目の構造

目の構造はとても機能的です。

刺激の強さに応じた調整や、注視対象物までの距離に応じた調整それらの繊細な機能を守るための強固な機構などで構成されています。

目の構造を断面図で見てみると、複雑に構成されているものの機構は単純で、情報処理の負荷を下げるような合理的なシステムを持っていることが分かってきます。

目の構造

角膜:視覚の最前線

目の一番外側に存在するのが角膜であり、角膜は目の大事なガード役となっています。この透明な皮膜は黒目に相当する部分で、その役割は大きく二つあります。一つ目は、目の内部を守ること。二つ目は、光をなるべく多く内部に取り込むことです。角膜は、眼球全体を覆う中で最も外部に位置するため、一番負傷しやすい部分でもあります。微細な異物、例えば砂一粒が角膜に触れるだけでも、我々は強い痛みを感じるでしょう。これは、角膜が手や足の皮膚の感度を数百倍も上回る高感度を持っているからです。しかし、この高感度があるからこそ、目に異物が入った際にはすぐに反応し、さらなるダメージを防ぐことが可能となっています。また、角膜は新陳代謝が活発で、表面に付着した微細な異物や、角膜に生じた小さな傷も、時間とともに自然と修復されていきます。

強膜:目の防壁

次に紹介するのが、強膜です。強膜は一般的に「白目」に相当します。眼球の中は比較的柔らかく、光を感じ取るための感覚細胞は、光を受け取るためにある程度露出しています。このような状況下で眼球を守るためには、頑丈な「外壁」が必要です。その役割を果たしているのが強膜です。強膜は強固な組織であり、様々な外部要因から眼球の中を守り、その構造を保つ役割を担っています。例えば、外部からの衝撃があったとしても、強膜がしっかりとそれを吸収し、眼球の内部が直接ダメージを受けることを防ぎます。また、強膜は眼球の形状を保持し、眼球が均等な圧力を保つことで視覚を正常に保つ役割も果たしています。

虹彩(こうさい)と瞳孔(どうこう):光の量を調節する装置

虹彩と瞳孔について解説します。虹彩は目の色を決定する部位であり、その中央には瞳孔と呼ばれる穴が開いています。虹彩には筋肉がつながっており、これが収縮または弛緩することで瞳孔の大きさが変わります。これにより、目が受ける光の量を調節することができるのです。明るい場所では瞳孔が縮小し、暗い場所では瞳孔が拡大します。これにより、変化する光環境に対して最適な視力を維持することが可能です。また興味深い事実として、瞳孔の形状は生物種によって異なります。人間や鳥は丸い形をしていますが、馬やカバ、カンガルーや山羊などは横長の形、一方で猫やキツネ、ワニなどは縦に長い形をしています。肉食系が縦長で草食系は横長の瞳孔を持っているようです。虹彩は人間などの脊椎動物だけでなく、イカなどの軟体動物頭足類にもあるようです。これは、それぞれの生態系において最適な視覚を得るための進化の結果と考えられます。

水晶体:光の焦点を制御

水晶体は、その名の通り透明で、硬さと構造が年齢とともに変化するユニークな構造物です。この構造物は、目の中に位置し、我々の視界を調節する重要な役割を果たしています。

水晶体の一番の特徴は、その硬さと構造が年齢とともに変化することです。幼少期にはゼリーのような柔らかさを持ちますが、年を重ねるにつれて徐々に硬化していきます。これは、水晶体が新たな細胞を形成し続ける一方で、古い細胞が排出されないために起こります。結果的に水晶体の中心部は硬く、外周部は柔らかくなり、その硬さの差が視力調整に重要な役割を果たします。

この水晶体は、筋肉によって形状を変えることができます。筋肉が働くと水晶体は引っ張られ、その結果、水晶体は薄く伸びます。これにより、焦点の位置が変わり、遠くのものを見ることが可能になります。これは、「遠視」を可能にするメカニズムです。

しかし、老化とともに水晶体が硬くなると、筋肉による形状の変化が難しくなります。これが老眼の主な原因で、遠くのものは見えるものの近くのものが見えにくくなるという状態を引き起こします。

網膜、網膜の上にある錐状体・桿状体、網膜の一部の中心窩

網膜は眼球の内側全体に広がっています。網膜上には、光に反応する錐状体と桿状体という二種類の光受容器があります。これらのセンサーは、私たちが視覚情報を得るための基盤となっています。

錐状体は主に色彩豊かな昼間の視覚に関与しています。これらのセルは、適度な光の強さに反応し、色の情報を捉えます。錐状体は特に、視線の中心に近い中心窩と呼ばれる部分に集中しています。ここが私たちが色を認識し、物体の詳細を捉えるための視覚情報の中心となります。

一方、桿状体は、夜間や暗所での視覚を担当します。これらのセルは、非常に弱い光にも反応する能力がありますが、色の識別能力はありません。それゆえ、夜間や暗い場所では、物事は白黒やグレースケールで見えるのです。

ガラス体、視軸

ガラス体は眼球の大部分を占めています。その名前からガラスのような硬さや透明性を想像するかもしれませんが、実際は99%が水分からなるゲル状の物質です。このガラス体が、光の道筋を作り、視覚の安定化を助ける役割を果たします。

ガラス体が眼球を満たすことで、眼球はその形を保つことができます。また、ガラス体は光を網膜に向かって適切に屈折させる役割も果たします。この役割により、光は正確に網膜の上の特定の位置に焦点を結び、クリアな視覚を提供します。