2013-07
文:玉木英明
2013年 7月号 ビールの生産世界一は、ドイツ?アメリカ?それとも…
上海帰りのビール
青島:♪ビ~ル~、ビ~ル~、どこにいるのかビ~ル~
♪だれか~、ビールを知らな~いか~?
麒麟:変な歌を、しかも大声で歌ってるのは、だれかしら?それは、「リル」
の間違いじゃないの?
青島:いいや、僕の歌っているのは、「上海帰りのビール」や。
麒麟:そんなメロディを知ってるなんて、あなた、古い人ね。
青島:ほっといてんか。ヒトがビールを飲んで、いい気分で歌ってるのに、
邪魔せんといてんか。
麒麟:あのねぇ、私の大好きなビールはハイネケン、もちろん、おドイツの
ビールよ。
青島:ドイツに「お」は、いらんと思うけど…。それに、ハイネケン
(Heineken)は「オランダ」のビールやでぇ。
麒麟:…うるさいわねぇ。どっちでもいいじゃないの。だいたい「上海帰り」
のビールなんて美味しいわけ、ないじゃないの!ビールといえば、
ヨーロッパが本場よ!ハイネケンだけじゃないわ!カールスバーグも
美味しいおドイツのビールよ!
青島:ドイツに「お」をつけたら、変でっせ。それに、カールスバーグは、
デンマークのビールでっせ~。
麒麟:うるさいって、言ってるでしょ!とにかく、ビールは味も生産量も
ヨーロッパが最高よ!
青島:遗憾。麦酒的生产量,这里10年,中国世界第一。
麒麟:な、な、何よ!突然、中国語で話しださないでよ!
青島:中國的麥酒最近非常味好,冷與日本也一樣喲。
麒麟:だめだわ。タマキタイムズでお馴染みの、いつもの翻訳機使おうっと。
青島:感到吃驚嗎…びっくりしましたやろ?あのね、僕の名前は…
麒麟:知ってるわよ。「あおしま」さんでしょ?
青島:ちがいますでぇ。「ちんたお」くんって呼んで!
麒麟:なによ…それ…?
青島:僕は、中国山東省の青島(チンタオ)市から来たんでっせ。
麒麟:え?あの「チンタオ・ビール」で有名な場所?
青島:こたえは……イエーーース!
麒麟:あなたのギャグ、とても古いわ。…それって、天才クイズのロボット
博士じゃない?
青島:…あんた…よう知ってますなぁ。もしかして、おねえちゃんも、昭和
30年代の生まれ?
麒麟:ええい、シャーラップ!年齢の話をするな!私の言いたいのは、
ドイツのビールは有名で、特にミュンヘンのオクトーバーフェストと
いうお祭りは、10月にある世界で一番有名な麦酒のお祭りで、600万人
も集まるのやで!ええか!2週間以上もドイツは毎日ビール祭りや!
8000人のパレードも、ソーセージも鶏肉の丸焼きも、バイエルン地方の
人たちはもちろん、世界中の人らが楽しみにしてるのや!
青島:いっぺんに、ようけしゃべりましたな。ほんで、つば飛んでまっせ。
麒麟:あんたが、変てこりんな中国語で私の昭和30年代生まれをバラすから、
ロボット博士が上海から帰ってくるのでしょ?!
青島:あの…つば、飛んでまっせ。ほんで、だいぶ話が乱れてまっせ。確かに、
ドイツのオクトーバーフェストは世界最大のビールのお祭りや。けどな、
ビールの生産量世界一は、中国なんやで。
ビールの生産量世界一は
麒麟:…ほ…ほん…ほんまでっか?
青島:ほんまでっせ。あんたも、関西の出身なんやね?中国のビール生産量は
4898万キロリットル(2011年)で、10年連続世界一、世界2位の米国の
1.7倍も生産してるのや。
麒麟:そやけど、30年も前、中国で飲んだビールは冷えてなくて生ぬるくて、
気のぬけたようなビールやったでぇ。
青島:それは、中国では常温でビールを飲む習慣があったからやよ。ただ、
今では冷蔵庫が普及したおかげで中国でも冷たいビールを飲んでる。
それに「青島国際ビール祭り」いうアジア最大のイベントが8月中旬に
青島であって、中国じゅうの人らがビールをいっぱい飲むのや。
麒麟:そんなに、青島ビールはたくさん飲まれてまんのやな?
