音の物理

音楽であっても騒音であっても、どんな音も物理現象です。

ここでは、少しだけ式を使って音を表現してみます。

対数が出てきたりしますが、なぜ対数を用いるのかや10倍しているのはなぜかなど、数式が生み出された背景にも少し触れています。

音の物理

人が日常的に接する空気の温度の範囲は、冬の外気温のおよそ-10℃~夏の車内の温度であるおよそ40℃です。

また、人が日常的に触れる空気の流速の範囲は、およそ室内の無風時の0m/s~台風の時の50m/sです。

それと比べると音環境の取り得る物理量の範囲(人の可聴域)の下限(20μPa=20×10の-6乗Pa=0.00002Pa)と上限(20Pa)の差は10の6乗にもなります

圧力をそのまま音環境の指標とするのは、扱う桁数の幅が大きくちょっと使いにくいです。

そこで用いる手段が「対数をとる」という方法です。

対数をとることにより、掛け算を足し算にすることができ( A=log(B×C)=logB+logC )、値のとり得る範囲を狭くすることができます。

また、基準値との比で表すことで、もっと表現を単純化できそうです。

このようにして得られる物理量の指標を「音圧パワーレベル」と呼びます。

なお、音環境に関しては、対数をとることにより値のとり得る範囲が逆に狭くなりすぎてしまったので、L=10Log... の「10」は調整のために付けられています。

試しに、人の可聴域を音圧パワーレベルで表現してみます。

人の可聴域はおよそ0.00002Pa(20μPa)~20Paです。

基準とする値は、人の可聴域の下限値である20μPaです。

その結果、0.00002Pa~20Paで表現していた音圧を、0~120dBという数字に置き換えることができ、扱いやすくなりました。

そしてその結果求められが指標は、実用的電話を世界で初めて開発したグラハム・ベルにちなんでベルと名付けられています。もう少し詳しく言うと、対数だけでは値が小さくなりすぎてしまったことへの対応として10倍しているので、本当の値は1/10です。1/10にすることを意味するデシ(d)をつけてデシベル(dB)と呼びます。

なお、知っておくと便利な数字が3dBです。

何が3なのかというと、同じ音源を3つ置いた場合の音響パワーレベルの変化量です。

1基で40dBの音響パワーレベルのスピーカーをもう一台持ってきた場合、二台の同じスピーカーによる音響パワーレベルは40dB×2=80dBではなく、40dB+3dB=43dBなのです。

なぜそうなるかは、以下の計算式を見てください。

音の波長

空気の振動が音です。振動の大きさが振幅でありそれが音の大きさになります。単位時間当たりの振動の頻度が周波数です。音は発せられてから空気中ではおよそ340m/sで進むため、周波数が分かるとその波の1周期の長さが分かります。

人が聞き取ることのできる音の周波数(可聴周波数)はおよそ20Hzから20kHzです。つまり、一秒間に20回往復する振動から、一秒間に20000回往復する振動の範囲の音を、人は聞き取ることができます。

これらに基づくと、人の可聴域の音の波長(1周期の長さ)を求めることができます。

音を直接見ることはできません。ただ、17mm~17mという人の聞くことのできる音の波長のスケール感は、以外と人の日常的なスケール感と近いようです。

音の伝わる速さ

音の伝わる速さは、中学の理科や高校の物理で習ってきたとおり、およそ340m/sで室温に比例して早くなります。

なかなか体感することは難しいですが、音の伝わる速さは以下に示す通り、空気中より水中、水中より個体の中の方が早いです。

音の伝わる速さ:個体>液体>気体

気体より液体、液体より固体の方が、音は早く伝わります。

音により生じる圧力の粗密を伝える分子間の距離が短く分子の移動を必要としない固体において音の伝播速度は早く、隣の分子に圧力を伝えるまでに時間のかかる空気中では音の伝播速度は遅いのです。