山火
事がせまったんや。泥炭層にも火がついて、モスクワは煙で、もう
もうとした日が続いた。
さんま:きっと地球さんが、怒ってるんや。だれかが、地球さんにあやまら
んとあかん!
レタス:ふっふっふっ…。知ってまっせ~
さんま:何や、変な声だして?
レタス:さんまさん、あんた英語でsaury(ソーリー)やろ?
さんま:そうや。それがどうした?
レタス:ごめんなさい、残念だという意味のsorry と発音がいっしょや。と
いうことは、あんたは生きた「ごめんなさい」いうこっちゃ。
さんまさんらが「ソーリー、ソーリー、ごめんなさい」いうて泳いだ
らきっと地球さんかて機嫌を直してくれはるにちがいないでぇ!
さんま:そんな、アホな…。