第3話

『温度だけでは暑さ寒さを表しきれない』

温熱環境の評価方法

暑さ寒さを表す代表的な方法は温度です。

同じ気温でも梅雨時期のようにムシムシしているのと、カリフォルニアの内陸のようにカラッとしているのでは、体感はずいぶん違います。そうです、湿度も気になる指標ですね。

温度や湿度は温熱環境を評価する指標です。

評価をしたい目的に応じて、評価指標は作られています。

温度や湿度などの様々な温熱環境を評価する指標も、同じようにそれぞれ目的をもって作られてきました。

温度だけでは表し切れない温熱環境の評価指標とは

温度は日常的に見聞きする温熱環境の評価指標ですし、夏や冬には湿度も気になります。

では、通風や扇風機を使ったときに感じる涼しさはどのように表したらよいでしょうか?通風や扇風機により風を得ても、その温度と湿度は変わりません。温湿度が一緒でも、風があると涼しく感じるのです。この涼しさを表したいのです。

大谷資料館や鍾乳洞のような場所に行くと、涼しく感じます。気温の低さも聞いているでしょうが、それだけでは表し切れない涼しさを感じます。このひんやりとした涼しさも温湿度だけでは表し切れませんが、ひんやり感を含んで温熱環境の状態を数値で表現したいのです。

温熱環境の評価指標は、人やモノなど温熱環境の影響を受ける相手にとってどのような環境であるのかを明示するために作られてきました。

例えば、人にとって温熱環境がどの程度快適なのかを評価するための指標や、人が屋外で活動する際に熱中症にならないように熱中症危険度を確認するための指標などが作られています。

桜の開花にとっては、2月1日以降の日最高気温の累積温度が600℃になるくらいのタイミングで開花するという600℃の法則が知られています。その場合、日最高気温の累積温度が桜の開花の時期を知る目安となる指標となります。機械と温熱環境の間に評価指標はあるでしょうか?エラーなく運転し続けられる温湿度であるか確認し、暑さにより停止することなく運転し続けるために冷却用ファンを制御するための評価指標がそれぞれの機械に設定されていそうです。

以下では、人にとっての温熱環境を評価するための代表的な指標を紹介します。

動画:温度はアルコール温度計で測る…のは昔の話です。温度や湿度、風速や放射温度の測り方を実際の測定器を使いながら紹介しています。

人にとっての温熱環境を評価するための指標

人にとっての温熱環境を評価するための指標として、ここでは以下の3つの視点に基づいて分類して紹介します。

  • どれだけ快適か?

  • どれだけ危険な暑さか?

  • どれだけ危険な寒さか?

まず、どれだけ快適か?を評価するための指標を紹介します。代表的な評価指標は以下の2つです。

これらは、いずれも人と環境との間の熱収支にもとづいて熱的快適性を評価する指標です。PMVはISO7730に採用されているくらい、国際的に一般化している指標です。SET*は、ISOにはなっていませんが、使える温熱環境の範囲の広さから世界中で使われています。体感温度として天気予報で使われていたり、空調設備の制御にも使われたりしています。

次に、どれだけ危険な暑さか?を評価するための指標を紹介します。代表的な評価指標は以下です。

WBGT(ダブリュービージーティー)

WBGTは熱中症危険度の目安として気象庁が使っていますし、温湿度の次に身近な評価指標かもしれません。

最後に、少ない測定数で温熱環境を評価するための指標を紹介します。代表的な評価指標は以下です。

OT(オーティー)

OTは、作用温度とも呼ばれます。気温と放射温度の2項目を測定することで、温熱環境を評価することを目的としています。測定項目が少ないため簡便ですが、湿度の違いによる蒸し暑さや乾いた涼しさの違いを評価することはできません。