空気の質の目安
空気の質の目安とされている物質やその濃度目安は、建築物環境衛生管理基準にまとめられています。
1971年というずいぶん昔にまとめられたもので、根拠があいまいであるなどいろいろ問題点も分かっていますが、目安が無いよりは目安があったほうがましなので今も使われています。
建築物環境衛生管理基準は建築物衛生法という法律の一部です。
空気の質って何?
空気中には様々な物質が含まれていますし、空気自体も様々な状態になります。
その全部が空気の質の構成要素であるといえます。
ただ、全てではわかりにくく、管理もしにくいので、重要な要素に絞って目安を決めています。
例えば、温度や湿度は空気の状態を示す身近な評価指標ですが、空気の質の評価指標としても使われています。
また、二酸化炭素は換気の目安として使われてきてはいますが、実は二酸化炭素そのものはかなりの高濃度にならないと人体に影響を及ぼさないのです。
空気中には一酸化炭素のように命にかかわるような物質から、水蒸気のようなそのままでは特に害のないものまで多種多様な物質が含まれています。
ただ、空気中に含まれる多種多様な物質のうち、人がその存在を検知できたりその濃度を検知できたりするのはほんのわずかな物質に限られています。
例えば、人体は一酸化炭素に反応する嗅覚を持っていませんし、一酸化炭素を味わう味覚も持っていません。
一酸化炭素に触れるとくすぐったく感じる神経系を持っていませんし、一酸化炭素が雲のように見える視覚も持っていません。
命にかかわるような一酸化炭素に対して人体は無防備なのです。
だからこそ、特に感じることのできない物質については、濃度の基準を定めておく必要があるのです。
人が感じることのできない物質(CO, CO2, 浮遊粉塵)
一酸化炭素 CO
空気中の一酸化炭素の濃度はおよそ0.5ppmで、基準とされている濃度は10ppmです。
一酸化炭素は、人体の生命維持に致命的な影響を与える物質で、35ppm以上で頭痛や目まいが生じ、200ppm以上で嘔吐、300ppm以上では意識混濁となってしまいます。
二酸化炭素 CO2
二酸化炭素はありふれた物質ではありますが、空気の質の目安として用いられることが多いです。
空気中の二酸化炭素の濃度はおよそ400ppm(0.04%)で、空気中にすでに大量に存在しています。
いくら換気を続けても、取り入れる外気の二酸化炭素濃度が400ppm程度ですので、部屋の中の二酸化炭素濃度が400ppm程度より低くなることはありません。
室内の二酸化炭素の濃度の基準として、1000ppm(0.1%)以下に維持することが目安となっています。
二酸化炭素の濃度が10000ppm(1%)を超えると呼吸数が増加し、40000ppm(4%)を超えると頭痛、100000ppm(10%)を超えると意識喪失が生じてしまいます。
浮遊粉塵量
浮遊粉塵量は、埃などの微細な物質の量です。
浮遊粉塵はもちろんすでに空気中に存在しており、およそ0.10mg/m3と言われています。
浮遊粉塵量の基準は0.15mg/m3ですが、0.15mg/m3以上の浮遊粉塵のある環境にいる老人は死亡率が高まる傾向にあるといわれています。
人が感じることのできる物質(温度、湿度、気流)
温度や湿度、気流などの温熱環境に関するような要素にも、基準が決まっています。
温度は17~28℃に収まるように空調することが求められています
ただ、28℃のオフィスで過ごすのは、なかなか暑いです。
この28℃は、以前は長時間の滞在時の許容限界の目安温度とされていたそうです。
ところが基準を決めるタイミングで許容限界の温度が目安の温度に置き換わってしまったようです。
相対湿度は40~70%となるよう空調することが求められています。
湿度が低いと、人の粘膜が乾燥し、免疫機能が低下することが懸念されるため、目安として40%が採用されています。
冬季に40%以上の相対湿度を維持することは難しいので、この値は努力目標値のような扱いをされることが多いです。
また、梅雨のころに相対湿度を70%以下に維持することもまた難しいです。
相対湿度が高くなると、結露が生じる危険性が高まります。結露が生じるとカビが発生しやすくなり、アレルギーなどの原因となってしまいます。
気流の目安は0.5m/s以下とされています。
風を浴び続けると不快を感じやすく、血流量の減少による疲労感も生じやすくなります。
また、風速が0.8m/s程度以上に強くなると、卓上の紙などが飛んで行ってしまいます。