受水槽

受水槽があると、断水時でも一時的に給水を継続することができます。

その一方で、受水槽を設置するには専用のスペースやメンテナンスなど、受水槽本体を入手する以外にもコストがかかってきます。

ここでは、メリットもディメリットも大きい受水槽について紹介していきます。

受水槽

受水槽は本体のコストに加えて大きな専用スペースが必要で、設置には大きなイニシャルコストが生じます。また、定期的にメンテナンスも必要で、ランニングコストもかかってきます。イニシャルコストもランニングコストも大きいため、近年では実施される割合は低下しつつあります。その一方で、受水槽があることで、断水時にも受水槽を水源として使うことができ、営業を継続することができます。

例えば、医療施設や飲食店などは、断水時でも水を使うことができればそれぞれのサービスを提供し続けることができます。

受水槽の設置においては、必要な仕様やスペースがあります。主な要素は下図の通りです。

まず、人が点検するための空間が必要です。点検員が全面を点検するために、下方および側方には少なくとも600mmの空間が必要です。また、上面にはΦ600mm(直径600mm)以上のマンホールが必要で、そのマンホールのふたを全開にして人が受水槽内部に入るための動作空間として上面には1000mm以上が必要とされています。

内部が二層式になっている受水槽を採用すると、一方の受水槽を定期点検や清掃などのメンテナンスをしている最中でも他方の受水槽を使用し続けることができ、断水を回避することができます。

受水槽には大量の水が蓄えられるため、受水槽は非常に重くなります。そのため、構造的にも補強が必要になってきます。まず、受水槽の架台と受水槽を載せるための基礎部分はアンカーボルトで固定します。受水槽を載せる基礎部分には鉄筋を配し、基礎部分と建物の構造を一体化します。さらに、受水槽の重量を受水槽の基礎から受ける建物の構造部分には、受水槽の重量に耐えられるだけの構造補強を実施します。

下の受水槽には左右に梯子があり、マンホールもそれぞれついているように見えるので、二層式のようです。

受水槽の下には、600mm以上の点検用空間が設けられています。

揚程

揚程は、受水槽より上に給水する場合に関わってくる考え方であり、受水槽を用いる給水方式のみに関わるものです。

排水管から引き込み給水する受水槽を用いる給水方式は、高置水槽方式かポンプ直送方式です。いずれの方式も受水槽から上方に給水するために、ポンプを含む給水ユニットが必要です。受水槽より上方に給水するためにこのポンプが作り出す必要のある圧力が揚程です。

揚程は主に3つの圧力の合計値で求めることができます。それが以下の3つです。

P1:給水ユニットから受水槽まで(給水ユニットの上流側)の給水器具や配管による圧力損失。

P2給水ユニットから給水器具まで(給水ユニットの下流側)の給水器具や配管による圧力損失。

P3給水ユニットから給水器具までの高低差。

圧力損失は、流体が配管内を運動する際に配管や給水器具から受ける抵抗です。ここで、配管内を連続して流れる水の流速分布を考えてみます。

普段触れている水はさらさらとしていますが、配管との間では抵抗が生じています。流体力学の視点では、水はどろどろとした粘り気のある(粘性がある)液体で、配管内を流れる水のうち配管と接している部分は、配管から摩擦抵抗を受けていると考えます。配管と設置ている部分の水の流速はゼロとして考えることも多いです。配管と接している水は配管との間で摩擦を受け流速が遅くなります。それより少しだけ配管の内側にある水は、配管から直接は摩擦を受けませんが、配管に接している水との粘性で引っ張られ、流速が少し遅くなります。そのため、配管から最も遠い配管の中央部分の水の流速が最も早くなります。

配管に直接触れていない部分の水も、水自体の粘性により配管の摩擦の影響を受けて圧力を失います。これが給水器具や配管による圧力損失です。

圧力損失は配管の長さが長いほど大きく生じますし、配管の径が小さいほど大きく生じます。

配管の長さが長いほど圧力損失が大きく生じるのは、摩擦による抵抗を受ける距離が長くなるほど運動エネルギーを失っていくことによります。また、配管の径が小さいほど圧力損失が大きくなるのは、水の単位容積あたりに占める接触する配管の面積が配管の径が小さいほど大きくなることによります。

受水槽の設計用標準震度

構造設計に用いる設計用標準震度は、受水槽を用いることによりより大きな値となります。

構造設計において、設計用標準震度と機器の重量の積は地震力として扱われます。設備機器の重要性が高い場合には設計用標準震度の値は大きくなり、その分構造上不利となります。

なお、設計用標準震度は受水槽本体に掲示されているようです。