2012-08

文責:玉木英明

2012年8月号 三重弁。東西の中間、ユニークな言葉。

松尾芭蕉は三重出身

芭蕉:古池や蛙飛びこむ水の音。…イェ~イ、

は・い・く!私は、三重県の出身やに。

伊賀の出身やに。エム・アイ・イ~!

みえ~みえ~!見えてなくてもみえ~!

ミー:なんで、ハイテンションな人が俳句なんかうたってるのよ!それに、

私の名前を気安く呼ばないでよ!あんた、だれよ?

芭蕉:わしか?わしは俳人だ、は・い・じ・ん、イェ~イ。

閑さや岩にしみ入る蝉の声。

ミー:廃人?薬物中毒にでもなっちゃったの?

芭蕉:ちゃいまんがな。俳句をよむ人を「俳人」いいまんのや。

名月や池をめぐりて夜もすがら。

あれれ?そういうあんたはムーミンに出てきた人に、似てるね?

ミー:私の名前はMIE(ミー)よ。今日のタマキ・タイムズの話題が「三重」

だからって、フィンランド航空にのって、わざわざやってきたのよ!

芭蕉:ウェルカム!ミーはみーかんのミー、アイ・マイ・ミー、

ドゥユーノウ・ミー?

ミー:あなた、いつもそんなにハイ・テンションなの?うらやましいわ。

芭蕉:人生は楽しいで~。オゥイェ~!

夏草や~、つわものどもが夢の跡。

ミー:何だか、それにしては、よんでる歌が静かな趣のある俳句よね。

芭蕉:あ・り・が・とう!5つでも「とう!」デンプンを分解したら「とう!」

五月雨をあつめて早し最上川。

ミー:あなたの、ギャグは、素直に笑えないわね。

芭蕉:それにしても、あんさんは少女やなのに、老けた顔つきでいつも

文句ばっかり言うてますなぁ。

ミー:そうなのよ。だいたい「ミー」って呼ばれてるのは日本だけで、

英語ではLittle My(リトル・マイ)ってよばれてるわ。「三重県」を

英語でMie-ken って書いたら「マイエ・ケン」って発音する外国人も

たくさんいるわ。

芭蕉:いっぺんに、ようけしゃべりましたな。実は、僕は三重県の生まれで

育ちで、三重弁でしゃべるものやから、たとえ日本語をよく勉強した

人でも、外国人は僕の言うことを理解しにくい、言われてますんやに。

ミー:…そうなの?いいわ。じゃ、ちょっと三重弁で私に話しかけてくれる?

むつかしい?三重弁

芭蕉:わかった。さあ、ミーちゃん、このおかし、食べない。

ミー:あ、そう…。

芭蕉:せやから、このおかし、食べない。

ミー:…だから、わかったわ。…。

芭蕉:いや、食べないって、おかしを、すすめとるのやで。

ミー:どう聞けば、「このおかし、食べない」が、すすめてることになるの?

芭蕉:アクセントの位置が問題や。「たべない」というと、「たべてね!」

とすすめてるのや。

ミー:じゃ、「たべません」という時はどうやって言うの?

芭蕉:「食べやん」というのや。

ミー:変なの!

芭蕉:まあ、ええわ。ほな、カップヌードル一緒に食べよまい! 

ミー:ちょっと、待って。それは、カップヌードルを食べよう!と誘ってる

のか、それとも「決して食べるものか!」と自分をいましめているのか

どっちなの?

芭蕉:ぼくは「食べよ」いうて、誘てるんや。はがしたラップは、ほっとい

てな。もえやんごみやで。

ミー:わかったわ。ほっとくわ。

芭蕉:ちがうでぇ、「ほっといて」て言うたやろ?

ミー:だから、ここに手もつけずに放置してあるじゃないの?

芭蕉:ちゃうちゃう!

ミー:え?犬に与えるの?

芭蕉:ちゃう、いや、ちがうて!「ほっといて」は、捨てておいてという

意味や。

ミー:それで、「もえやんゴミ」いうのはどんなゴミ?私の友人の萌さんが

捨てたゴミのこと?

芭蕉:ちゃう、ちゃう。「燃えないゴミ」のことやんか。

ミー:…。フィンランドから長いこと時間をかけて来たのに、わからない

言葉だらけ…うっううう…。

芭蕉:泣かんといてえな。女の子に泣かれると、ぼくは弱いのや…。よし、

一つずつ三重弁を覚えよまい!