青島:いや、青島ビールをぬいて、「華潤集団」いう企業の「雪花ビール」
いうのが中国でいちばんたくさん飲まれてる。
麒麟:何やて?青島ビールよりも、たくさん売れてるビールがありますのやね?
日本と中国の企業、相互の協力?利用?
青島:そうや。あのな、華潤集団いうのはビールだけ作ってる企業とちがう。
電力から不動産、薬品も金融の部門も持ってる、もともと香港の会社や。
そのうちのビールの部門が、日本のキリンビールと提携して、中国で
ごつい量のビールを売ってるのや。
麒麟:あの…もう少し、わかりやすく、説明してんか。
青島:中国には、人間がたくさん住んでる。その中国で「ビール」を作って
販売する会社は、日本で商売するよりも何倍もたくさんの売り上げを
得ることができる。日本のキリンビールは、アジアで人気の高い、
おいしいビールを作るノウハウを持ってる。そやから、中国のちからの
ある会社と恋人同士の関係になって、これから何年も大量のビールを
売りましょやないか、ということや。
麒麟:中国は、えらいことになってますのやなぁ。!
青島:まだある。びっくりしたらあかんでぇ。日本のアサヒビールかて、
中国でなんとか力を伸ばそう、負けたらあかんいうことで、青島ビール
と提携したんや。
麒麟:アサヒビールと青島ビールが、提携?
青島:そうや。そやから、日本で売られている青島ビールは、アサヒビールの
マークが入ってる。
麒麟:そうか…青島ビールは、日本のアサヒビールと恋人になったのやね?
青島:…そのはずやった。
麒麟:なんやら、歯切れの悪い答えやなぁ。何か、ありましたんか?
青島:うう…む。
麒麟:なあ、はよう教えてえな!じらさんと!いじわる!
青島:実は、青島ビールは、サントリーとも合弁会社を作って、上海での
ビールの製造と販売をしようと2012年6月に提携を結んだ。
麒麟:むちゃくちゃや。三角関係やないか?
青島:そうや。有利な話やったら、中国企業は「何でもあり」やよ。もっと
言うなら、今より有利な話を持ち込んでくる企業があれば、アサヒも
サントリーも、両方ともひっくり返すことかてある。
信頼を重んじる日本の商業習慣は
麒麟:日本は…日本の企業は、中国企業に翻弄(ほんろう)されてるのと
ちゃいまっか?
青島:あんた、泣いてますのか?
麒麟:人と人、企業と企業の結びつきとか信頼とかをかたくなに守る日本人は、
お人好しなんやろうか。
青島:いや、世界を相手にすると、日本のやり方はすべて通用するわけと
ちがうのや。
麒麟:あかん…あかんがな。
青島:だんだん、あんたの関西弁強くなってきましたな。ほんで、涙ぐむのは
やめてえな。
麒麟:どうしたら、世界の中で日本人が生き残っていけますのや?
青島:まあ、あせらんと。ちょっと、ビールでも飲んで、ゆっくりしょうや
ないか。
麒麟:あんたら中国は、ビジネスを本当にドライに考えてるのやね。
青島:そうそう、青島ビール・スーパードライいうのも売ろうと思ってる。
麒麟:なんだか、中国は最近すごく元気ね。
青島:「チャイナ」パワー全開や!仕事なんてブッチしちゃいな!思いきり
やっちゃいな!いろんな所に行っちゃいな!いっぱい食べちゃいな!
麒麟:うまいこと「チャイナ」にひっかけたわね。日本人は、ゆっくり
お風呂にでもはいるわ。
青島:まさか、湯船に飛び込む音が…
麒麟:ジャッパーン。