電気・照明設備の概要

電気設備は、我々の日常生活を支えるために、建物の設計と共に設置される重要な要素です。これは、家庭の換気扇からオフィスのパソコンまで、幅広い用途を持つもので、「電源設備」と「照明設備」の二つに大別することができます。また、これらの基本的な設備以外にも、情報通信設備や防犯設備といった様々な専門設備も存在し、これらすべてが一つの電気設備の概念に含まれます。この章では、電源設備と照明設備について詳しく掘り下げていきます。

電気設備の全体構成とその役割

我々の生活やビジネスにおける電気の利用は、実は複雑なシステムの上に成り立っています。電気設備はそのシステムを成す要素の一つで、主に電源設備と照明設備の二つに大別されます。電源設備は、その名の通り電源やコンセントに関する設備を指し、照明設備は照明器具に関わる設備をさします。

さらに、電源設備は、受電設備、変電設備、配電設備に分けられます。これらは電力供給の各ステージを担い、各段階で電力の形態を調整し、最終的に我々が日常生活で使う形の電気にする役目を果たします。

例えば、コーヒーメーカーやノートパソコンを使うためには、これらの設備が正しく機能して初めて可能となります。電力供給の初期段階である受電設備は、高圧の電力を建物に供給します。その後、変電設備で電圧を我々が利用しやすいレベルに調整し、最終的に配電設備を通じて各部屋のコンセントに電力を供給します。このように、電気設備の各要素が連携し、我々の生活を支える無くてはならない存在となっているのです。

受電設備の役割と仕組み

受電設備とは、建物への電力供給の最初のステップで、電柱から延びる電線や地中に埋設されている配管から延長されてくる高圧電線から建物に電力を引き込む設備です。この設備の存在なしでは、ビルや家庭で電力を利用することはできません。

受電設備の仕組みについて詳しく見てみましょう。電気は発熱によるロスを抑えるため、送電する際は高い電圧が利用されます。発電所から送られてくる電圧は、送電路の距離や条件により、数十万V(ボルト)という高電圧になります。この高電圧の電気を建物に引き込むのが受電設備の役割です。

具体的な数値で見ていきましょう。架空の送電線の電圧は、発電所の近くでは50万Vなど超高電圧となっていますが、発電所から離れるに従い15万4000V、6万6000Vと電圧は下げられていき電柱の電線では6600Vにまで落とされます。ただ、地中の送電線は人が触れる危険性が低いので27万5000Vや50万Vなどの超高電圧で送電されています。東京23区では、約9割の送電線が地中化されており超高電圧が供給されています。

この受電設備によって、電線や地中の配管から電力が供給されます。供給される電力の電圧は地域や配線の状況により異なりますが、その全てが受電設備を通じて建物内へと引き込まれ、電気エネルギーとして活用されるのです。 

変電設備の役割と仕組み

もちろん高電圧のままでは使えませんので、電圧を100Vや200Vなど使いたい電圧に変電する必要があります。高電圧の電力を受け取った後、次に重要となるのが変電設備です。この設備は、高電圧の電力を日常的に利用することが可能な電圧に変換する役割を果たします。具体的には、受電設備で受け取った数千Vや数十万Vの電圧を、100Vや200Vといった我々が普段使う電圧に変換します。

変電設備は、変圧器と呼ばれる機器を使用して電圧を変換します。変圧器は、鉄芯と呼ばれる部分にコイル(巻線)を巻きつけ、このコイルに流れる電流の差を利用して電圧を上げたり下げたりします。こうして、電力は適切な電圧に変換され、我々が安全に電気を利用できる環境が提供されます。その機能を持っているのが、建物内や建物周辺に設けられる変電設備です。受電設備と変電設備は、建物内の電気室に置かれるか、屋外であればキュービクルと呼ばれる金属の小屋に入れられます。電柱から電源を直接得ているように見える住宅の場合、電柱に設けられているバケツのようなものが変圧器で、このバケツの変圧器で6600Vから200Vなどに変圧しています。

変電設備は、これだけでなく、電力供給の中で重要な役割を果たします。電圧が適切でないと、電気機器は正常に動作せず、過電圧によっては機器が損傷したり、最悪の場合、火災などの重大な事故を引き起こす可能性もあります。実際は、電圧降下しても大丈夫なように、5%の余裕を持たせて105Vや210Vに変電しています。

配電設備の役割と仕組み

建物内の電力供給の最終段階を担当するのが配電設備です。この設備は、変電設備で適切な電圧に変換された電力を、建物内の各部屋まで供給します。具体的には、配電盤から各部屋のコンセントやスイッチ、照明設備などへと電力を届けます。発電所から受変電設備までのルートも配電設備と呼びますが、ここでは建物内の配電設備のみを対象として紹介していきます。

配電設備の重要性は、電力の供給だけでなく、安全性の確保にも関連しています。配電設備にはブレーカーと呼ばれる装置が含まれ、電流が過大になると自動的に電力を遮断します。これにより、過電流による電気機器の故障や火災を防ぐことが可能となります。また、配電設備は、電力の効率的な利用を可能にする要素でもあります。各部屋や機器に必要なだけの電力を適切に分配することで、電力の無駄遣いを防ぎ、エネルギー効率の良い環境を実現します。 

