自然の力を使わせてもらう換気

自然換気は、自然の力を使わせてもらって、室内の空気を外に押し出したり引っ張り出したりして、屋外の空気を室内に押し込んだりする方法です。

自然換気を考える際のポイントは、空気を動かす力と、その力が換気として働く場所である開口です。

自然換気の着目点は開口と力

自然換気は自然の力を借りて室内の空気を屋外に出して、屋外の空気を室内に入れる換気の方法です。

自然のどんな力を借りるにせよ、まず気になるのは開口です。

自然の力を借りられるような位置や形の開口でなければ、換気にはあまり役立たない開口になってしまいます。

室内の空気を押し出す開口や屋外の空気を取り入れることのできる開口があるのであれば、あと必要なのはそこから空気を引っ張り出し、そこに空気を押し込む力です。

換気のしやすさに関する開口の性能は流量係数と呼ばれています。

また、換気に使える力には風圧力という風のと煙突効果という熱の力があります。

これらの力は、室内空気の出口側で室内空気を引っ張り出す際にも働きますし、屋外空気の入り口側で屋外空気を室内に押し込む際にも働きます。

風圧力

風圧力は、風が壁や屋根に圧をかけることによって得られる、空気を動かす力です。

風は、圧は圧でも押し込む正圧だけでなく、引っ張る負圧も発生させます。

風上側の壁への圧

風上側の壁への圧は、もちろん押し込む側の圧です。

正圧です。

風上側の圧は、地面から離れるほど強くなります。

空気はミクロで見るとドロドロの粘性を持った流体です。

ドロドロの粘性を持った流体が地面と接すると、地面と接している流体は動きが止まってしまいます。

地面と設置ている部分の流体の動きが止まると、地面から少し離れた部分の流体の動きも少し引っ張られて動きが悪くなります。

地面からさらにもう少し離れた部分の流体の動きは、地面から少し離れた部分の動きの悪くなった流体に引っ張られて、ほんの少し動きが悪くなります。

という状態を繰り返すことで、地面と接している空気は流れないものの地面から離れていくほど空気の流れは強くなります。

屋根への圧

風が屋根に与える圧は、屋根を引っ張りはがす方向の圧です。

台風くらいの風だと、屋根をはがしていってしまうこともあるくらいの、引っ張る方向の力です。

負圧です。

屋根の風圧力は、屋根の風上側であるほど強くなります。

屋根の一番風上側のすぐ横には、風上側の壁にぶつかって上方向に流れの向きを変えた風がいます。

その風に引っ張られて、屋根の風上側の空気は上方向に少し余計に引っ張られます。

壁にぶつかって方向を変えた風によって少し余計に引っ張られた空気のすぐ風下側の空気も、それに引っ張られてほんの少し余計に引っ張られます。

これを繰り返していくので、風下側になるほど風圧力は弱くなりがちです。

風下側の壁への圧

風下側の壁への圧は、引っ張る方向に働きます。

負圧です。

風下側の壁にかかる圧は、屋根に近いほど大きくなります。

この力は、屋根が受ける力が風上側の壁に近いほど大きいのと同じです。

屋根を通り過ぎる風は、風下側の壁の上端の空気も一緒に引っ張っていきます。

そのため、風下側の壁の上端の空気は、少し強く引っ張られます。

少し強く引っ張られた空気とくっついている上端から少し離れた空気も、ほんの少し強く引っ張られます。

これを繰り返していくと、風下側の壁の上端では引っ張る方向の力が強く、下方にいくほど弱くなります。

煙突効果

煙突効果は、煙突のように高い建物で、煙突のように内部が縦方向に抜けている建物で得やすい、建物内の空気を動かす力です。

温かい空気は上の方に移動していき、冷たい空気は下の方に移動していきます。

より正しく書くならば、相対的により温かい空気は上の方に移動していき、相対的により冷たい空気は下の方に移動していきます。

上の方に移動した温かい空気に出口が与えられると、温かい空気がどんどん上の方に集まってきてぎゅうぎゅう詰めになってきて圧力が高くなってきている温かい空気はその出口から出ていってしまいます。

温かい空気が建物の中から外に出ていってしまうと、建物内の空気が少なくなって、建物内の圧力は下がってしまいます。

建物の上の方は温かい空気でぎゅうぎゅう詰めになっていて圧力が高くなっているので、上からは屋外の空気は入ってこられません。

負圧になった建物に引っ張られ、建物の下方から外気は建物内に入ってきます。

このような空気の動きを煙突効果と呼びます。

相対的な温度差による空気の移動が換気の動力になっているので、温度差換気と呼ばれたりもします。

建物全体を対象とした全体換気でみると煙突効果や温度差換気と言えますが、これは局所的にも作ることができます。

発熱限があるエリアを区画して、床から空調された相対的に低温の空気をエリアに供給することで、床に近いところから徐々に新鮮な空気に置き換わっていきます。

これを置換換気と呼びます。

精密機器を扱うメーカなどでは、換気扇のファンにより空気を撹拌することによる製品の品質へのノイズ(冷まされ方のムラやほこりの侵入)の発生を防ぐために、風の生じにくい置換換気を採用しているところもあります。

流量係数

流量係数は、開口の形状がどれだけ空気を流しやすいのか、に関する係数です。

窓の形によってずいぶんと空気の流れやすさは違うようです。

窓のような四角い開口

窓のような四角い開口の流量係数は、およそ0.6~0.7程度です。

ただ、開口の縦と横の長さが違ってきて長細くなってくるほど流量係数は小さくなっていきます。

換気扇のファンの周りのようなベル・マウス

チリンチリンと鳴らすベルのような口をした開口をベルマウスと呼びます。

ベルマウスの形状は、風の流れがスムーズなことで知られていて、エアコンの室外機のプロペラファンの周りにもベルマウスは使われています。

窓ならではのブラインド

窓を通過したい風にとってはとても邪魔な存在なのがブラインドです。

もちろんブラインドの角度によって風の流れやすさは異なります。

ブラインドの主な役割は日射の制御なので、ブラインドの風の通しやすさは後回しですが、やっぱりブラインドを占めるほど風は流れにくくなってしまいます。