SET*

SET*も偏りのない温熱環境における体感温度を評価するための指標です。

入力項目はPMVととてもよく似ていますが、値の表示方法は大きく異なります。

SET*は温度という形で表示され、単位は℃です。

ちなみに、SET*はエス・イー・ティー・スターと読みます。

SET*の概要

私たちの普段遭遇する温熱環境には、蒸し暑い日もあれば、気温は高いけれど湿度が低くそよ風の涼しい日もあります。

また、同じ温熱環境の中にいても、厚着をしていれば暖かく感じますし、動いていれば暑く感じるように、私たち自身の状態が異なることにより暑さ・寒さの感じ方が異なることもあります。

温熱環境の感じ方の違いは、主に以下の6つの要素によって決まってきます。温熱環境の6要素と呼ばれています。

  • 気温

  • 湿度

  • 放射温度

  • 気流

  • 着衣量

  • 代謝量

私たちが日常で遭遇する温熱環境の6要素は様々です。種々の温熱環境を、温熱感覚と熱収支が同じになるように、ある一種類の状態の温熱環境の6要素の組み合わせに換算した温度がSET*です。

「ある一種類の状態」とは、具体的には以下の状態のことです。

相対湿度

風速

代謝量

着衣量

: 50%

: 0.10m/s

: 1met

: 0.6clo

いわゆる体感温度としてSET*は使われているようです。

また、空調設備の設定温度に対する内部の制御において、SET*はバックグラウンドで計算されていることも多いようです

SET*の計算方法

SET*の計算方法は極めてややこしいので、概念だけ説明します。

何故ややこしいかというと、発汗環境も加味できるので、PMVと比べて適用範囲が広くなりますが、計算過程もややこしくなってしまうのです。

SET*を算出することのできるExcelも出回っていますので、ここでは概要だけの説明にとどめておきます。

trs

tas

rhs

vs

Ms

Icls

:  標準環境における放射温度(℃)

:  標準環境における空気温度(℃)

:  標準状態における相対湿度(%)

:  標準状態における風速(m/s)

:  標準状態における代謝量(met)

:  標準状態における着衣量(clo)

添え字のsは標準状態であることを示しています。標準状態ばかりですね。

SET*は、温熱環境の6要素のうち室温以外を標準状態に置き換えたときの室温なので、標準状態ばかりが登場してくるのです。

実際の温湿度や風速、着衣量や代謝量は、2層モデル(2 Node Model)という人体の温度分布をシェルとコアに分けて考えるモデルを用いた人体と環境の間の熱収支計算を経て、標準状態に置き換えられていきます。

SET*と体感

私たちは、日常生活で、環境にあわせて着衣量を調整しています。着衣量を一種類の標準状態と仮定して算出しているSET*の温度と私たちの感じる温度では、少しずれているように感じることもあるようです。

SET*と温冷感覚や快適感は、以下のような関係です。

SET*と温冷感の対応を見てみると、やや暑がりの人を対象としているようにも見えます。

これは、SET*の算出過程で想定されている人体が、ワイシャツ・長ズボンを着てオフィスでデスクワークをしている人体であることが原因の一つのようです。