第2話
『暑ければ冷やす。寒ければ温める。自動で。』
温熱環境と人の関係
暑い日には汗が出ますし、顔が赤くなったりします。
寒い日には、手足が冷たくなりますし、震えてしまうこともあります。
汗や紅潮、手足の冷えや震えは、温熱環境から人の命を守るために人体が備えている自動的な反応ですし、暑さや寒さを感じることさえも命を守ることにつながる人体の自動的な反応です。
「温熱環境から人の命を守る、人体の自動的な反応」とは?
動画:暑さ寒さって人にとってどんなもの?について脳波や心拍などの様子を踏まえ紹介しています。
普段の私たちが脇に温度計を挟んで測る体温は、およそ36~37℃です。
室温が20℃にも届かないくらいの冬であっても、室温が30℃を超えるような夏であっても、私たちの体温はいつも同じくらいの温度です。
ワニやトカゲの体温は、寒い時には低くなり、熱い時には高くなりますが、私たちの体温はおよそ一定です。
私たちの体温がいつも同じくらいの温度であり続けられるのは、温熱環境から受ける影響を緩和するいろいろな反応が自動的に生じているおかげなのです。
温熱環境から受ける影響を緩和する反応はいくつもありますが、大きく以下の3つに分けて考えることができます。
汗をかいたり、手足が冷えたり、震えたりする反応
暑いと感じたり、寒いと感じたりする反応
エアコンをつけたり、寝ているときに布団を蹴飛ばしたりする反応
これらの反応は、次の言葉で置き換えることができます。
温熱生理
温熱心理
行動的体温調節
空調設備は、温熱環境を調整する設備です。
それでは、何のために温熱環境を調整するのでしょうか?
それは、温熱生理的な反応があまり生じず、温熱心理的には高い快適性を得られ、行動的体温調節が発生しない温熱環境を作ることと言えます。
以下では、これらについて一つずつ説明していきます。
ここでは、温熱生理について説明します。
汗をかくことによって気化熱として皮膚の温度を下げたり、震えることによって筋肉を動かし激しい代謝を促進することにより発熱するなど、体の中に蓄えられている有限の資源を消費して、体温は調整されています。
図 サーモカメラで撮影しています(カメラに写っているのは、被写体の表面温度です。)
図 サーモカメラで撮影しています(カメラのレンズは直径8cmくらいもあります)
ここでは、温熱心理について説明します。
寒いと感じたり暑いと感じるのは、神経の働きによるものです。熱いお湯に指を突っ込んでしまったときに、つい「冷たっ!」と言ってしまうのは、実は神経の働きにより本当に冷たく感じてしまっているからなのです。
ここでは、行動性体温調節について説明します。
暑さを感じたときに、皆さんは何をするでしょうか?エアコンをつける人もいれば、上着を脱ぐ人もいます。窓を開ける人もいれば、扇風機をつける人もいると思います。同じ快適性を得るのための行動にも、いろんな種類の行動がありますね。なるべくエネルギー消費量の少ない方法を選択してほしいなと思うのですが、どうすれば行動変容を誘発できるでしょう?