二、研究の目的と手段
いきなり夢を壊してしまうような話から始めてしまったわけですが、実際問題、「うさんくさくて軽そうな研究題材」であるゴシック、ロリータ、ゴシック&ロリータは、研究対象としても非常に書きにくいのです。
しかし、自分の好きなことで書くと決めたからには、その困難に立ち向かう覚悟は持ってください。とりあえず、まずは否定的に見てくる指導教授を説得するために、「うさんくさくて軽そうな研究題材」、しかも「書きにくい題材」であるにもかかわらず、
「堅実な調査に基づいた報告になりそうだ。」
「何とかなりそうだ。」
という、印象を与える研究計画を作成しましょう。
それには、まずその研究が何を明らかにするのか、そしてその手段が明確にされていなければなりません。
ゴシック、ロリータ、ゴシック&ロリータの例でいうならば、
「ゴシック、ロリータ、ゴシック&ロリータの研究」
では何を研究するのかさっぱり分かりません。分からなくはないのですが、具体性に乏しいわけです。少し絞って、
「ゴシックの研究」
でも、やはり何をするのか分からない。
ファッションなのか、ミュージックなのか、文学なのか、建築、美術…。「ゴシック」だけでは全くもって意味不明。例えばファッションを中心にするなら、
「ゴシックファッションの研究」
でしょうか。しかし、これでもまだ分からない。
ゴシックファッションの何を研究するのでしょうか。
時代による変化でしょうか。
ヴィジュアル系ファッションとの関係性でしょうか。
フェティッシュ系ファッションとの関連性でしょうか。
ゴシックミュージックとの影響関係でしょうか。
それとも
それらすべてを包括した総合的な研究でしょうか。
ちなみに、「時代による変化」「ヴィジュアル系ファッションとの関係性」「フェティッシュ系ファッションとの関連性」「ゴシックミュージックとの影響関係」、いずれも、それぞれを綿密に調査し記述するだけで、それぞれが卒業論文クラスの原稿用紙50枚から100枚は簡単に突破してしまうはずです。
総合的な研究となると、修士論文クラス以上、本当にきっちり調べ上げるとするならば、博士論文クラスか、専門書一冊が出来上がるほどの研究テーマです。「ゴシック、ロリータ、ゴシック&ロリータの総合的研究」とまで大風呂敷を広げるとなると、一体どのクラスになるのか。考えるだけでも恐ろしいです。
実際には、絞りに絞って
「ゴシックファッションの研究/1990年代と2000年代との比較を通して」
といった感じの題名になるはずです。
それなりの題名が出来上がるということは、目的もはっきりしていくわけで、このテーマの場合、ゴシック文学やゴシックミュージックはいったん切り捨てて調査をしていくことも可能になります。(その時代に流行った文学・映画・音楽から完全に独立していることは、現実的にはあり得ないのですが、単純に雑誌の写真だけを検証して、デザイン性の比較だけに特化することも可能になります。)
つまり、目的がはっきりしてくれば、その目的を達成するための手段も、自ずから見えてくるのです。
上記の例でいえば、
ゴシックファッションに関して1990年代と2000年代との比較をするのだから、雑誌の読者スナップでも見比べて、デザインの変化でもピックアップしていくのだろうか。そして、その変化がどうして生じたのか、その理由を考察でもするのかな。
まえがきに原稿用紙5枚。ゴシックファッションの簡単な説明に10~15枚。デザインの変化について15~20枚。変化の理由の考察に15~20枚。まとめに5枚。多少文字が埋まらなくても、写真や表などで埋めれば、50枚はまず問題なく超えそうだ。
題名を見るだけで、このくらいの想像は出来てきます。
「これこれこういう方法で調査して、こういう事を明らかにしたいと思っています。」
これをきちんと説明できれば、そしてその説明に妥当性が有れば、あなたの指導教授も苦虫をかみつぶしながらも首を縦に振ってくれるはずです。