2018-05

文責:玉木英明

   2018年 5月号 躍進する中国の科学技術。がんばれ日本、エキゾチック・ジャパン

宇宙の帝王・ゴアが…

ゴア: 私の名はゴア。地球の征服のため…

少年: 制服のため?おじさん、制服マニアなの?

ゴア: そう、特にスチュワーデスさんの制服が大好きで…

あのな、自己紹介のじゃまするな。

少年: おじさん、今は「フライト・アテンダント」というんだよ。

ゴア: うぉほん、もう一度、やりなおすぞ。私の名はゴ…

少年: ごつい顔や。分厚い手袋と、とがった肩パッド、マントはええとして、

そのキバと耳で近所歩くのは、恥ずかしいやろ?

ゴア: ほっといてくれ!

少年: おじさん、誰や?

ゴア: だから「マグマ大使」に登場した宇宙の帝王「ゴア」だ。

少年: …え?ヒグマ退治に往生した、アル中のシメのごはん?

ゴア: どう聞いたら、ヒグマ退治のアル中になるのだ?

少年: おじさん、まさか、その格好で、地下鉄に乗って来たのとちがうやろな?

ゴア: あのな、地球の征服に来たのだぞ!円盤に乗って来たのだ!

少年: …円盤て、UFOのことか?                             

ゴア: そう、それだ、UFOだ。丸いやつだ!

少年: ああ、あれなら昨日食べた。                  

ゴア: …食べたぁ?

日本製品全盛の1980年代

少年: おじさん、制服マニアが、カップやきそばに乗って、その格好で、

ヒグマ退治に来るって変やないか?

ゴア: だから言っておるだろ!征服のためだ!制服のためではない!

少年: おじさん、大きな声で制服制服いうて叫ぶと、恥ずかしいでぇ。

ゴア: あのな少年、漢字がちがうのだ!「征服」だ!「地球征服」だ!

少年: なんだ、地球征服に来たのか。おじさん、それならそうと早く言ってよ。

ゴア: 最初から言っておるだろ!それに、おじさんと呼ぶな!

少年: おじさん、本気で地球を征服する気なら、日本よりもっと別の場所へ行った方が

ええのとちがうか?

ゴア: ふっふっふ…わしは知っておるぞ。あの高性能で壊れない、サンヨー電気の

ラジカセ、パナソニックのビデオ、トヨタのカローラ、カシオの電卓、

マツダのロータリーエンジン…。すべてこれらは日本製だということを。

日本を征服すれば、世界の征服につながるのだ!

少年: おじさん、ちょっと古いでぇ。サンヨー電気はなくなったし、自動車も

エンジンを使わずに電気で走るやつが増えてきたよ。

ゴア: いいか少年、よく聞け。わしは内橋克人の「匠の時代(たくみのじだい)」を

全て読んだし、NHKのプロジェクトXも全部見た。この日本こそ、最高の

技術立国だと確信しているぞ!

少年: 30年も前の話やなぁ…。おじさん、最近の中国、知ってるか?

中国。科学技術第一主義

ゴア: 中国?…毛沢東の、あの文化大革命でズタズタになった社会主義国か?

少年: …それから50年もたって、今、中国の科学技術はすごくなってきたのや。

ゴア: ばかな。何を言ってるんだ?

少年: その毛沢東の時代から続けてる「科学技術第一主義」の成果が出始めたのや。

ゴア: あのな、おじさんが古い時代の悪者だからって、いいかげんなこと言うたら

あかんで。

少年: 自分のこと、おじさんと認めたな?

ゴア: うぉっほん!だから、中国のどこがすごいというのだ?

少年: まずは宇宙開発や。中国のロケット「長征5号」は13トンもの衛星を積めるのや。

ゴア: 日本だってH2ロケットを飛ばしてるだろ?

少年: 日本のロケットは8トンしか積めないよ。中国のロケットの能力はごつい。

しかも、年間20回以上打ち上げてるのや!。

ゴア: あのな少年、宇宙の帝王にむかって、大声でしゃべるな。つばもたくさん

飛んでおるぞ!

少年: 中国はすでにGPS用の衛星「北斗」を23基も打ち上げてて、2020年までにさらに

7基増やす予定や。ヨーロッパ、ロシア、アメリカも追い抜く8兆円規模の

プロジェクトや。

ゴア: 日本のGPS衛星は…?

少年: 日本のは、アメリカのGPSを補う4基の衛星だけや。中国のプロジェクトと

比べたら、目標がメチャ小さい。

新幹線。本家はどこ?

少年: おじさん、中国の新幹線知ってるか?

ゴア: あの、事故した車両を土に埋めてたやつだろ?

