給水量

無ければ困るのに、普段はほとんど気にしないものってたくさんありますよね。


例えば空気。

心臓をポンプにして、酸素を必要としている全身の細胞に、血管を通して、ひと時も休むことなく、赤血球が運んでいっています。

ただ、体が自動的に動いてくれているので、私たちは普段気にせずに過ごせています。

空気のことがちょっと気になるのは、特に筋肉の細胞が酸素をたくさん求めるようになる運動時くらいですね。


給水設備も、蛇口をひねれば水が出てくるのが当たり前の日常では、ほとんど気にすることはありません。しかし、断水になったときには、トイレに行けない、食器も洗えない、生活できないなど、たちどころに困ってしまいます。

ここでは、普段はほとんど気にしないけど、無いととても困ってしまう給水設備の容量を決めるプロセスの一部を紹介していきます。

給水量の決め方

給水量の決め方にはいくつかあります。

配管の径などを設計するために決めておく給水量ですが、大きく分けて5つの考え方があります。

一日最大予想給水量

一日最大予想給水量は、以下の表から決めていきます。

上の表から求める一日最大予想給水量は、受水槽や高架水槽のサイズの検討に使用していきます。

時間平均予想給水量

時間平均予想給水量は、一日最大予想給水量と、その表にある使用時間を用いて算出することができます。

時間平均予想給水量は、受水槽への引込管の口径を決めるのに用います。

時間最大予想給水量

時間最大予想給水量は、時間平均予想給水量に所定の係数をかけて求めていく水量です。

時間最大予想給水量は、高架水槽への揚水ポンプの選定に用いられます。

次に紹介するピーク時予想給水量も、高架水槽への揚水ポンプの選定に用いられます。

ピーク時予想給水量

ピーク時予想給水量は、時間最大予想給水量が1時間当たりだったのに対して1分あたりに換算した値です。

ピーク時予想給水量も、時間最大予想給水量と同じように、高架水槽への揚水ポンプの選定に用いられることが多いです。

瞬間最大予想給水量

瞬間最大予想給水量は、器具の給水負荷から算出します。

瞬間最大予想給水量は、給水ポンプの選定に用います。

給水量は配管の径を決める重要な因子の一つです。

配管の径は、電気設備の幹線の径と同じく、躯体にスリーブを設けて開ける穴の径にも直結してきます。

計算することは簡単で、配管の径として最適な径をそこから算出して、「この径でよろしく」ということは簡単です。ただ、配管径は、その建物を使う人にとっての最適組み合わせの一つの要素でしかありません。部分最適ではなく全体最適で考えていくことで、使う人にとっての価値を最大化できるのだと思っています。もしかしたら、配管としては若干ルートが長くなってしまったりするなど最善の案ではなくなってしまうかもしれませんが、その結果得られる価値が十分に高く採算がとれ、いわゆるペイするものであるなら積極的に次善の策を採用した方が良いのではないかと思っています。

何を最善とするのかは人それぞれかもしれません。

ただ、その空間を生み出す目的は、その空間を使う人にとっての価値を生み出すことだと思います。配管の径やルートなどの細かなことを決めていく際も、その建物やその空間の目的の達成に寄与することを目指した意思決定がなされていくことを期待しています。

一日のうちの水の使用量の変化

一日の中で、水の使用量は一定ではありません。

水を多く使う食事や入浴の時間帯にピークになり、就寝中や終業から始業までの間の時間には水はあまり使用されない場合が多いです。

また、建物の用途によっても一日の中での水の使用量は異なります。

例えば住宅であれば朝夕の食事の時間帯に多くの水を使いますが、学校や仕事で家を空ければその時間帯には水はあまり使用されません。

また、終業中は無人になることも多い事務所であっても、始業前には空調や給湯に水が使われたり、清掃業者の方が水を使われたりするため、終業中であっても水の使用量はゼロにはなりません。その一方で、事務所では料理や入浴が行われることは少なく、日中に水を使うのはトイレや昼の給湯など時間が特定されない活動が生じるため、「一時的に水の使用量が多くなるピークの時間帯」は発生しにくいです。また、飲食を扱う店舗などは、仕込みなどがあるため早朝から水を使います。さらに、食器洗いなどが多く発生するランチタイムから閉店までの間は、継続的に高い割合で水を使用します。