放射空調

壁・床・天井の温度を下げてじんわり冷やす。温度を上げてじんわり温める。

洞窟の中に入った時のじんわりとした壁・床・天井の涼しさ。

キャンプファイヤ―の時のじりじりとした炎の熱さ。

これらは、いずれも放射という熱の移動経路で人と環境との間で熱移動しています。

そういわれても、温度や風速、湿度などのように身近に感じたりすることのあまりありません。

放射というやつは、主張の弱い空調方法なのかもしれません。

では、放射を使った空調とはどのようなものなのでしょうか。

放射空調って、どこに設置するもの?

自宅のリビングに放射空調を設置する場面を想像してみます。

どこに放射空調を設置するのが良いでしょうか?

自分の頭上だけあれば良いのでしょうか?

放射空調は、ユーザーとの位置関係によって空調の効果が大きく変わってしまうので、慎重なエンジニアリングが必要です。

一般的な設置場所

放射空調は、壁や天井に設置することの多い空調方式です。

天井に設置する

天井に設置する場合、天井の広い範囲に設置する必要があります。

例えば、頭上だけに天井放射冷房を設置した場合を考えてみます。

人が熱移動経路のうち放射により周囲と熱交換する割合のうち、天井の放射冷房の占める割合は、ずいぶん小さくなってしまいます。

つまり、面積が小さいと、得られる効果が小さいのです。

ちなみに、放射により熱交換する割合に占める、天井放射冷房の割合は投影角の考え方です。

少し建築環境の用語でいうと、形態係数とも呼ばれています。

天井全体に天井放射冷房を設置したとしても、人と周辺環境との間の放射による熱移動量に占める割合のうち、天井放射冷房の割合はまだまだ小さいです。

壁や床との放射による熱交換が支配的となってしまうことを考慮した設計が放射空調を適用するときには必要です。

人の生活エリアのの壁は人と同じ高さにあるため、近くに近づくことができます。

放射冷房を壁につけた場合、高い冷房効果を得られるかもしてません。

しかし、実はここでも天井に設置するときと同じ問題が生じます。

人が壁放射冷房の近くにいるときには大きな効果を得られることは間違いなさそうです。

ただし、同じ大きさの壁放射パネルを同じ高さに、人から遠い方の壁に設置した場合はどうなるでしょう。

壁放射パネルの占める割合が一気に小さくなってしまいます。

室内で雨が降る!?

放射冷房を使用する場合、1点大きな注意事項があります。

それは、「空気の露店温度より低温にすると、室内で雨が降る」ということです。

空気中には水分が含まれています。

空気が冷やされ、空気中に含むことのできる水分量が少なくなると、結露が生じます。

放射空調では、表面温度を低くするため、表面で結露する危険性があります。

すなわち、天井で結露した水が降ってきてしまうのです。

では、表面温度を露店にならないように十分に高い温度で維持すればよいのでしょうか?

そうとも言えないのが放射空調の難しさです。

放射冷房の表面温度を上げると人と放射空調の表面温度の差が小さくなります。人と放射空調の表面温度の差が小さくなると、熱交換量が少なくなり、涼しさを感じにくくなってしまうのです。