2018-01

文責:玉木英明

      2018年 1月号 介護子育て族。人生をどう組み立てるのか?

キャリア・ウーマンに…

男性: ぼくと結婚して下さい。

女性: 突然、何を言い出すの?

男性: ですから、結婚してくださいと、お願いをしてるんです。

女性: 私の人生設計では、あなたの存在は想定外よ。私の仕事を知ってるでしょ?

男性: 効率的な仕事ぶり、充実した私生活、あなたはキャリアウーマン。

女性: 「あ~女に生まれてよかった」が、ぬけたわよ。

男性: もう一度、テレビで勉強します。

女性: 仕事は私の生きがいよ。命そのものよ。もしも、あなたと結婚したら、何かいい

ことはあるのかしら?

男性: ぼくは子供がほしいのです。子供とキャッチボールしたり、キャンプに行って

テントに寝たり、海岸で水遊びがしたいのです。

女性: それじゃぁ、あなたが自分で産めばいいじゃないの?

男性: …あの、ぼくは男です。産めません。

女性: 誰と結婚しようと、私は働くわよ。

男性: もちろん、働いてくれていいですよ。

女性: 私が、キャリアウーマンとしての実績を、ことさら大切にしてるのは知ってる

でしょ?

男性: もちろん、知ってますよ。

女性: 子供が生まれれば、仕事ができなくなるかも知れないわ。そんなのいやよ。

結婚するのは、もっと先ね。

男性: 結婚するのが遅くなると、人生の後半に、心配が多くなりますよ。

女性: まさか。キャリアウーマンを続けてるのは、経済的にも満たされた、いい人生を

送るためよ。心配なんてないわ。

男性: 「介護子育て族」って知ってますか?

晩婚・晩産によって生じるもの

女性: 介護子育て族?

男性: 「晩婚、晩産」で生じた苦しい状況にいる人達のことですよ。

女性: バンコン・バンサン?「ギッタン・バッコン」なら、幼稚園の時に遊んだわ。

男性: どう聞いたらそう聞こえるのですか?晩婚というのは「年齢が高くなってから

結婚すること」晩産というのは「年齢が高くなってから出産すること」ですよ。

女性: 年齢の話はやめてよ。学歴をつんで仕事をしてるんだから、年齢が高くなるのは

あたりまえじゃない。晩婚と晩産は、女性が社会進出をしている証拠よ!エビデンス

よ!プルーフよ!

男性: その通り、悪いことではありません。ただ、その影響については、知っておくべき

です。

女性: どういうこと?

男性: 2014年の調査で、女性が第1子を産む年齢は30.6歳、第2子は32.4歳、35歳以上で

子供を産む人が27.6%もいることがわかりました。

女性: それがどうしたっていうのよ。

男性: 1950年、戦後の調査では、第1子を産む年齢が24.4歳でした。

女性: …6歳以上、高くなってるのね。

男性: その通りです。

女性: 医学は、どんどん進歩してるわ。高齢で出産したって安全よ。

男性: 医学的な話をしているのではありません。30代の半ばに生まれた子が大学に進学

する時、親は50代、ともすると60歳に手がとどく年齢だと言っているのです。

女性: 私はキャリアウーマンよ。60歳が何だっていうの?バリバリ働いて、ガバガバ給料

かせいじゃうんだから。

男性: あなたが60歳に近いということは、ご両親の年齢はいくつになりますか?

女性: …父も母も、80歳をこえるわね。

男性: その年齢で、もし介護が必要になったら、どうしますか?

女性: …そりゃぁ、私ががんばって世話をするわ…

男性: 仕事は、続けられないかも知れませんよ。

女性: …え…?続けられへん…の…でっか?

男性: あなたは、関西の出身だったのですね?

女性: 動揺すると、なまるのよ。

男性: 父や母の介護のために仕事をやめてしまうことを、「介護離職」といいます。

女性: ちょっと…聞いてもいい?

