熱負荷の種類

建物熱負荷を検討する際に検討する熱源には以下のような項目があります。熱移動のルートに着目することで、漏れなくダブりなく検討することができます。熱移動のルートには、放射、対流、伝導、蒸発があります。また、熱移動のルートではありませんが、熱負荷を考える場合は建物の躯体が保持する熱量である蓄熱も加味します。

放射による熱負荷とその対策

まずは放射による熱負荷から見てみましょう。放射として建物に入ってくる主な熱負荷とは、日射です。日射は夏季において特に大きな熱負荷となります。日射は建物の窓から入ってきますが、窓ガラスの種類や窓システムの工夫により、その影響を調整することができます。

例えば、Low-eガラスや熱戦反射ガラスのような日射を室内に透過しにくくなるよう加工されたガラスやエアフローウィンドウやダブルスキンのような窓システムを採用することにより、日射熱を有効に利用したり、必要以上の熱を遮断したりすることが可能になります。さらに、ブラインドやカーテンによる遮光も有効な手段の一つです。

また、建物の東西南北の位置や窓の配置、窓の大きさなども、日射による熱負荷に影響を与えます。適切な設計により、冬季は日射熱を取り込み、夏季は過剰な日射を遮断するといった、季節に応じた熱負荷の調整が可能になります。

対流による熱負荷とその対策

次に対流による熱負荷について見ていきましょう。対流とは、液体や気体が温度差により移動することにより熱が移動する現象のことを指します。建物においては、換気による外気負荷、隙間風による外気負荷、そして人やPCなどの機器や照明による内部発熱が主な対流による熱負荷となります。

まず、外気についてですが、建物の気密性を高めることで、換気や隙間風による外気の熱負荷を低減することができます。換気口の適切な配置や窓の隙間を最小限にするなど、設計段階での対策が重要です。

また、機器や照明による内部発熱については、消費電力量の少ない機器に置き換えることで抑えることが可能です。これらの機器は放熱量が直接的に熱負荷となるため、LED照明の使用や省エネルギーのPCを選ぶなどが有効です。

さらに、人体からの熱負荷も無視できません。しかし、リモートワークの普及により、オフィスの在室者数が減る傾向にあり、その結果として人体による熱負荷も小さくなってきています。

蒸発による熱負荷とその対策

蒸発そのものは熱ではありませんが、蒸発に伴う湿度調整により、エネルギーが必要となります。湿度の調整は、室内環境を快適に保つために不可欠で、そのためには除湿や加湿が行われます。

除湿は、室内の空気を露点温度より低い温度まで冷却し、水分を凝縮させて除去します。一方、加湿は室内の乾燥を防ぐために水分を空気中に供給します。これらの過程はエネルギーを必要とするため、間接的な熱負荷と考えることができます。

湿度調整のための熱負荷を抑えるためには、まず湿度が適切なレベルで保たれるように、空調システムの適切な調整とメンテナンスが必要です。また、建物の材料や構造が湿度の変動に対応できるように設計されていることも重要です。

蓄熱による熱負荷とその対策

最後に、蓄熱による熱負荷について考えてみましょう。建物の材料や構造は、日中に熱を吸収し、夜間に放出する蓄熱性を持っています。この蓄熱性を上手く活用することで、熱負荷を均衡化し、冷暖房費を節約することができます。

蓄熱材やフェーズチェンジ材料(PCM)のような特殊な材料を利用することで、蓄熱性を最大限に引き出すことができます。また、壁や床の設計により、日中に太陽熱を蓄え、夜間に放出するパッシブソーラーシステムも効果的な手段の一つです。

これらの対策を通じて、熱負荷を最小限に抑え、エネルギー効率を最大限に高めることが可能となります。建築設計の初期段階からこれらの要素を考慮に入れることが、持続可能な建築物を作る上で重要となります。