文:玉木英明
2014年 2月号 尖閣諸島のモグラ。絶滅をくい止められるのか
ぼくらはモグラ
モグラ:♪もっ、もっ、もぐらは少年、探偵団♪
サツマイモ: …だれですのや?変な歌を、しかも大きな声で歌ってるのは?その歌、
「もぐら」でなくて、「ぼくら」とちゃいますのか?
モグラ:ぼくら、もぐらが、日の目を見ることは、もうないのや!永遠に
ぼくらは「もぐり」の動物や!
サツマイモ: 登場するやいなや、大きな声を出して、どないしましたんや?それに、
ぼくらとモグラの発音が重なって、ややこしいでっせ。
モグラ:あんた、だれや?体型がぼくとにてるなぁ。
サツマイモ: わたしは、サツマイモや。あんたが大きな声を出すから、血圧が
あがって、赤くなってしもたがな。
モグラ:おらんようになりまっせ!消えてしまいまっせ!
サツマイモ: あのな、つばが飛んでまっせ。ほんで、誰が消えてしまいますのや?!
モグラ:長いことかかって進化してきた種、モグラが絶えてしまいますのや!
サツマイモ: あんた、ええ形の鼻してますなぁ。
モグラ:そう、僕は、鼻筋がとおって、男前で…
あのなぁ、のせんといてえな。ぼくのこの 鼻は、とがったドリルの
役目をしますのや。 においをかぎ分ける能力かて、ゴツイでぇ。
サツマイモ: 前足が横向いてついてますのやな。まっすぐ歩けますのか?
モグラ:ほっといてんか。これかて、穴を掘るのに適した形に、前足が進化して
きたのや。地上でかっこよく歩くことなんか、僕には必要ないのや。
サツマイモ: あんた…お目めは、小さいですなぁ。
モグラ:退化したのや。視力はほとんどなしでも、土の中では困らへん。
サツマイモ: 耳はありますのか?
モグラ:退化したのや。地面の中では周囲の音は、骨で直接感じられる。
サツマイモ: ちょっと聞きまっせ。あんた、どこへ向かって、毎日穴掘ってます
のや?行き詰まりを感じることは、ありまへんのか?
モグラ:そう、暗い穴掘って、毎日これでええのかと…
あのなぁ、何度もいうようやけれど、のせんといてえな。僕は、
積極的にぐんぐん穴掘りをしてるわけやない。どちらかというと、
一定の範囲内に自分の巣をほって、いつもは、その巣の補修作業をして
ますのや。
サツマイモ: そうすると、どうやって、食べ物を手に入れますのや?
モグラ:僕の巣のトンネルは、ぼくの「すみか」やけれど、狩猟用のワナでも
あるのや。トンネル内にミミズや昆虫が落下してくるのを待ちますの
やで。
サツマイモ: 楽でよろしいなぁ。毎日、巣の中で悠々自適ですなぁ。
モグラ:いや、そうでもありまへんでぇ。何しろ食べるものが限られてる。
地上に出たら、肉食のトンビや鷹に狙われる。かといって、地中の食べ
物は日によって数が変わるし、仲間との縄張り争いかて大変なのや。
サツマイモ: 芋とか、植物の根を食べたらよろしやないか?
モグラ:あかん、あかん。ぼくらモグラは肉食や。
サツマイモ: あれあれ?「もぐらに作物の根っこをかじられた」という話を
よう聞きまっせ。
モグラ:あれは、間違いや。もぐらの穴に入り込んだネズミが、作物の根を
かじることが多いのや。
サツマイモ: モグラさんは、生き埋めになりまへんのか?
モグラ:そう、カッパの川流れと同じで…、おほん、話にのせんといてと
言うてまっしゃろ?ぼくらは生き埋めになんかなりませんでぇ。
尖閣モグラが絶滅する
サツマイモ: ほんで、そんなのんきな生活を送ってるモグラが、何で絶滅の危機に
さらされてますのや?
モグラ:尖閣諸島をご存知でっか?
サツマイモ: 知ってまっせ。領有権をめぐって、日本と中国が対立してる、あの
台湾に近い島でっしゃろ?
モグラ:そうですがな。まぁ、みなさん聞いてください!
サツマイモ: あのなぁ…人生幸朗のボヤキ漫才のネタやね。
モグラ:ふっふっふ…これがわかるとは、あんたも昭和30年代の生まれやね?
サツマイモ: シャ~ラップ!あんたが絶滅の危機やいうから、一生懸命に悩みを
聞いてるのに、何で私の生まれが、昭和30年代だというのがバレる
のよ!かしまし娘も人生幸朗のボヤキ漫才も知らないし、領有県なんて
県、知らないわ!
