第8話

『永久日影って陰鬱な響き』

太陽の動きと日影

イギリスにストーンヘンジという遺跡があります。夏至の日には、巨大な石を円形に配置したストーンヘンジと呼ばれる祭壇と、そこから100mほど離れた場所にあるヒール・ストーンと呼ばれる立石を結んだ直線上から太陽が昇るそうです。

メキシコにはチチェン・イッツァと呼ばれるピラミッド状の遺跡があります。春分の日と秋分の日の日没時には、ピラミッド状の遺跡の北面中央に設けられた階段の影が巨大な蛇のように見えるそうです。

ペルーにあるマチュ・ピチュはインカ帝国の遺跡で空中都市として知られています。冬至の朝、マチュ・ピチュの大塔の窓から入る光がその部屋の中央の岩に刻まれた刻印を照らすそうです。

遺跡と呼ばれるほど昔々の建造物でも、夏至、冬至、春分、秋分という日を何かの目安としていたようです。

建物を扱う私たちにとっても、夏至、冬至、春分、秋分という日は、エネルギーや日照を考えるうえで欠かせない日です。

ここでは、建築と太陽の動きの関係を考えていきます。

第8話のポイント

  1. 地軸の傾きは23°、東京の緯度は35°。

  2. 各面の日射量は、ベクトルで考える。

  3. 日の一番長い夏至の日に終日日影となる場所は一年中日影の永久日影。

まず、公転面に対して地球が傾いている点がややこしいです。

さらに、赤道を基準とすると東京は北の方向に角度を振った位置にあるのがややこしさを増しています。

夏の日差しに対しては着衣量を減らしたり、短波長を反射する白い色の服を選んだりして、日射の影響を調整しようとします。

着衣という一体の要素で対策をとることしかできませんが、建物の場合、東面の壁、南面の壁、西面の壁、北面の壁、屋根のそれぞれで異なる対策をとることができます。

だからこそ、方位ごとの面と日射量の関係を把握することは、建物の設計において重要なのです。

自分の家が、北側の家の日射を遮っている場合、北側の家は何時間の日照時間を得られたらクレームを言ってこないでしょうか?

そもそも北側の家は何時間の日射を得られるのでしょうか?

それを教えてくれるのが日影時間図です。