第5話
『熱を吸う?空調の基本「ヒートポンプ」』
空調設備の熱源
夏には、職場を使う人にしっかりと役割を果たしてもらうためにも、家で熱さで目を覚ますことなく眠るためにも、エアコンは欠かせません。
しかし、エアコンは家庭の電気代の最大の敵のように扱われてしまっています。
残念です。
そういえば、エアコンのことを昔はクーラーと言っていましたね。
実は、昔は冷房しかできなかったのです。
今でも冷房専用エアコンはありますが、多くは冷暖房できるエアコンです。
さて、第5話では、空調設備が空気を温めたり冷たくしたりする熱源を大きなテーマとして紹介していきます。
第5話のポイント
冷媒=熱を伝える媒体
ヒートポンプ=冬の外気よりも冷媒を低温にすることで、冬でも外気から熱をくみ上げる
冷房・除湿と暖房は、高温な冷媒を屋外に持ってくるか室内に持っていくか(低温な冷媒を室内に持っていくか屋外に持っていくか)の違い
空調設備の性能=冷媒の熱をどれだけたくさん空気に移動させられるか
動画:空調設備が一つの設備で温かい空気と冷たい空気の両方を吹き出せるわけは、冷媒の温度の上がる部分と温度の下がる部分の両方が、冷媒の通り道に設けられているからです。
空調設備の仕組み
壁にかかったエアコンで冷房運転すると、室内機から冷たい風が出てきます。
同じエアコンで暖房運転すると、室内機からは暖かい風が出てきます。
似たような能力を持った機器は何をしてくれるでしょうか?
石油ファンヒーターは、温めることしかしてくれません。
ホットカーペットもホット掛布団もホット敷布団もホット座布団もフットヒーターも、温めることしかしてくれません。
なぜエアコンは暖かい空気だけでなく冷たい空気も出すことができるのでしょうか。
それは、冷媒の通り道に、冷媒の温度が上がる部分と温度の下がる部分の両方があり、冷媒を外気より低温にすることによって、冷媒が外気によって温められるからです。
外気から熱(ヒート)をくみ上げる(ポンプ)というプロセス、これがヒートポンプです。
図:暖房では、温度の上がる部分を通った冷媒が室内に送られてきて、室内の空気を温めます。
暖房では、冷媒が温度の上がる部分を通過した後、室内に送られます。
当然、冷媒の温度と室内の空気の温度の関係は以下のようになります。
冷媒の温度 > 室内の空気の温度
冷媒の持っている熱は、室内の空気に移動していきます。
室内の空気に熱が移動していった冷媒は、室内に入るときよりは温度が下がっていて、このままの状態で室内に再び送られても室内の空気を十分に温めることができません。
室内を通過した冷媒が再び暖房としての役割を果たすためには、熱を冷媒の中に取り込む必要があるのです。
室内を通り過ぎた先に冷媒を待っていたのは温度の下がる部分です。
そこで一気に温度を下げられた冷媒は室外機に送られていきます。
この時の外気の温度と冷媒の温度の関係は以下のようになります。
冷媒の温度 < 屋外の空気の温度
外気より温度の下がった冷媒は外気から熱を取り込むことができるのです。
外気から熱を取り込んだ冷媒は、再び温度の上がる部分に送られ一気に高温になり、外気で取り入れた熱を室内に供給するのです。
図:冷房では、温度の下がる部分を通った冷媒が室内に送られてきて、室内の空気を冷やします。
冷房の場合は、暖房とはの順番です。
温度が高くなった冷媒は室外機に送られます。
この時の外気温と冷媒の温度は以下のようになります。
冷媒の温度 > 外気温
高温だった冷媒は、外気と触れることで外気に熱を放出して低温になります。
低温になった冷媒が温度の下がる部分を通過すると、さらに一気に温度が下がります。
室内の空気の温度と冷媒の温度の関係は以下のようになります。
冷媒の温度 < 室内の空気温度
室内の空気の温度より低温になった冷媒には、室内の空気から熱がどんどん入ってきます。
熱を失った室内の空気の温度は下がりますが、冷媒の温度はどんどん上がっていきます。
室内の空気から吸収した熱を放出しなければ、冷房としての役に立つことができません。
冷媒はスタート地点に戻って再び高温になることで室内の空気から吸収した熱を外気に放出することができるのです。
空調設備の大きな役割は、冷房・暖房・除湿です。
冷媒はどのように室内の空気の温度を上げたり下げたりしているのでしょうか?
冷媒はどのように室内の空気から水分を搾り取っているのでしょうか?
冷房・暖房・除湿には、冷媒を高温にする部分や低温にする部分が必要です。
温めるには…燃やす?
冷やすには…!? どうすれば良いの?
空調設備の性能が良いほど、省エネで快適だと言われています。
ところで、空調設備の性能とは具体的にはどんなものなのでしょうか?
なぜ「性能」という一つの指標で、エネルギーと快適性の両方を表すことができるのでしょうか?