モグラ:ほうら、自分から言うた。ようけしゃべりましたなぁ。ほんで、漢字も
違ってるし、だいぶ乱れてまっせ。
サツマイモ: トラとかオランウータンとか、大型の哺乳類が絶滅の危機に見舞われて
るのはきいたことあるいけど、モグラの絶滅なんて聞いたことないわ。
モグラ:尖閣諸島の魚釣島いうのは聞いたことありまっか?
サツマイモ: ありまっせ。中国船の乗員が上陸したとか、東京都が購入計画をしたと
か、何かと話題の多い島やね?大きな島なの?
モグラ:いや、小さい。
日本が管理できない?
サツマイモ: ほな、何でそんなとこのモグラが絶滅するの?
モグラ:そこに「つがい」で連れて行ったヤギが問題なんや。最初は
「1つがい」やったのが、野生化して最終的にこの小さな島に300頭も
生息するようになった。
サツマイモ: ヤギが住むと…モグラが消えるの?
モグラ:そう。海に囲まれた生態系の中で、ヤギの天敵がおらん。ということ
は、ヤギの好き放題にモノを食い荒らしてるのや。完全に生態系の食物
連鎖が、狂ってきてるのや。
サツマイモ: そうか。それで、センカクモグラが絶滅しそうなのやね。そやけど、
そこまで分かってるのやったら、ヤギを減らすなり、駆除するなり
して、生態系を元通りになおしてやったらええやないか。簡単や
ないか。
モグラ:それがうまいこといかん。
サツマイモ: なんでえな。安倍さんが、ちょちょいとやってくれるやろ?
モグラ:石原慎太郎・前東京都知事も「東京都が地権者から買い取る」いうて
がんばった。
サツマイモ: ほんで…どないなりましたんや?
モグラ:2012年9月に、日本政府が、実際に地権者から約20億円で買い取った。
サツマイモ: なるほど。ほな、心配ないがな。何県になりましたんや?
モグラ:沖縄県石垣市の一部になったのや。
サツマイモ: よかった、よかった、これでOKや。早いとこ、あんたたちモグラを
助けよやないか。
モグラ:それが…あかん…。
サツマイモ: あかん?なんでや?
モグラ:中国や台湾が、尖閣諸島は自分ところの領土やというてるのや。
サツマイモ: そんなこと言うたかて…。あきまへんがな。
モグラ:そうや。モグラとヤギの問題で終わらんのや。
サツマイモ: 昔から、尖閣諸島は日本の領土なんやろ?
尖閣諸島の地下に眠る、石油
モグラ:そうや。尖閣諸島は、明治27年、日本領になった。実際のところ、
その頃はそんな島のこと誰も見向きもしなかった。そやから、
古賀辰四郎いう人が「開拓団」を形成して、魚釣島にかつお節工場を
作ったのや。
サツマイモ: ほう、この島に実際に日本人が住んでましたんやね?
モグラ:そうや。最盛期には99戸、247人もの人が住んでた。開拓者に
ちなんで、「古賀村」いう名前の村をつくったんや。
サツマイモ: 何で…魚釣島が無人島になりましたのや?
モグラ:地理的に不便なことや、採算がとれなくなったこともあって、かつお節
工場が閉鎖されたのや。1940年のころや。
サツマイモ: そうか。そのあと、中国やら台湾も領有権を主張し始めたのやね?
かつお節工場も成りたたんような無人島やろ?領有権をめぐって
そんなに、喧嘩せんでもよろしやないか。
モグラ:石油や。大陸棚の地下に、ぎょうさん石油が眠ってるのや。
モグラの話も大切だけれど
サツマイモ: センカクモグラの絶滅危機も野生化したヤギも、尖閣諸島の今後の成り
行きも気になるなぁ。私らは、いったい、どうしたらええのやろか?
モグラ:まずは、状況をよく知って、自分のしっかりとした意見をもつべきや。
国際社会の中で「波風を立てないこと」ばかりを気にして過ごしてきた
日本の国も、一人一人の国民も、国益を確保して栄えていくためには、
毅然とした態度をとる必要がある、いうこっちゃ。
サツマイモ: …あんた、すごくモノ知りやね。何やら、私、あんたのことが好きに
なってきましたわ。
モグラ:急に何を言い出しますのや?恥ずかしいやないか。
サツマイモ: 私と結婚しましょやないか。
モグラ:あかん、あかん。モグラとサツマイモの夫婦なんて聞いたことない
でぇ。
サツマイモ: いや、私なら、あんたのええお嫁さんになりまっせ。私のスイートで、
ポテットした体型に、目もぐらぐらすること、間違いなしや!
モグラ:ううう…。穴があったらはいりたい…。