男性: なんなりと。

女性: 介護が必要になる年齢って何歳くらいなの?

男性: 70歳~74歳の老人に必要な介護の割合は6.3%、75歳~79歳の老人では13.7%まで

上がり、80歳以上になるとさらに高くなります。

女性: ということは…

男性: そう、親の介護が必要になる時期は、ちょうど私たちが50代後半から60歳になる

ころです。子供が大学に入学するころに重なります。

女性: 子供の年齢が最もお金がかかる「大学」の時、親が職業から離れたら…。

男性: そう、子供の教育費は払えません。

女性: …あかんやないの…。

男性: あきまへん。

女性: まねせんとって。

男性: すんまへん。

人生設計をどうたてる?

女性: 子供の学費を、政府は助けてくれないの?

男性: 社会保障給付金は、年間115兆円あって、このうち7割が高齢者関連費です。

女性: 政府が、その「高齢者」のお金を少し「子育て」側にまわしてくれればいいのじゃ

ないの。

男性: 「高齢者」のサービスが減れば、働く世代の介護負担がさらに増えますよ。

女性: それじゃぁ、子育て側のサービスのうち、「保育園児」への補助を減らして、

「大学生」への費用アシストを増やしてはいかがかしら?

男性: 小さい子をもつ若いお父さんやお母さん達の家計を、直撃することになりますよ。

減らせば、大切な労働力を担う人達の生活に、直接影響を与えて、さらに少子化が

進んでしまいます。

女性: じゃあ「高齢者」と「子育て」、両方とも増額すれば…。

男性: 政府の財源には、限りがあります。

女性: …高齢者と子育てには、すごく深い関連があるのね。何かいい方法はないものかしら?

男性: 雇用保険料を上げて育児給付金にあてる方法があります。税金と社会保険の両方で

カバーする方法です。

女性: …ちょっと…聞きまっせ。

男性: だいぶ、動揺してきましたね。

女性: …ほっといてんか。子供を大学で教育するには、いくらかかるの?

男性: 自宅から通う国公立大学なら月に7万円ほどですが、下宿して私立大学に通えば

月に30万円近くかかります。

女性: えげつない額や…。育児給付金を少しもらったところで「焼け石に水」ね。

男性: 韓国では、大学進学のために借りたお金が返せないことが、社会問題になってます。

時期が、ずれれば

女性: …わかったわ。子供を大学に入れなきゃいいのよ。

男性: あなたが、キャリアウーマンとして周囲に負けない能力で仕事を続けられるのは、

しっかりした教育を受けたからじゃないのですか?

女性: …そりゃ、両親には感謝してるわよ。

男性: だったら、あなたの子供にも十分な教育を受けさせてあげるべきではありませんか?

女性: …そうね。私たちにできることは…。

男性: 「子供の大学」の時期と「親の介護」の時期とをずらすことくらいしか、方法は

ありません。

女性: どうすればいいの?

男性: まずは、ぼくたちの父母が、できるだけ高齢まで介護が不要であるように健康でいて

いただくことが大切です。

女性: 両親の健康を守ることなんて、できるのかしら?

男性: いつも僕達が両親を気遣って、精神的に安定してもらうことが第一ですね。

女性: なるほど。放ったらかしにしないということね。あなた、雄弁ね。つばが飛んで

きても気にならないわ。

男性: あなたが60歳になっても、80歳の両親が自分で海外旅行に行けるくらい健康ならば、

最高ですね。

女性: なるほど。老人が健康でいてくれてこそ、明るい社会が築けるのね。

男性: そうです。さらに、一番有効な方法があります。教えてほしくありませんか?

女性: 一番有効な方法?

男性: そう、「子供の大学」と「親の介護」とを、ずらすための方法です。

女性: ねえねえ、どんな方法?

男性: あなたが「なるほど」と思わず驚きの声を上げる、最高の方法です。

女性: じらさないで、はやく教えてよ!どんな方法?

男性: ぼくと、今、結婚することです。

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