陶器は日常品であり、同時に美術品、骨董品としての側面も持ちます。たまたま手に入れた物が、何らかの理由で急速に値上がりすることもあります。その値上がりを見越して買う買い方も、私は否定は致しません。
実例を挙げますと、私が台湾に来た頃、と或る作家さんの天目茶碗が約5万NT(当時17~8万円)で売られていました。私はとても欲しかったのですが、茶道の体験授業(学生も触ります)に20万弱の茶碗は使えません。もちろん、そんなものを趣味で買えるほど裕福でもありません。当然見送りました。その次の年、その作家さんは大きい賞を獲得しました。同じ茶碗が15万NT(50万円強)になっていました。そして、次に訪れた時には、他の方が買われたようで、店から無くなっていました。
もう一例挙げましょう。
この写真は、私が使っている御飯茶碗なのですが小橋川清正さんの茶碗(壺屋焼 赤絵魚文飯茶碗)です。私がまだ院生だった時代、沖縄に旅行した時に、2500円ほどで買ったものです。「この赤、カッケー!」「魚、超シビィー!」で、適当に買っただけでした。
しかし、この清正さんは沖縄県の優秀技能者として知事より表彰を受けたり、沖縄サミット参加国の晩餐会用位置皿として採用されたりと、大変な名工でした。買った当時はそんなことは知りませんでした。
私が買った茶碗が良品ではない可能性も高いのでなんともいえませんが、2014年1月現在、同形の茶碗が7000円前後で取引されています。しかも、現在、清正さん本人はすでに隠居され、新作は出てきません。さらに値が上がる可能性は高いでしょう。(なお、御子息の明史さんが技を受け継いでいます。ウエブ上の写真でうかがう感じでは、全く同じ図案の茶碗なのですが、初代さんが荒々しさ、無骨さを感じるのに対し、明史さんの茶碗は非常に丁寧に作りこんでいる、緻密な印象を受けます。沖縄に行く機会があれば、明史さんの茶碗も是非手に入れたいと思っています。)
なお、私は投機目的で買ったわけではないので、どんなに値が上がっても絶対に売らず、御飯茶碗として使い続けたいと思います。