2011-04
文:玉木英明
2011年4月号 原子力以外の電力も大切・政府が民間の電気を買ってくれる?
電力会社に電力を売る?
風神:あんた、何してまんのや?
雷神:ペダルふんでるの見えてるやろ?
風神:いや、雷神がそんな室内自転車のペダルをこいで、ダイエットしてる
なんて聞いたことないでぇ。
雷神:だれが、ダイエットなんかしとるもんか。「かみなり」落とす電気を
発電してるのや。
風神:ほう、「かみなり」は雷神がペダルこいで、発電してるのは、こりゃ
スクープや。携帯で写して、写メールで友だちに教えたろか。
雷神:あかん、あかん。やめといて。東北大震災のせいで、電気を発電する
人足がなかなか手に入らんようになってきたんや。
風神:人足…て、かみなり用の電気を発電する労働者は、下界から連れてき
ますのか?
雷神:そうやがな。「かみなり」落として、目ぇ回してる間に連れてくるん
や。しびれるようなテクニックやで。
風神:「雷神」いうたら、ギリシャ神話の「ゼウス」とか、ローマ神話の
「ユピテル」やら、もっと品格のあるもんと、ちがいまんのか?
雷神:さすがは風神さん、よう分かってくれてまんなぁ。昔のええ時代は、
わしが、ちょっと腹を立てたら、すぐに「かみなり」を落とせたもん
や。ところが、このごろはジンケンより人権の方が大切なんや。
風神:なんでっか?そのカタカナで書いた「ジンケン」いうのは?
雷神:「神権」やがな。肩身のせまい世の中になってきたもんや。
風神:はっはっは。あんたの「かみなり」は、怖がられるだけで、あんまり
役にはたたんからなぁ。
雷神:そういう風神さん、あんたの吹かせる風は何か役にたってますのか?
風神:風車を回してますがな。オランダの風車は有名やけど、最近では風力
発電で電気を発電してるのや。
雷神:あの、青山高原にたくさん並んでるやつやね?
風神:そうや。僕ら風神が風力発電に協力してあげるから人間も喜んでくれ
てる。海の神のポセイドンさんかて波力発電に加担してるし、風の谷
のナウシカさんも、水力発電に協力してくれてるから、あの人らは人
気があるのや。
雷神:ナウシカて、神さんやったかいな?
風神:細かいこと、どうでもええがな。あのな、雷神かて、ちょっとは役に
立って、そのイメージを変えなあかん、いうこっちゃ。
雷神:どうしたら、よろしおますのや?
風神:国が、2012年度をめどに、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスも
ふくめて、すべての電力を電力会社が買い取る制度をつくろう、いう
のや。
雷神:ほ、ほんまか?発電したら、電力会社が買ってくれるのかいな?
風神:そうや。去年までも、余ってる電力に関しては、1kw時当たり24円で
買うてくれてたの、知らなんだのかいな?
雷神:ああ、知らんかった!石油やら原子力ばかりにたよらんと、みんなが
電力をいろんな方法で作り出そういうのは、ほんまにええことやね。
鹿児島県いちき串木野市
風神:九州では、中小企業が乗り出してて、太陽光なんかの自然エネルギー
の発電設備の建設をしようと考えてるのやで。
雷神:エネルギー開発いうたら、資金力のある大企業しかできへんと思てた
で。
風神:そう、恵まれた自然を「資源」にしよういうて、地元の企業が地域の
活性化につなげよとしてるのや。
雷神:九州には、えらい前向きな人らがおりますのやな?
風神:そうや。鹿児島県いちき串木野市の西薩中核工業団地で、地元の濱田
酒造いうとこが中心になって、「自然エネルギー工業団地」いうのを
計画してるんや。地元の人らもすごく応援してる。
雷神:そうか…そうなんや…。いや、うれしいやないか…。そんな男気を
もった人らが日本にもおるのや…。
風神:泣きないな。雷神が泣いたらおかしいで。この会社だけやない。地元
中小企業約10社、市、市民からの出資金約3億円と金融機関から調達
する資金約7億円で、団地内に出力計2000kwの太陽光発電設備を設置
するんや。将来はこれとは別に、3000kw級の太陽光発電設備建設も検
討するつもりや。
雷神:フレ~フレ~!か・ご・し・ま!いけぇ~!いきたおせ~!
