気流設備
風速を上げて涼しくする。風速を下げて寒さを和らげる。
気流設備では、もちろん風を使います。
ただ、扇風機だけの話をするわけではありません。
気流は、熱い時と寒い時とで大きく価値が変わってしまうので、使い方はちょっと繊細です。
気流と熱的快適性
「冷房しながら扇風機を使うと省エネで快適ですよ!」とテレビの天気予報で言っていたりもします。
でも、「暖房しながら扇風機を使うと省エネで快適ですよ!」とは聞きません。
何故でしょう?
気流と冷房
冷房と扇風機を併用すると、涼しさが一層増して快適です。
それは、冷房と暖房とでは、人に風が当たるときに、熱を逃がしたいときに熱を逃がしてくれるのか、熱を逃がしたくないときに熱を逃がしてしまうのか、という違いがあるのです。
冷房時を考えてみます。わきの下で測る体温が36℃くらいなので、体の表面の温度は34℃くらいだとして、室温はそれよりもっと低い28℃くらいだとします。すると、34℃の体温に28℃の風が当たれば、体からの放熱量が増えていき、快適に感じます。
気流と暖房
暖房時を考えてみます。体の表面温度が34℃くらいだとして、室温はそれより低い23℃くらいだとします。風が当たれば当たるだけ、体から放熱していき、寒く感じます。
それでは、暖房の風で温かいと感じるにはどうすれば良いでしょうか?
基本的には、体の表面温度より高温の風が体に当たる必要があります。
ただ、体の表面は常にうっすら湿っているため、風が吹くとその水分が蒸発して気化熱として体の表面から熱を奪い、体の表面を冷やしてしまいます。
そのため、気化熱として奪われる熱よりも多くの熱が体に入るような温度の風を体に当てる必要があるのです。
風速が速くなると蒸発する量も増えるので、風速が速い場合はさらに高い温度を供給する必要があります。
風を当てて暖房するのは、なかなか難しいです。
風をまとう
扇風機やシーリングファンなど、いろんなサイズのファンが設置されています。
ただ、雑貨屋さんに行けばハンディーなファンが売っていますし、PCには小型のファンがついています。
もちろん羽根が小さければ、消費電力量も少なくて済みます。
気流で熱的快適性を高めるのに、必ずしも大きなファンは必要ないかもしれません。
部屋の空気を動かす
部屋の空気を動かして風を体に当てる場合、大きなボリュームの空気を動かす必要があります。
もちろん大きな羽根の大きなファンの場合、消費電力量も多くなります。
人のすぐ近くの空気だけを動かす
部屋の壁際を流れている気流は、部屋の真ん中にいる人の暑さ寒さには影響しません。
また、部屋の壁際に座っていて壁際を流れている気流に当たっていたとしても、その部屋の中の別の場所に移動してしまえば、壁際を流れる気流は自分に影響しなくなってしまいます。
それならば、部屋全体の空気を動かせばよいではないか…というのは、大きなファンと大きな消費電力量が必要となってしまうので、実現するのはなかなか難しいです。
人の快適性に影響を及ぼしている空気はヒトの皮膚に触れる空気だけである、ということに気づくとその解決策が見えてきそうです。
このような考えで生み出されたのが、腰のあたりにファンがついていて、手首や襟の隙間から風が抜けていく「空調服」と呼ばれる服です。
はじめは建設現場の技術者や交通整理してくれている方々が主に使っていましたが、今では幅広い分野の作業着として使われています。
実はこの空調服、体からの放熱を促進するという点では、かなり合理的に設計されています。
ファンは周囲から空気を取り込むため、取り込まれた空気は特に冷たいわけではありません。
その一方で、より風速の早い空気は、より多くの熱を物体表面(この場合は皮膚の表面)から奪っていきます。
さらに、より風速の早い空気は、より多くの水分(この場合は汗)を蒸発させていきます。
さらにさらに、最も風速の早くなる部分、すなわち狭くなっている部分は襟や袖口となりますが、首や手首の皮膚の近くには太い動脈が流れているため、首や手首を冷やすことは動脈を冷やすことになり動脈を流れる血液を冷やすことにより体中が冷やされていくのです。