水の使用の問題

建物の中で水を使う際に生じる大きな問題の一つが、給湯時の水温です。低すぎても不都合がありますし、逆に高い温度でも配慮が必要になります。

低すぎる水温は有害な菌の増殖の原因となります。

また、高すぎる水温は配管の伸縮を大きくしてしまいます。

給湯時の低すぎる水温と高すぎる水温に起因する問題以外にも、お湯が蛇口から出るまでにかかる時間の長さやお湯の水圧などの問題も多々ありますが、まずは代表的な問題として、給湯時の低すぎる水温と高すぎる水温に起因する問題を対象とします。

レジオネラ菌

給湯の温度は55度以上で運用することが決められています。

それは、人体に有害なレジオネラ菌が30~50度で増殖してしまうため、給湯の配管の途中で多少冷めてしまっても50度以下の温度にならないように、十分に高い温度で給湯する必要があるのです。

レジオネラ菌は、河川や湖水などの水中や土壌中などに幅広く生息している細菌です。

レジオネラ菌は60度に5分間暴露すると死滅するので、給湯は60度以上であることが理想的です。

加湿器などを介して空中に噴霧される場合も多く、超音波式の加湿器ではレジオネラ菌が繁殖する危険性があります。水を加熱して蒸気を発生させるタイプの加湿器ではレジオネラ菌は死滅して感染する危険性は低いとされています。循環式の浴槽(追い炊き機能付き浴槽)も、レジオネラ菌が増殖しやすい温度となるため、定期的な清掃は欠かせません。

レジオネラ菌は、汚染された細かい霧やしぶきを吸引することにより感染します。高齢者や新生児など肺炎を起こす危険性の高い人にとっては注意が必要です。また、喫煙者もリスクが高いとされています。

配管の伸縮

給湯の水温が高くなると、配管の膨張が大きくなっていきます。

配管の膨張により影響を受けるのは、配管の長手方向です。当然円周方向にも膨張しますが、円周方向では膨張する元の長さ(配管の厚さ)が短いため、膨張したところで大きな影響は出にくいです。その一方で、配管の長手方向には数十メートルもわたり配管が接続されていることも珍しくなく、わずかな割合での膨張も配管や接続部分の折れや曲がりなどの破損に繋がってしまいます。それを補おうとしているのが、配管が伸縮することを前提にその伸び縮みを吸収するための伸縮接手という技術です。

給湯機からの配管や空調の冷媒の流れる配管のように、使用していないときは室温と同程度で使用するときには数十度も高温や低温になる流体の配管の場合、温度差による膨張・伸縮の影響を考える必要がありそうです。

どの程度の膨張や収縮が生じるか、概算で求めてみます。

まずは、配管に用いられる各種材料の熱膨張係数を見てみます。全体として、金属より樹脂の配管の方が単位温度差当たりの伸縮量が大きいようです。

次に、銅管と塩化ビニル管を例に、温度差が生じた時の配管の伸びの程度を算出してみます。

以上のように、熱膨張係数の大きな塩化ビニル管だけでなく、熱膨張係数の小さな銅管においても、配管の伸縮は無視できない程度に大きく、伸縮しても配管が座屈したり折れたりしないように対策が必要です。

その対策が伸縮継手です。

継手一か所あたりで吸収できる伸縮量が、温度変化による伸縮量を超えない間隔伸縮継手を設置するように設計します。

伸縮継手(伸縮曲管)

伸縮継手の代表例が伸縮曲管です。

伸縮ベンドとも呼ばれています。

配管の途中でバネのように靭性を持って変形していく配管があることで、配管の伸縮の影響を緩和してくれます。

大きく分けてUベンド、二偏心Uベンド、円形ベンドの3種類があります。二偏心Uベンドはその形状からタコベンドとも呼ばれています。

伸縮継手(スイベルジョイント)

スイベルジョイントは、伸縮曲線を3次元的に構築した配管伸縮対応策の一つです。

スイベルジョイントはベアリングを備えた配管のことです。

ベアリングを備えていることで、スイベルジョイントに接続された2本の配管は、接続の角度を変えることができるのです。

角度を変えられる効果をイメージしやすくするために、角度を変えられない場合をまずは考えてみます。角度を変えられない場合、直角の配管で接続された二本の配管のうち一方が伸びたら、配管が変形することで伸びを吸収する必要があります。吸収できなければ配管が座屈など塑性変形してしまうかもしれませんし、破断してしまうかもしれません。

角度を変えられるジョイントを備えている場合を考えてみます。この場合、ジョイントを挟んだ二本の配管のうち一方が伸びた場合、スイベルトジョイントの角度が変わることにより変形を吸収することができます。らなに、スイベルジョイントを複数用いることで、水平方向および鉛直方向にジョイントの角度を変えることで、膨張による伸長を吸収することが可能となります。

伸縮継手(ベローズ)

ベローズは、同一直線状の給湯配管の一部を切り欠いて、バネのような構造を取り込んだ継手のことです。

伸縮曲線やスイベルトジョイントのように軸方向から飛び出さないので納まりは良く、ベローズ部分をカバー配管で覆っている場合も多いです。

ただ、伸縮によりベローズの折曲がり部分で曲げ伸ばしが繰り返されるので、金属疲労によりベローズ部分が破断する可能性はあります。

伸縮継手(スリーブ)

スリーブは、ベローズと同様に、配管の軸方向に設けることのできる伸縮継手です。

スリーブは伸縮できる一方で、可動部分があるぶん、パッキンからの漏れなどその他の構造の伸縮継手より劣化や故障が多くなる傾向があります。