文:玉木英明
2012年11月号 あふれる外国製の家電品。日本製品の明日は?
ティファールにルンバ。
夫:おい、お茶をいれてくれ。
女房:ちょっと、待ってて下さいね。今、お湯を沸かしますから。
夫:なに?今から沸かすだと?何をしているんだ。お湯はいつも電気ポット
にためておくのが、主婦のつとめだろう?
女房:あなた、ティファールの湯沸かし器なら、2分もあればお湯が沸き
ますよ。
夫:ほ、本当か!?そんなに早くお湯が沸くのか?
女房:本当ですとも。一人暮らしの大学生や独身の人たちは、みんなT-fal
(ティファール)を使ってますわよ。
夫:ばかもの!お湯は「象印」の電気ポットに一日中ためておくのが日本人
のやりかただ!
女房:電気ポットに電気を入れっぱなしにして、一日中お湯を保っておくのは
エネルギーのムダ遣いですよ。それに、誰もいない家の中で、熱を発す
る電気ポットにスイッチが入っているのは、危険です。
夫:わしに口答えするな!女はきちんと掃除をしてればいいんだ!
女房:あなた、つばがとんでますよ。お掃除は、今からiRobotのルンバを動か
しますから大丈夫ですよ。誤って、ふまないで下さいね。
夫:なんだ?それは?
女房:アメリカ製の自動掃除機ですよ。共働きの家庭では、家に誰もいない
間に、これが走り回って、掃除をしてくれますのよ。
夫:電池が切れたら止まってしまうのだろう?そんなもの、役に立つわけが
ない!
女房:ルンバは、充電がなくなってきたら、自分で充電器の上に移動して、
充電が完了したら、またお掃除を開始してくれますのよ。
夫:な、な、なんと!掃除は、三菱の掃除機「風神」ですることになって
おるだろ!金曜日に家族団らんで見ていたプロレスで、リングの上を
掃除機でそうじしていたのを、テレビで見ただろう?
女房:とてつもなく古い…ですわ。昭和40年代のテレビ番組ですね。50歳以上
の人でないとわからないですわね。
ダイソンにケルヒャー。
夫:わしに説教をするな!とにかく、掃除機をもってきなさい!
女房:うちには、ダイソンの掃除機しかありませんよ。
夫:なんだ、その、ボクシングの選手みたいな名前の掃除機は?
女房:すごく古い…ですわ。あなたの言っているボクサーはアメリカの
「マイクタイソン」ね。ダイソンは、イギリスの掃除機ですわ。サイ
クロン式掃除機で、すごく性能がいいんですよ。
夫:ええい、気にくわん。玄関の土間の掃除はおわったのか?
女房:1週間ほど前に、ケルヒャーの高圧洗浄機で、ザッとお掃除しました
から、石もタタキも、すごくキレイになってますわよ。
夫:何を、けるのだ?「ヒャー」とびっくりするのか?
女房:なんぎな人ですわね。ケルヒャーKARCHERというのはドイツの会社
で、高い水圧で洗い流す洗浄機や、蒸気洗浄機はとても有名ですわ。
先日、建築百周年を迎えた東京の「日本橋」をケルヒャーで洗浄して
きれいにしようとか、広島の原爆記念式典の前に「原爆の子の像」を
高圧洗浄機できれいにしようとか、精力的に日本でその名前を広げて
いますわ。
夫:わしより、たくさんしゃべるな!いつ、そんなものを買ったのだ?
女房:ジャパネット・たかたのテレビショッピングで、買いましたわ。あなた
も許してくださったでしょ?
夫:わしは、ケルヒャーも、ダイソンも、ルンバも、日本製だと思って
おったから許したのだ!ドイツや英国、アメリカの製品とわかって
おったら、最初から許しはせん!おい、松下はどうしたのだ?日立は、
三菱は、三洋電機はどうなったのだ?
女房:みんな、頑張ってますわ。三洋電機はなくなりましたけれど。
夫:おいおい、三洋電機は、「ジャングル大帝」やら、「兼高かおる世界
の旅」のコマーシャルをしておったではないか。
女房:ひっくり返るほど、古い話ですね。いくら日本のお家芸が電化製品で
あるとしても、世界のすべての電化製品を、すべて日本製品でカバー
するのは無理な時代になってきましたのよ。
夫:それでも、日本製は精密で性能がよくて高性能じゃろ?
女房:ええ。でも、機能が高すぎて、色々と必要のないものまでくっついて
いるから、値段が高いと言われてます。シンプルで安くて、長持ちする
ものに世界中の人たちが高い関心をよせるようになったのでしょうね。
サムスンにアップル。
夫:ええい、気分の悪い話しだ。ちょっと、テレビをつけてくれ。わしも
世の中の動きをもう少し知らんといかん。
女房:あなた、目の前にテレビのリモコンがありますでしょ?
夫:うむ、うちのテレビリモコンはデザインがいいな。なんだ?この「サム
・スング」というのは?
女房:韓国の「三星電子」のことでサムスンと呼ばれてますわ。世界の薄型
テレビと半導体のトップシェアを誇る企業ですわ。韓国政府の後押しが
あったのも事実だけれど、2009年には、ドイツのシーメンスやアメリカ
のヒューレットパッカードを超えて、売上高で世界1位になった会社で
すよ。
夫:誰が、こんなテレビを買ってこいと言った!?
女房:地上波デジタル放送に移行するときに、一番安くてデザインのいい液晶
テレビを買ってこいといったのは、あなたですよ。
夫:ソ、ソニーのテレビはどうしたのだ?
女房:ソニーは3年前まで液晶をサムスンから買ってましたのよ。
夫:ええい、何とふがいない連中だ! 電話だ!電話をもってこい!ソニーに
電話をしてやる!
女房:はい、あなた、どうぞ。
夫:うん…おい、これは何だ?
女房:携帯電話です。私のスマホですから、どうぞ使って下さいね。
夫:これは、どこの製品だ?
女房:アメリカ・アップル社のiPhoneよ。
理科好きの若者を育てなければ
夫:いつの間に…いつの間に日本の電子産業は、衰えてしまったのだ…?。
女房:あなた、みっともないから、涙ぐむのはやめてください。
夫:どうすれば…どうすればいいのだ?
女房:まずは、日本の次の世代を担う若者たちが、ものづくり、特に手先が
器用と言われる日本人の技術力を活かせるようなものに、興味を持たな
ければいけません。
夫:うむ、そのとおりじゃのう。
女房:そのためには、理数系の科目に興味をもつ子供たちの数を増やせるよう
国をあげて教育に力を入れていかなくてはなりません。
夫:そうか。次世代の若者たち、子供たちの教育が大切なのじゃな。
女房:そうです。もっと、もっと、日本の若者たちが大きな夢を持って勉強し
ないと、資源のない日本はさらに、とり残されていくことになります。
夫:よし、わしも勉強するぞ。まずは、その「すまアホ」というのを買って
くるぞ。
女房:「ア」をぬいてくださいね。
夫:それから、手本となるテレビ番組を見るぞ。録画しておいてくれんか。
「プロジェクトX」がいいと聞いたぞ。
女房:あなた、悪くはないと思いますが、古すぎますよ。「ガイアの夜明け」
とか「カンブリア宮殿」がいいと思います。
夫:「外野」が夜明けにキャッチボールでもするのか?乾物屋が何で宮殿を
建てるんだ?
女房:テレビ番組の事は、ほとんど何も知らないのですね。…わかりました。
まずは「梅ちゃん先生」から始めてはいかがですか?
夫:いや、あの番組は、先月で終わった。