上水と中水

私が電気メーカの空調設備の設計部の新入社員だったころ、設計部の部長さんに「設計」という行為そのものについて教わったことがあります。その部長さんは、「設計」するということは決めていくことだと教えてくれました。商品の仕様を決め、使っていく材料や機器を決め、寸法を決めていくことが「設計」で、それは研究者にもできないことだし、製造現場の人にもできないことで、設計者のみに許された行為だとも言われていました。設計者は商品の仕様や材料や寸法やいろんな数値を具体的に決めていく「設計」という行為を通じて、その先にいる人々の笑顔や幸せを作っていくことができるんだと、その時の私は受け取りました。

給水設備の設計も、空調設備の設計と「設計」という大きな役割は変わらないと思います。

いかにして快適な温熱環境を提供するのかが空調設備に与えられた課題だとすれば、いかにして快適(安全で適度な水圧で静かであること)に水を提供するのかが給水設備に与えられた課題と考えても良いように思います。

以下では、給水設備の設計の手順を見ていきます。

上水・中水とは

建物で使われる水は、水源毎に上水、中水、井水に分けて扱われています。

上水は、上下水のうちの上水のことです。飲用に適した水質を確保している水のことで、建物の中では飲用や洗面、風呂やウォッシュレットなどに使われる水はすべて上水です。

中水は、雑用水や排水・雨水を再利用した水を刺します。中水は人の触れるとことには使うことができません。人が触れないと想定できるトイレ(ウォシュレットではないトイレ)の洗浄水には使えますが、人が触れるかもしれない噴水の水には使うことができないのです。

井水は、地下水をくみ上げた水のことです。井水の水質は検査しなければ分からないので、上水と同じ用途で利用できるかもしれませんし、中水としての利用にとどまるかもしれません。なお、地下水の過剰取水は地盤沈下の原因の一つとされているので、最大の取水量が決められている地域もあります。

給水量と上水・中水の割合を決める

上水と中水の割合を決めるというのは、建物全体の水の使用量のうち、どの程度の水量を配水管からの上水を使用し、どの程度の水量を雑用水などによる中水でまなかうのかを決めることです。

住宅の場合は、人が触れる水(飲料水や風呂水など)が多いので、上水の使用割合が高くなります。小中学校などではプールを除くとトイレの洗浄水による水の使用が多いので中水の使用割合が高くなります。

上水と中水の使用割合を決めることで、配水管からの給水量を決めることができます。

家庭で使われる水の使用用途ごとの割合

下のグラフは、住宅で使用されている水のうち、トイレや入浴などの用途ごとの一般的な割合を示しています。

トイレ、入浴、炊事、洗濯で使用する水の量は、建物全体の水の使用量の約90%を占めています。

トイレや炊事、入浴や洗濯は、いずれも固定費のように、ベース電力のように、毎日およそ一定の量を使用し続けることになる水なので、節水型のトイレが開発されたり、食器を洗う時の水の出しっぱなしがダメだと言われるのも納得です。

なお、上の図は、小数点以下を四捨五入しているため、全部足しても99%にしかなりません。