風神:あのな、つば飛んでまっせ。泣いたり喜んだり、あんた、いそがしお
ますなぁ。
雷神:そやかて、こんなええ話、最近おまへんでぇ!やっほー!うれしおま
っせ~!
風神:つば、飛ばしないな。ほんで、走り回るのは、やめなはれ。
自然エネルギーの全量買い取り制度は、民主党政権の地球温暖化対応
の目玉や。
雷神:民主党もなかなかイキなこと考えてますなぁ。
風神:そうや。太陽光や風力は天候次第で不安定やからいうことで、供給電
力をITで制御する次世代送電網「スマートグリッド」の実証試験も
積極的に進めてるんやで。
雷神:スマトラ島のくり拾い?何ですのや、それは?
風神:なんぎな人、いや神さんやなぁ。あのな、日のようけ照る夏の昼間は
ものすごい電流が流れて、雨の降る冬の日はあんまり発電できない、
いうのでは困るやろ?そやから、それを、日本の誇る電子技術できち
んと電力の出し入れを管理して、安定した電力を供給しよやないか、
いうことなんや。
雷神:あんた…ほんまの…本職はなんですのや?まさか…東京電力のひと?
単なる「風の神」さんとは思えんほど、詳しいやないか。
風神:神さんかて、常日頃からの勉強が大事や。
雷神:わかった、わかった。ほんで、そのスマート・フォンの親戚みたいな
ヤツは、どこに作りまんのや?
風神:今、横浜市や北九州市など大都市4地域で実証地域を作ってて、さら
に4月以降にに約10カ所追加するんや。公募は春以降やけど、九州
は反応が早くて、3カ所程の地域で申請を準備してるいうこっちゃ。
大震災。電力買い取り価格は決まるのか?
雷神:日本が世界にさきがけて、こんな素晴らしいことできるんやなぁ。
風神:ただ、この大震災で福島の原子力発電所が壊滅状態やろ。吹き飛んだ
原発の建物の上から水かけて冷やしてる、「非常事態」やがな。
雷神:そやけど「計画停電」が必要なくらい、日本は電力が足らんのやろ?
風神:そうや。でもな、考えてみいや。民主党は、高速道路の料金やら子供
手当、さらには主婦の年金やら、外務大臣の辞任やらの最近のゴタゴ
タに、震災や。電力を民間から買い取る作業にまでは手がまわらへん
で。
雷神:そうやろなあ。疲れた菅首相と枝野さんの顔、テレビで見たでぇ。
風神:国は発電設備建設の初期投資補助は、本年度で打ち切ることを決めて
た。電力を全量買い取りすることで、発電所の収益を一定期間補填
(ほてん)して、運転を続けさせよと考えてるみたいやけど、その
電力の値段を決めるのは、政府としては大変やろな。
雷神:もうちょっと、簡単に説明してんか。
風神:民間が発電の設備を作るのに国がお金を出すのとちごうて、その発電
設備で作り出した電力を一定期間、国が全部買いましょやないか、
というのや。
雷神:それで収益があれば、事業としては成り立つわけやね?
風神:そうや。ただ、肝心の、国がいくらで電力を買い取るか、価格がまだ
決まっていない段階での、あの震災や。
雷神:…あかんがな。国の買い取り価格が低かったら、事業として成り立た
へんやないか?
風神:その通りや。売れる電力の値段が決まらへんから、銀行も発電設備の
メーカーも話に乗って来ないのは当たり前や。最悪の場合には、事業
計画自体を断念することも考えなあかん。
雷神:何とか…何とか、早く「電力の値段」を決められへんものかなぁ。
風神:雷神さん、日本の夜明けにふさわしい名前の持ち主のあんたが、がん
ばってくれやなあかんのや!
雷神:???何で、僕の名前が、日本の夜明けにふさわしいのや?
風神:「雷神さん」はRising Sun.(ライジン・サン=日の出)やないか。
雷神:…うまい!