PMV
PMVは偏りのない温熱環境における暑さ寒さの快適さの程度を評価するための指標です。
ISO7730として規格化されており、世界で最も知られている温熱環境評価指標の1つと言えます。
PMVの概要
PMNはPredicted Mean Vote の略で、予想平均温冷感申告と訳されていますが、PMVと呼ぶ方が一般的です。
PMVは、デンマークのFanger(ファンガー)により開発されました。
PMVの開発過程の詳細は、彼の著書 Thermal Comfort に書かれています。
PMVは、温熱環境の快適性に影響を与える6つの要素の全てを考慮した、温熱環境の快適性の評価指標です。
ちなみに、温熱環境の快適性に影響を及ぼす6つの要素は以下の6つです。
気温
湿度
放射温度
気流
着衣量
代謝量
この6つの要素は、2つのグループに分けることができます。よく聞く温熱環境の6要素です。
環境側の要素:温度、湿度、放射温度、気流
人体側の要素:着衣量、代謝量
PMVの算出方法
PMVは以下にて算出することができます。
温熱環境の6要素を入力するとPMVを算出してくれるExcelもありますので、ここでは細かな説明はここではしませんが、何を計算しているのかざっくりとだけ言うと、各記号の意味は以下の通りです。
M
S
W
C
R
Ed
Es
Cres
Eres
K
: 代謝量(W/㎡)
: 熱収支(W/㎡)
: 外部仕事量(W/㎡)…建設作業員のように重いものを持ったり歩き回ったりすることです。
: 対流による熱移動量(W/㎡)
: 放射による熱移動量
: 汗以外の蒸発による熱移動量
: 汗の蒸発による熱移動量
: 呼吸における対流による熱移動量
: 呼吸における蒸発による熱移動量
: 着衣を通した顕熱による熱移動量
つまり、PMVは、肺を含む外気に触れる人体の各部位と、周辺環境との間の熱交換量(熱収支:S)と発熱量(代謝量:M)から、温冷感覚を算出しています。
よく見ると、対流、放射、蒸発による熱移動はPMVの計算過程に含まれていますが、伝導による熱移動は含まれていません。一般に、伝導による熱移動は、熱的快適性を考える際には加味されないのです。
なぜ、PMVを算出するときに、伝導による熱移動を考えなくても良いのでしょうか?
それは、伝導による熱移動量が極端に少ないことによります。オフィスにおいては、伝導による熱移動は椅子の座面とお尻の間と、机と腕の間で生じます。ただ、伝導による熱移動量が多いのは、椅子とお尻、机と腕が接触した直後のみで、すぐに椅子も机も接している皮膚の温度と同じになってしまい、熱の移動がすぐにとても小さくなってしまうのです。温熱環境の評価指標は、安定した状態を想定しているので、お尻や腕の温度が安定しているときには、伝導による熱移動はとても小さいのです。
PMVと体感
PMVは、温熱環境と人の間の熱のつり合い(熱収支と呼びます)と体感の関係を調べる実験結果に基づき、温熱6要素を入力すると温冷感覚が算出される温熱環境の評価指標です。
PMVは正の値が大きいほど暑く、負の値が大きいほど寒く、0が暑くも寒くもない状態を示しています。
PMVと温熱感覚の関係をざっくり書くと以下のようになります。
+3
+2
+1
0
-1
-2
-3
: 非常に暑い
: 暑い
: やや暑い
: どちらでもない
: やや寒い
: 寒い
: 非常に寒い