(これは教官側の気持ちを、ライトノベル風に推測で書いたものです)
俺は自動車学校の教官。
少し前にとある大企業を退職し、今は暇つぶしがてら近所の自動車学校で教えている。
最近、日本人が入校してきた。
彼はもともと運転が出来るというか、長期の海外暮らしで日本の免許が失効していて、
再取得のために受けに来たパターンだ。
だから、あまり教えることが無い。
教えるというより、彼の勘を取り戻すためのアドバイスが主な仕事だ。
そして彼も一日も休まずやってくる。
いかにも勤勉な日本人という感じだが、その勤勉さゆえに勘を取り戻すのも速い。
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だいたい運転免許の取得なんてのは、
最後の試験に通る技量さえあれば、それでいい訳で・・・
だから、ある程度上手くなるとあまり来なくなり、
最終の試験日が近くなると、また少し練習しに来る。
そういうものだし、台湾人は少なくともそうだ。
しかし、彼は一日も休まずやってくる。なぜだろう。
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教官としての判断では、教えるほどの問題や修正すべき点はもはやない。
が、彼には彼なりの何かがあるのかもしれない。
そう思い「分からない部分があるなら、教えるよ」とこちらが訊ねる。
しかし何度聞いても、彼は「特には・・・ないかな」としか答えない。
表情が無い上、会話をしても反応が乏しく生返事が多いので、
何を考えているのか分かりづらい。
そして、また、ひたすらコースをぐるぐる回り続ける。
勤勉というよりは、何か別の・・・別の何かを感じる・・・。