ミー:だから、「~まい」という言葉は「決して~まい」という表現でしょ?

飲んだら乗るまい、乗るなら飲むまい、というように自分をいましめる

言葉でしょ?自分の目の前の人に何かを誘いかけているのとはちがう

ような気がするのだけれど。

芭蕉:いや、ちょっとちがうのは、「乗るまい」というのは「乗らないぞ」と

いう意味になるし、「いっしょに乗ろまい」というと「乗りましょう」

という意味になるのや。

ミー:「それは、できません」といってみて!

芭蕉:「そんなん、できやん。」

ミー:じゃ、「それは、できないことでしょ?」と念を押す言い方で言って

みて!

芭蕉:「そんなん、できやんやん?」

ミー:ほら…どう聞いても変な表現よ。

芭蕉:…そういわれれば、そうかもしれへんなぁ。

ミー:道が混んでいるとき、「国道がつんどった」と三重の人は言うけれど、

どんな漢字を使うの?

芭蕉:…正直なところ、知らんなぁ。

ミー:小さな子の鼻水が、乾いてこびりついているようすを「かんぴんたんに

なってるで」って鈴鹿の人が言ってたわ。洗濯物も乾いたら「かんぴん

たん」になるわけ?

芭蕉:ちがうなぁ。もっと有機的なもの、たとえば道ばたでふまれたカエルが

乾いて道にへばりついている状態を「かんぴんたん」と言うのや。

ミー:それなら、インスタントコーヒーの粉や、インスタントのみそ汁の粉は

「かんぴんたん」なの?

芭蕉:ううん…ちゃうなぁ。生物の死骸みたいなものが乾いて、気持ち悪い

ものでなくなってて、さらに、ちょっとこっけいな感じを付け加えた

言葉が「かんぴんたん」やね。

世界に誇る単位「匁」(もんめ)

ミー:三重県発の「世界に誇る言葉」ってあるの?

芭蕉:ありまっせ。

ミー:ほんま?ほんまでっか?

芭蕉:あんた、フィンランドから来たのに、関西弁を使いまんのやな?

ミー:タマキ・タイムズにでてくる、この自動翻訳機は、あったまってくる

と、いつも関西弁に翻訳しますんや。なぁ、はよ、おしえてんか!

芭蕉:どうしよかいなぁ~、やめとこかいなぁ~

ミー:じらさんといてぇな。はよ!はよ、おしえて!

芭蕉:今でも世界中の人たちが、重さの単位には日本の単位を使てるものが

あるでぇ。

ミー:え?どういうこと?

芭蕉:ダイヤモンドの重さの単位が「カラット」というのは聞いたことが

あるやろ?

ミー:あるある。昨日テレビショッピングで0.5カラットのダイヤを売ってた。

芭蕉:あれは、アラビア語のquirratいう豆の名前が語源だと言われてる。

要はダイヤモンドの重さは、豆の重さを基本にしてるのや。

ミー:でも、世界の人が使ってる日本の単位なんて…。そんなん、あります

のか?

芭蕉:ありまっせぇ!真珠の重さや。

ミー:え?真珠の重さはグラムを使いまへんのか?

芭蕉:そう、匁(もんめ)をつかうのや。

ミー:…何?それは?

芭蕉:昔の、一文銭の重さが一匁やった。「花いちもんめ」いう言葉をきいた

ことあるやろ?あれは、花を「1もんめ」の重さ分で人をとりかえっこ

しようという遊びや。

ミー:何グラムのこと?

芭蕉:3.75グラムや。今の5円玉は一匁ぴたりにつくってある。

ミー:おー!適当につくってあるのじゃないのね?!

芭蕉:そうやがな。世界中のひとたちが三重県人、御木本幸吉の業績に敬意を

はらって、真珠の重さをあらわすのに、国際的に「匁」を使うのや。

1もんめは、英語で書いたら、1momme とかく。

ミー:momme(モンメ)という言葉は「お母さん」mommy(マミー)とよく似て

るわね。

芭蕉:その通りや。お母さんはmummyとも書きまっせ。どんな意味かわかり

まっか?

ミー:いや、さっぱりわからないわ。

芭蕉:「ミイラ」のことや。

ミー:三重ら?

芭蕉:…。