電気室やキュービクルで受けて変圧した電気は、EPS(Electric Pipe Space/Shaft)を通じて鉛直方向に、天井裏や床下を通して水平方向に配電されていきます。天井裏の配線にケーブルラックが使われているのは見られたことあるかもしれません。

電気関連法規の背景と重要性

電気は私たちの生活を支える大切な存在であり、その役割は日々の生活の便宜を図るだけでなく、人命を守るという重要なものまで含まれています。例えば、冷蔵庫が止まってしまったら食材が傷んでしまいますし、その食材を食べてしまうと私たちの健康は損なわれる可能性があります。また、手術中の病院で停電が起きたら、手術を進めることが出来ず、特に命の危機にある患者さんの手術中だと、その方の命を脅かすことにもつながります。そうした危機を避け、人々の生活と安全を守るために、電気関連の法律が存在しています。

また、電気エネルギーは再生可能エネルギーとしてのポテンシャルも持ち合わせており、地球環境問題の解決策として期待されています。太陽光発電や風力発電など、様々な発電方法が提案されていますが、それぞれが電気を適切に供給し、安全に利用するためには法規制が不可欠です。

電気は私たちの生活を便利にしてくれていますし、私たちの生活は電気なしでは維持できなくなっています。ライフラインである電気が不都合無く供給されるために、主に4つの法律で最低限の電気の仕様が整えられています。

電気用品安全法の概要

電気用品安全法は、電気用品の製造、輸入、販売の手続きなどを規定し、我々が日常で利用する電気製品の安全性を確保することを目的としています。電気用品とは、家電製品や照明器具、電線、スイッチ、プラグ、電池など、私たちの周囲に数多く存在し、日常生活を支えるアイテムです。電気用品安全法は、それらが安全に使えることを保証し、万が一の事故を防ぐ役割を担っています。

また、電気用品安全法は電気用品安全法施行令、電気用品安全法施工規則、電気用品の技術上の基準を定める省令により構成されています。

一つ目は電気用品安全法の本体です。電気用品の製造・輸入・販売の手続きなどが定められています。

二つ目は電気用品安全法施行令です。建築基準法にも施行令がありますが、それとはちょっと性質が異なり、電気用品の定義だけでなく権限などについても書かれています。

三つめは電気用品安全法施工規則です。ここには電気用品の事業者の手続きが書かれています。

四つ目は電気用品の技術上の基準を定める省令です。建築基準法における施行令の役割を果たしています。電気用品の設計の際には、この省令をよく見ます。

これらは、製品の設計や製造、販売までの各プロセスにおける安全基準を示し、各関係者がそれに従うことで、我々の生活が電気製品から生じる危険から守られるようになっています。

電気事業法の役割

電気事業法は電力会社などが行う送電事業や、電気工事に関する法律で、電気工事を担当する人に求められる資格などが書かれています。

なお、電気主任技術者以外のいわゆる素人が行うことのできる作業は、家電を置いてコンセントに指すまでです。

電気工事士法

電気工事士法は、電気工事をすることのできる資格や義務が定めてある法律です。電気工事の失敗が原因の火災や感電などを予防することが目的です。

電気工事士には第一種と第二種の二種類の資格があり、建築士と同じで第一種の方が扱える工事の範囲が広いです。

電気工事の業務の適正化に関する法律

電気工事の業務の適正化に関する法律は、電気工事を担う企業に対する法律です。

例えば、電気工事を担う会社は登録をすることが決められていたり、主任電気工事士を置くことが決められたりしています。また、電気工事士が使うことのできる電線や器具、照明や発電機などについても、認証されたもののみを使うよう決められています。

電気に関するその他の法律

電波法とその重要性

電波法は、無線通信を規定する法律であり、電波の適正な使用とその公正な競争を保証しています。電波とは、放送や通信、レーダーなど、我々の生活の様々な部分で使われている重要なエネルギーです。テレビやラジオの放送、携帯電話やWi-Fiの通信、飛行機や船舶のナビゲーション、天候予報のレーダーなど、これら全てが電波を利用しています。

電波法は、電波の使用に関するライセンスを発行し、特定の周波数帯域を使用する権利を付与します。また、互いの通信が干渉しないように、各ライセンスは特定の周波数帯域と技術基準を指定しています。これにより、我々の生活は電波を適正に使用し、情報通信がスムーズに行われることを保証しています。

原子力関連法規とその重要性

原子力は、電力の大部分を供給する一方で、放射能漏れや核分裂による放射性廃棄物の問題を抱えています。そのため、原子力発電所の設計、建設、運用、廃棄物の処理など、全ての過程において厳密な法律が必要となります。これらの法律は原子力関連法規と呼ばれ、原子力基本法、原子力規制委員会設置法、電源三法(電源開発促進税法、電源開発促進対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法)などがあります。

これらの法規は、原子力発電が安全に行われ、放射性物質の適切な管理と廃棄が行われることを保証します。これらの法規は、日本だけでなく世界中の国々で採用されており、国際的な協力と協調の下で形成されています。これらの法律は、我々が電力を安全に供給されるとともに、放射能漏れや放射性廃棄物の問題から保護されることを確保しています。

以上、電気エネルギーの安全と利便性を保証するための法規制について説明しました。これらの法律が、日々の生活の中で安全に電力を利用できる環境を作り出し、私たちの生活を豊かにしています。