十分な圧力で水を届ける方法

給水設備の大きな役割は、建物のどこであっても、いつの時間帯であっても、蛇口やシャワーヘッドから十分な圧力で水が出る状態にすることです。

これがなかなか難しいのです。

水圧は場所によって強いところもあれば、弱いところも生じてしまいます。

オフィスで大勢がトイレや洗面所を使う休憩時間や、集合住宅で大勢がお風呂に入る夜の時間には、一時的に多量の水が使われるため圧力の変動が大きくなりがちです。

そんな外乱を受けても、蛇口から出る水の勢いを一定に保つ技術を、これまでのエンジニアたちは生み出してきたのです。

給水のための設備

まず初めに、建物に設けられている水道やトイレの水はどこからきているか考えてみます。

建物で直接得られる水と言えば雨水くらいです。

ただ、雨水はトイレの水になるかもしれませんが社員食堂の料理に使う水にはなりません。

社員食堂の料理に使う水は、道路の下に埋まっている配水管を流れる消毒されたキレイな上水を使います。

また、便器の使用水量が少なくなってきていたり、ウォッシュレットなどに使用する水質として上水が求められることが多くなったりして、雨水の利用方法も庭園散水や雨水浸透などに限られてきているようです。

庭園散水は庭に水を撒くことで、雨水浸透の一種といえます。

雨水浸透は、雨水を排水せずに地面に撒くことで、排水溝のにたどり着くまでの時間を稼ごうとするものです。河川の氾濫や都市の道路の冠水は、それらの許容水量を超えることで生じます。雨水が排水溝までたどりつくまでの時間を長くすることができれば、最終的には河川に流れ着くにせよ、河川水位が下がるまでの時間をかせぐことができるかもしれませんし、河川の氾濫を避けられるかもしれません。

道路の下に埋まっている配水管から、水をいただくことにしましょう。

どれだけいただいたかは、配水管につなげる量水器を見るとわかります。

量水器で水量をきちんと量ったら、まずは水槽に入れておきましょう。

ここでは水槽に水を入れていますが、中小規模の建物には水槽を使わない給水方法が一般的です。

受水槽を作ると初期費用に加えて受水槽を定期的に清掃するメンテナンスも必要ですし、受水槽から各戸へ給水するためのポンプも必要になってきます。

受水槽があると断水時にも安心ですが、一長一短です。

水槽に入れておくだけでは、まだ水を使えるようにはなりません。

停電でポンプが動かなくなったのであれば、バケツを持って水槽まで水を汲みに行かなければならないでしょう。

普段の生活においてはポンプに動いてもらってシャワーヘッドまで十分な水圧を供給してもらいましょう。

台所の蛇口やシャワーヘッドから、十分な水圧で水が出るようになりました。

十分な水圧を小さな変動で届けるためのエンジニアリング

建物の中の、全ての蛇口やすべてのシャワーヘッド、全てのトイレに一定の水圧の水を届けたいのですが、水圧はいろんな条件で変わってしまいます。

例えば、以下のような要素が、建物内の圧力のばらつきの原因となります。

  • 配管の距離の違い(配管の中を水が通るときに、配管の壁面との摩擦が圧力を下げる原因となります。)

  • 蛇口の高さの違い(1階の蛇口と2階の蛇口では、同じ水圧を得るために必要な水圧は2階の蛇口のほうが大きくなります。位置エネルギーの差です。)

例えば、平屋であれば圧力を下げる要素が家じゅう似たようなものですので、家じゅうのの蛇口での同じような水圧を作りやすいのです。

その一方で、超高層では位置エネルギーの差が大きく、配管の長さの違いも大きいので、水圧のとり得る範囲も広くなってしまいます。

ポンプと水槽の使い分け

超高層の建物と、平屋の建物では、もちろん給水設備に大きな違いがあります。

その違いは、水槽とポンプの使い方の違いです。

水槽とポンプの使い方の違いにより、給水の配管は次の4つの種類に大きく分けて考えることができます。

  • 高置水槽:位置エネルギーで水圧を生み出す方法です。昔の団地などでも使われています。

  • ポンプ直送:一度水槽に水をためて、ポンプのみの力で水圧を生み出しています。

  • 直結直圧:水道管の水圧のみに頼る方法です。

  • 直結増圧:水道管の水圧だけでは足りない場合に、補強のポンプで水圧を生み出す方法です。

高置水槽

高置水槽は、最も高い地点で使われる水道の蛇口よりも高い位置に水槽を設けることにより、位置エネルギーの差を生み出し水圧を生み出す方法です。

昔の団地などでも使われています。

高置水槽を設ける大きなメリットは2つあります。

一つ目は、ポンプの容量を小さくできるという点です。

ポンプの容量が大きいと、場所も取りますし消費電力量も大きくなりますし、導入コストも高くなります。

高置水槽の場合、各蛇口で必要な水圧は位置エネルギーにより生み出すので、ポンプで高い圧力を生み出す必要がありません。

二つ目は、停電時にも、高置水槽に水が残っている限りは水を使えるという点です。

停電によりポンプが止まってしまっても蛇口で水圧を生み出しているのがポンプによる機械エネルギーではなく高置水槽の設置高さによる位置エネルギーなので、高置水槽内に水が残っている限りしばらく水を使うことはできます。

ポンプ直送

地下や地表に水槽を設置して、そこからポンプにより蛇口で必要な水圧を生み出しているのが、ポンプ直送方式の給水設備です。

水槽を使うという点では高置水槽と同じです。

高置水槽の場合、建物の屋上のさらに上の高い地点に水槽を設ける必要があり、建物から突き出して設置される高置水槽が外観上の課題となることは避けられません。

ポンプ直送であれば、蛇口の水圧をすべてポンプで請け負っているので、水槽を高所に設置する必要はありません。

直結直圧

直結直圧による給水は、蛇口までの道のりで水圧を下げる原因が少なく、水圧を下げる原因が蛇口によって大差ない場合に採用することができる、とてもシンプルな給水方法です。

直結直圧による給水の基になっている水圧は、配水管の水圧です。

配水管の水圧をそのままもらって、住宅内などへ給水し、蛇口やシャワーヘッドの水圧に使う方法です。

ポンプや水槽を追加する必要がないので、低コストではありますが、大きな建物や供給する範囲が広い建物の場合、直結直圧は使えません。

直結増圧

直結増圧は、直結直圧による給水の課題である、配水管の圧力が得られる圧力の上限という限界を突破する給水の方法です。

直結直圧方式では、配水管から蛇口までの間にポンプは置かれていませんでした。

直結増圧方式では、配水管から蛇口までの間にポンプが置かれます。

ポンプを使うので、集合住宅のように階数に幅がある建物においても、配水管の水圧を最大限利用した効率の良い給水が可能となります。