対流

動いて伝わる熱

固体と流体が触れ合うところ、あるいは異なる流体が触れ合うところで熱が移動する状態を対流と呼びます。

次のようなシーンを考えてみます。

「今朝の天気予防で、『今日の最高気温は35度に達しそうです。熱中症にご注意ください!』と言っていました。昼過ぎに、近くのお店への買い物のために少し外を歩きましたが、それだけでたくさん汗をかきました。汗でべたべたなまま過ごすのはイヤだったので、いつもは40度くらいに設定してある湯温を冷たさを感じるくらいの35度に設定しなおしてシャワーを浴びました。シャワーを浴びた後は、エアコンのついた部屋で、扇風機も回して涼しく過ごしました。」

なぜ、気温の35度は耐え難いほど暑いのに、同じ35度でもシャワーの35度は冷たく感じるのでしょう?

なぜ、体に当たる空気の温度は同じなのに、扇風機を付けると涼しく感じるのでしょう。

その答えは対流による熱の移動に隠されています。

対流により移動する熱の量

対流に関して、式を少しだけ使わせていただきます。

対流により移動する熱の量は、以下の式で計算することができます。

各記号の意味は以下の通りです。

Qconvection

α convection

Ta, Tb

A

:  対流による熱移動量(W)

:  対流熱伝達率(W/㎡℃)

:  対象物aの温度と対象物bの温度(℃)

:  対象物の面積(㎡)

添え字が多くややこしく見えますが、ちょっと俯瞰してみると案外簡単な式になります。

この式は、伝導のページでも出てきた、伝導、対流、放射、蒸発に共通する基本的な式です。

係数、温度差、面積の3点セットがあれば、熱の移動量は求められます。

対流熱伝達率

対流熱伝達率は、対流による熱の移動のしやすさの程度を表す定数です

対流熱伝達率は、流体に対する固有の値(物性値)ではなく、流体の種類や流れの状況、熱交換する相手の物体の形状や表面の粗さなどにより異なります。

対流熱伝達率は主に以下の要因により変化します。

  • 流体の種類

  • 外部からの力による流れ(いわゆる強制対流)の有無

  • 固体表面と流体の温度差(いわゆる自然対流)の有無

  • 流体の流れる方向と固体表面の位置関係

  • 流体の流れる方向と固体の温度勾配の方向

  • 固体の形状や大きさ、表面の粗さ

  • 固体表面と流体の接触面積の大きさ

建物くらいのスケールで考える場合と、対流熱伝達率に概算値を使うことがあります。

例えば、屋外であれば5.8~29.1W/㎡℃(風速が速いほど大きくなります)、室内の壁面では3.5W/㎡℃が使われています。

また、以下には具体的な値や対流熱伝達率の検討方法がが示されています。

海外の誰かの研究成果も、私たちの学ぶ建築環境工学や建築設備の一部に含まれているんですね。

対流熱伝達率の違いは、身近なところでも体験することができます。

例えば、90℃のお湯に触るとやけどをしてしまいますが、90℃のサウナには入ることができます。

液体の水の方が、水蒸気よりも対流熱伝達率が高いことがこのような差の原因です。

式で考えてみます。

添え字が長くややこしく見えますが、着目してほしいのは熱の移動に関する係数(対流熱伝達率)だけです。

この式のうち、各記号の意味は以下の通りです。

α convection-water

α convection-air

Twater

Tskin

Tair

A

:  水の対流熱伝達率=約300~6000(W/㎡℃)

:  空気の対流熱伝達率=約10~300(W/㎡℃)

:  水の温度=90(℃)

:  皮膚温=34(℃)

:  空気温度=90(℃)

:  体の表面積(㎡)

Qconvectionが体に入ってくる熱量です。すなわち、Qconvectionが大きくなるほど、熱く感じると言えます。

さて、Qconvectionを求めるための値を見て行きます。

お湯の温度とサウナの温度が同じ場面を想定しているので、TwaterとTairの温度は同じです。

皮膚温も同じとします。

体表面積ももちろん同じです。

違うのはαconvection-waterとαconvection-airです。

つまり、水と空気の対流熱伝達率の違いが、感じる熱さの違いなのです。