少年: …その中国の新幹線、線路の長さが22000kmを越えたよ。

ゴア: 日本の新幹線の長さは、何kmあるのだ?

少年: 山形新幹線みたいなミニ新幹線を入れても、全部で3000kmほどやで。

ゴア: なんだと?…ということは、日本の新幹線が「正統派」と思ってるのは…

少年: そう、日本人だけや。

ゴア: あのな、少年、どう見ても中国の新幹線は日本のコピーじゃないか!

少年: そのコピーの方が10倍もたくさん走ってるわけでしょ。上海ではリニア・

モーターカーも、すでに営業運転してるで。

ゴア: …え?日本でまだ走ってない、あの、リニア・モーターカーか?

少年: そう、時速300km以上で走ってる。めちゃ早い!乗り心地もええ!

ゴア: つばをとばすな!

原子力、スパコン、研究者数。

少年: おじさん、中国は原子力発電もすごいんだよ。

ゴア: あのな、少年、原子力発電所は津波が来たら…

少年: 中国は海上浮動式の原子力発電所をつくり上げたで。

ゴア: な、なんやて?

少年: 海に浮かぶ原子力発電所やがな。移動もできる。南シナ海で、石油掘ったり

軍事施設とか機械、海運用の大きな船に大電力を供給するつもりや。

ゴア: ちょ、ちょっと、ゆっくりしゃべってくれ。どうして中国は、こんなに短期間に

科学技術が上がったんだ?

少年: 中国が国家一丸となって、研究者を大量に作り上げてるのや。

ゴア: 研究は、個々が競争するものだろ?

少年: 例えば原子力なら、中国では上から順番に「工業情報部」「原子力能」いう役所、

その下に十数万人の国家企業、さらに44大学一万人の研究者がいてる。

ゴア: 日本…の原子力は、誰が研究してるのだ…?

少年: 東京大学の原子力工学科はなくなったよ。原発に対する日本の世論はひどい。

ゴア: 日本があきらめかけてる原子力発電を、中国は推し進めるつもりなんでっか?

少年: ゴアさん、あんたも関西の出身やったの?

ゴア: 動揺すると、なまるのだ。

少年: 精華大学に原子力工学科を新たにつくったよ。

ゴア: 中国の大学の研究費は…

少年: 日本の大学の5~6倍、各大学にサイエンスパークという小型企業がありまっせ。

日本の大学は「研究と教育だけ」やけど、中国の大学は「国につくす」

「企業につくす」ものと定義されてまっせ。

ゴア: 中国の大学のランキングはどないなってまんのや?

少年: 動揺が大きくなってるね。以前は日本の大学の方がランキングが高かったけれど、

今では完全に逆転してしまったよ。

ゴア: 中国の研究機関、ごついやないか。

少年: それだけやないよ。中国科学院という巨大な研究機関があって、

12万人の研究者が世界最高の質と量の論文、特許をだしてまっせ。

ゴア: 研究者の数が多いということか?

少年: そう、日本の十数倍は、いてまっせ。

巨大な研究予算

ゴア: 中国の研究予算は…

少年: 購買力平価いう数字でいうと、98兆円、日本の17倍や。

ゴア: 中国は、そんなに科学技術にお金をかけてるのか?

少年: 中国には「国家財政の収入の伸び率より科学技術支出を増やさねばならない」

という法律があるんでっせ。

ゴア: 国家財政?GDPに比例して研究費が上がるわけか?…中国のGDPって、今…

少年: 日本の3倍、世界2位やけど、2050年には今の10倍になって、世界一になると

予測されてまっせ。

ゴア: 中国の研究費が日本の十数倍あって、GDPが今の十倍になったら…

少年: そう、研究費は日本の百倍をかるく超えまっせ。

ゴア: わしの好きな日本は、がんばらな…

少年: そう、あきまへん。

ゴア: 最後まで言わせてんか。

エキゾチック・ジャパン

ゴア: あのな、宇宙の帝王が心配する話でもないとは思うけど、日本は何とかしないと

アカンやないか?

少年: 人口13億、日本の10倍以上の中国が相手やから、マクロに(人口や国土の大きさを

もとに)考えれば太刀打ちはできまへんで。

ゴア: 簡単にあきらめたら、あかんやろ!何か、わしにも手伝えることはないか?

少年: ゴアさん、日本を応援する素敵な曲で、歌手デビューしてはどうでっか?

ゴア: 歌手…?どんな曲を歌うのだ?

少年: 日本全盛の時、1980年代に流行した「エキゾチック・ジャパン」という歌なんか

ピッタリやと思うけど。

ゴア: おお、日本人の元気がわきそうな曲だ。何という歌手名でデビューしようか?

少年: 「ゴア・ひろみ」なんて、どう?

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