2011-06

文:玉木英明

2011年6月号 人口増加をくい止める!中国の一人っ子政策は有効か?

 

 

増え続ける人口・あと25年で100億人

ねこ: ちょっと!あんたたち、最近ずいぶん態度でかいじゃないの?

ここは、私たちねこのなわばりよ!

犬 :バウバウ、やあ、ねこのおねえちゃん。

ねこ: 何よ、そのバウバウってのは?犬はワンワンにきまってるじゃない

の!

犬 :ぼくらは、欧米ではBow Bow(バウバウ)って鳴くのさ!バウバウ~!

ねこ: 何をのんきなことを言ってるのよ!あのね、私たちねこが住みにく

くなってきてるのは、あんた達、犬のせいだって、もっぱらのうわ 

さよ!

犬 :そんな、無茶な。僕らは人間につながれて、ほとんど自分の意志で動

き回ることはできへんのや。君らねこは、自分で好きなとこへ遊びに

行けるやろ?

ねこ: それが、最近では家で焼き魚をすることが少なくなってきたものだ 

から、魚をくわえて逃げてサザエさんに追いかけられた記憶も、

もう遠い昔のことよ。黒ねこのタンゴで皆川おさむに歌われてから

かれこれ40年、何もいいことはなかったわ。私の人生、もうこれ

以上、キャット驚くようなエキサイティングな出会いも望み薄ね。

犬 :ようしゃべる、ねこやなぁ。あのな、地球上で増え続けてる生物は、 

何か知ってまっか?

ねこ: 犬でしょ?

犬 :ちがうがな。人間や。人間だけが増え続けとるんや。

ねこ: …いぬ…と、ちゃいまんのか?

犬 :おっ、ねこのおねえちゃんも、やっぱり関西の出身やったんやね?

ねこ: ばれたら、しょうがないわ。そういうあんたかて、最近テレビに

よく出てるわね。

犬 :バウバウバウ!

ねこ: それにしても、人間だけが増え続けてるいうのは、ほんま?

犬 :ほんまや。西暦1年ごろに約1億人やった世界の人口は、西暦1000年

頃に2億人、1900年には15億人、今は65億人や。2050年には100億人

に達する言われてるで。

中国・一人っ子政策

ねこ: 何とか、人間が増え続けるのを、止める方法はありまへんのか?

犬 :中国なんかは、一人っ子政策いうやつで、減らそうとしてる。

ねこ: 一人っ子…て、お母さんが、子供を一人しか産んだらあきまへんの

か?

犬 :そうや。たくさんいてる漢民族どうしだけの夫婦が対象や。1979年に

改革開放政策いうやつで始まったから、今年で32年目になる。

ねこ: ええことやないですか。ほんで、中国の人口は減りましたんか?

犬 :うん。減ってる。

ねこ: ああ、よかった。うまいこと中国は考えましたなぁ。夫婦は一人し

か、子供を産めへんいうのは、すばらしいことやねぇ。

犬 :あのな、よう考えなよ。「兄弟」いう言葉も「姉妹」いう言葉も、

この世の辞書から消えてしまうのやで。政府が出産を禁止するいうの

は、ほんまに人間にとって幸せなことなんやろうか?

ねこ: そりゃ、夫婦が子供を二人以上欲しいと思うのは不思議とちゃい

ますなぁ。私かて兄弟は8匹おった。

犬 :ねこや犬とはいっしょには、ならんやろけど、一人しか子供が持てへ

んいうことは、男か女か、いずれかしか子供が持てん、いうこっちゃ。

男性がふえる?

ねこ: ちょっと待ってえな。農家でぎょうさん働き手が欲しい家に、女の

子がひとりだけ、いうのは困りますがな。

犬 :そうやがな。もともと中国は男尊女卑の思想が強いし、その一人の子

がすべての家族の面倒を見る必要がある。そやから、妻が妊娠したら、

お腹におる赤ちゃんが男か女かを調べて、女やいうことがわかったら、

その子を人工中絶する人もたくさんおるのや。

ねこ: そんな、あほな。私は許しませんでぇ!絶対、許しませんでぇ!

犬 :あのなぁ、つば、飛んでまっせぇ。

ねこ: あきまへん!性別が気に入らんから、いうて人工中絶なんて、神様

に対する冒とくやありまへんか!

犬 :つば、飛ばさんとしゃべりいな。

ねこ: いいや、許しまへん!なんぼ人口抑制のためや、いうたかて、

こりゃ無茶や。私は政府が何と言おうと、絶対に産みまっせぇ。

犬 :私の顔、つばでべちょべちょやがな。あんたが言うことはわかります

でぇ。そやけど、実際のところ男の子ばかりが中国では増え続けてる。

戸籍のない子、黒孩子(ヘイハイズ)

ねこ: …ニャン…ニャン…ニャ…ニャ

犬 :何をニヤニヤしてまんのや?

