冷房負荷と暖房負荷

空調設備の運転モードは、冷房と暖房の二つに大きく分けることができます。

他にも送風や除湿(ドライ)などがありますが、送風はファンを動かすだけ、除湿(ドライ)は冷房の一種ですので、冷房と暖房の二つの運転モードに大別できます。

空調設備の負荷を考える場合も、冷房と暖房に大別して考えていきます。

冷房負荷と暖房負荷をフレームで考える

熱について考えるときは、熱に関するフレームで考えてみると、漏れなくダブりなく考えることにつながります。

熱に関するフレームは、熱の4つの移動経路(以下)です。

  • 放射

  • 対流

  • 伝導

  • 蒸発

以下では、4つの熱移動経路に基づいて冷房負荷と暖房負荷の中身を見ていきます。

放射による空調負荷

放射による熱移動は、日射による室温上昇が望まない方向である場合、すなわち冷房の負荷となります。

放射による暖房負荷としては、屋根面から宇宙空間への放射による熱移動「放射冷却」がありますが、最上階以外では放射冷却の影響は小さくなります。

もう少し、日射による冷房負荷を細かく見てみます。

日射は、まず窓にぶつかります。

その段階で日射の一部は反射して地面に向かい、残りは窓ガラスに入っていきます。

窓ガラスで反射した日射は室内に入ってこないので、冷房負荷にはなりません。

窓ガラスに入った日射の一部は窓ガラスを貫通する間に窓ガラスの温度を上昇させ、残りはガラスを通り抜けて室内に入ります。

窓ガラスを通り抜けた日射は床や壁にぶつかってその部分の温度を上昇させます。

すなわち、日射の持つ熱のうち、窓ガラスの温度上昇分+床や壁の温度上昇分が冷房負荷となります。

対流による空調負荷

対流による熱移動による空調負荷は、屋外からも入ってきますし、室内で発生する負荷もあります。

ここでも、フレームで考えてみます。

ココで使うフレームは、屋外-室内です。

屋外からの負荷は、外気の流入という形で入ってきます。

外気は、主に以下の2つのルートで室内に入ってきます。

  • 窓や戸の開閉や人の出入りによる外気の流入

  • 換気に伴う外気の流入

室内で発生する冷房負荷は内部発熱とまとめられたりもしますが、大きく以下の2つに大別できます。

  • 人体発熱

  • 機器発熱

人体の発熱量はおよそ100Wで、白熱電球と同じくらいの発熱量です。

効き発熱にはいろんな種類があります。オフィスであればPCやプリンター、厨房であればガスコンロ、病院の診察室であれば各種診断機器、プラスチック部品製作工場であれば樹脂成型機など、多種多様です。

ただ、これらの多くは室温を上げる方向に働くので、暖房の熱源の一つとも言えます

つまり、発熱機器は暖房負荷には含まれません

伝導による空調負荷

伝導による空調負荷は、冷房時も暖房時も部屋の外から天井や壁や床を貫通して室内に入ってくる空調負荷です。

まず、冷房負荷を考えてみます。

天井の場合、最上階の天井とその他の階の天井に分けて考えることができます。最上階の天井の場合、日射と外気によって加熱された屋根の熱は屋根裏の空気を温め、温められた屋根裏の空気は天井を温め、温められた天井が室内を温めます。最上階以外の階の天井の場合、上階が空調されている部屋であれば、冷房負荷は生じません。

壁の場合、外気に面する壁と隣室に面する壁とで分けて考えることができます。外気に面する壁は天井と同様に、日射と外気によって加熱された屋外側の壁の熱は壁内部を温め、温められた壁内部は室内側の壁を温め、温められた室内側の壁が室内を温めます。

隣室との間の壁の場合、隣室が空調されていない場合は隣室と自室の目標室温との間の温度差が冷房負荷になります

床の場合、最下階とそれ以外の階で分けて考えることができます。最下階の場合、床より下方の温度は地面の温度に近く、負荷を除去してくれる方向に働きます。

最下階以外の階の場合、下階が空調されていれば特に負荷は生じませんが、空調されていない場合は下階の室温と自室の目標室温との温度差が冷房負荷になります

暖房の場合も同様に、天井、壁、床に分けて考えることができます。

考え方は冷房の場合と同じです。

蒸発による空調負荷

蒸発による熱移動に関する空調負荷を考えてみます。

冷房の場合、湿度が高くなる基が負荷です

暖房の場合は、室内の湿度が低くなる原因が暖房負荷です

蒸発に関する冷房負荷、すなわち水蒸気たっぷりの空気は、大きく二つのルートで室内に入ってきます。

一つ目は、外気です。

空気は温度が高いほど蓄えられる水の量が多くなります。

夏の外気は温度が高いため絶対湿度(空気が含んでいる水の重さ)が高く、外気が室内に入ってくることは大きな冷房負荷になります。

二つ目は、内部での発生です。

人は常に皮膚をうっすら潤しており、その水が蒸発することにより空気を加湿します。

また、給湯室や電気ポットは局所的ではありますが、湯気を発生させ、空気を加湿します。

加湿された分の水が空調負荷となります。

蒸発に関する暖房負荷は、カラカラに乾いた空気を潤すための負荷です。

外気の流入がこの蒸発に関する暖房負荷に該当します。