音響の計画

音響の計画として、音響を特に気にする空間を対象として考えてみます。

特に音響にこだわっていそうな施設としてコンサートホールがあります。

テレビなどの収録スタジオも音にはこだわっているでしょう。

教室や病室も音にはこだわってほしいところです。

教員の言葉が聞き取りにくければ理解もしにくいでしょうし、騒音だらけではストレスが強くて治癒にも時間がかかりそうです。

ここでは、特に音響にこだわっていそうなコンサートホールとスタジオを例に、音響の計画の考え方を紹介します。

最適残響時間

音の響かない場所で音楽を聴いても、さっぱりしすぎて迫力を感じにくそうです。

十分に響いて、十分に迫力のある音量で、コンサートは楽しみたいものです。

では、何を目安に音響を計画すれば良いでしょうか?

その代表的な指標が残響時間です。

建物や空間の用途に応じて最適な残響時間が例示されています。

迫力を重視する音楽系の空間の方が、明瞭度を重視する言葉系の空間より、一般に残響時間は長くなります

コンサートホールで残響時間が短いとあっさりとした音楽に聞こえ、残響時間が長いと余韻のある音楽に聞こえます。

他方、スタジオでは残響時間が長いと聞き取りにくくなり言葉の理解が難しくなってしまいます。

また、音楽系の空間であっても、言葉系の空間であっても、一般に部屋の容積が大きくなるほど最適とされる残響時間は長くなります

最適な残響時間は、迫力を重視する音楽系の用途の空間と、明瞭さを重視する言葉系の用途の空間で大きく異なりますが、具体的には最適な残響時間はどの程度の長さなのでしょうか。

音楽系の用途の空間では残響時間は長めであり、意図的に余韻が発生するよう設計します。

音楽系の用途の空間の最適残響時間はおよそ1.0~2.5秒です。

言葉系の用途の空間では残響時間が長いことによる明瞭度の低下を避けるため、残響時間が一定程度以下となるように設計します。

言葉系の用途の空間の最適残響時間はおよそ0.3~1.3秒です。

平均吸音率

残響時間を調整するには、その空間がどの程度吸音する空間であるかをあらかじめ把握しておくことが必要です。

その空間が吸音する程度を評価する指標として、平均吸音率が広く使用されています。

平均吸音率が部屋の表面積を分母としているのは、主に吸音するのが壁や天井、床や家具などであり、表面の仕様の変更に伴う平均吸音率の変化の程度を直接把握することができるためです。

簡単に言えば、表面積が分母にあるのは、費用対効果の検討をしやすくするためです。

平均吸音率にも、最適な平均吸音率があるようです。

最適な平均吸音率として、音楽系では0.20~0.30程度であるのに対し、言葉系は0.30~0.40と値が大きく、言葉系の空間の方が吸音率を高めることにより残響時間を短くしているのです。