ねこ: 黙ってたらええのや。政府に黙ってましょやないか。2人目の子が

生まれたら隠しておきましょ。政府に知られへんだら、何人産んだか

て、よろしやないか。

犬 :あかん、あかん。一人だけしか子供に戸籍に登録できへんから、2人

目以降の子供は、戸籍にのってない、実在しない人間になってしまう。

ねこ: やっぱり、そんな子が、中国には現実におりますのやな?

犬 :黒孩子(ヘイハイズ)いう子たちや。医療をうけることも学校に通う

ことも、およそ国民生活を送るために必要なことは何もできない子供

や。

ねこ: 学校にも行けない子…いうことは、将来、何にもできないやないで

すか。

犬 :そうや。中国国内に生活をしている、密入国者、難民や。逮捕された

かて文句をいえへん。

ねこ: そんな、気の毒な…。それに、男ばっかりが増えていったら、将来

国民の男女比率が狂ってきて、結婚かてできないようになってきそう

や。

犬 :そうや。すでに中国のある地域では、男ばっかりが増えてきて、少子

化の効果よりも、男女の人数のいびつな差からくる問題が表面化しは

じめてる。簡単にいうたら、男の子は結婚できへんのや。

ねこ: やっぱり、よう考えたら、夫婦が子供を1人しか持てへんいうのは

無茶なことなんやなぁ。なあ、バウバウちゃん、中国では夫婦が子供

を2人以上持つ方法は、ありまへんのか?

犬 :ないことは…ない。ただ、その、バウバウちゃんはやめて。

ねこ: なんや、知ってるのなら、はよ、いうてえな。意地悪やなぁ。

ちゃんと二人以上子供を持つ方法があるのやね?

犬 :一人っ子政策は違反すると罰金を払うことになるんや。ということは

お金持ちは罰金を払うたら、第二子以降も産めるいうことになる。

ねこ: いくらくらいの罰金なんでっか?

犬 :年収の3倍から10倍や。ということは日本では1000万円~1億円くらい

やろか。

ねこ: ニャンと!お金で国民の権利、出産の権利を買うようなものやね。

犬 :そうや。この罰金は「社会扶養費」いうて、中国ではもはや政府の

財源として軽視できないくらい大きな金額になってきてる。

ねこ: 罰金をあてこんで、行政が行われてるなんて…。

特例だらけの法律と役人の腐敗

犬 :さらに、ふに落ちない部分かてある。子供が一人でなければいけない

のは、中国人の中の漢民族同士の夫婦のみに限られてるから、夫か妻

が外国人か小数民族ならば、子供は一人でなくてもええ。

ねこ: 漢民族以外の人と恋をせなあかんなぁ。あの…ちょっと…聞きます

でぇ。生まれた子が双子ならどうなりますのや?

犬 :その場合は許される。それに、香港やマカオに住んでる人なら、漢民

族でも二人以上の子供OKや。

ねこ: どうして?

犬 :香港やマカオは、最近まで英国とポルトガルの領土やったから、一国

二制度いうて、ここだけは法律がちがうのや。

ねこ: なんやら、気分の悪い法律やね。逃げ道がようけあって、特権を持

った人だけが子供を何人も持てるような規則になってるような気がし

てならんのやけれど。

犬 :その通りや。一人っ子政策に違反したときの罰金は、計画出産委員会

いうところの役人が徴収する。ところが、その人らの腐敗も指摘され

てる。

ねこ: どういうこと?

犬 :さっきから言うてるように、逃れる理由がようけあるわけや。そうす

ると、役人のさじ加減1つで、二人目以降の子供が認められるように

なってしまうのや。

ねこ: はっきり言えば、賄賂(わいろ)を出して、役人が認めれば、OK

…ということ?

犬 :そう。そやから、計画出産委員会は、多くの若者の就職希望先として

ダントツの人気や。

ねこ: 人口を減らそうという試みが、なんやら変なことになってるわけや

ね。

犬 :人口の爆発的増加を止めようというのは、わかる。ただ、一人っ子政

策いうのは、ちょっとアイデアとして感心できない。

ねこ: あんた、もの知りやねぇ。私と友達にならへん?

犬 :メルトモやったら、なってもええよ。

ねこ: 私、携帯電話持ってないの。

犬 :ひとつ、ぼくの携帯電話をあげよか。

ねこ: わぁ、ありがとう!これ、どこの携帯電話?

犬 :もちろん、ソフトバンクや。

ザ・タマキタイムズ トップへ