○雑誌・一般書 借りる
とはいえ、先行研究は、研究テーマ・研究手法・専門の研究領域などの統一性に欠けているため、頻繁に引用するのは一つか二つとなる可能性が高くなります。残りは参考文献一覧や注でその存在を紹介するだけになり、実際に使用する資料としては、雑誌や一般書がかなりの比率をしめることになります。
一般書に関して、図書館にて入手可能なものは借りるとしても、無い物は購入していかなければなりません。残念ながら、当分野の大半の書物は「うさんくさくて軽そうな本」と認識されているため、収蔵されていません。
また、雑誌はなおさら、図書館にそんな類のものを収蔵していることは少なく、そもそも借りることも出来ず、かつ欠号の可能性も考えると、基本的にすべて自費で購入していくしかありません。しかも残念ながら、献本制度によってすべての書籍が収蔵されているはずの国会図書館にも、すべての雑誌や図書が収蔵されているわけではないのです。
実は、無い無いと言いながらも、ゴシック文学とゴシック美術関係については、英米文学、美学との関係もあって、たいていの場合、多数の資料が揃えられています。文献がそろっているからこそ、論文も量産され研究が進み、研究されているからこそ、文献が購入されていくという、研究環境上にとって良い循環関係が生じています。
ゴシック文学が、いわゆるゴシックカルチャーの中で例外的に研究が進んでいるのは、図書館の収蔵文献数とも無関係ではありません。また、研究対象がそもそも文献(文学作品)・歴史的建造物・美術品であるというもの大いに関係しています※。
※筆者は、ゴシック文学、ゴシック美術と、現代のゴシックカルチャーとの関係について以下の認識の上に立っています。
ゴシック文学や、ゴシック建築は、ゴスロリと代表的に言われるジャンルに対してインスピレーションの源泉ではあるものの直接的な継承関係があるわけではありません。無関係と言うほど関係性がないわけでもありませんが、大きくは、
「イメージの源泉としての存在」
「それ故に借用された名称の一致」
「名称の一致に引きずられたゴスロリ・文学・美術・建築ファン相互の流入」
が関係性のすべてであると考えています。
そもそも、ゴシック美術・建築とは中世ヨーロッパの、とある時代における美術・建築であり、ゴシック文学とは、単純に言うならば、そのゴシック様式の古城や教会などの建築物を舞台とする、懐古趣味的な設定のもとに編まれた小説群です。したがって、美術・建築と、文学とに直接の関係はありません。まさにイメージの借用です。同様に、ファッションやミュージックが、文学や建築・美術と直接の継承関係があるわけでもなく、これもまたイメージの借用です。
この認識を前提とした上で話を進めるのならば、ここでゴシック文学や美術・建築に関する研究に対して、言及する必要は本来無いのですが、筆者とは認識を異にする意見もあり、一般的に区別のついていない状況でもあると考えているため、書き加えています。
○雑誌・一般書 買う
さて、ゴシック、ロリータ、ゴシック&ロリータ研究において、何に特化するのかによって若干変わっていきますが、具体的に雑誌名を挙げていくならば、現在も刊行が続いている雑誌や長く続いていた雜誌、
『ゴシック&ロリータバイブル』
『ゴシック・ロリータ&パンクブランドbook』
『ゴスロリ』新・旧
『KERAマニアックス』
このあたりは、特別号なども含めて全号揃えておきたいものです。特化という点で疑問の残る普通の『KERA』は迷いどころです。
その他、時代の変遷などを追うのであれば、休刊となった雑誌や、流行の産物である単発誌や雑誌掲載の単発記事なども必要となってきます。付け加えると、ヴィジュアル系との関係を調査するならば、ヴィジュアル系の雑誌、イベント関連のことも視野に入れるのであれば、イベント系の記事が載っている雑誌も、集めておいて損になることはありません。
刊行継続中の雑誌のバックナンバーにせよ、廃刊雑誌にせよ、マイナージャンルであるためそもそも発行部数が少なく、入手が困難である場合も多いので、早め早めに行動し、古本屋で探すなり、ネットオークションを活用するなどして、取り寄せておかないと自分が困ることになります。(土壇場になって肝心な資料を見ていなかったことに気が付く、というのは往々にしてあることです。)
結局、一般書と雑誌に関しては、基本的にすべて私費でそろえてしまう位の覚悟はしておいた方がいいでしょう。どこまで買うのか、どこまでこだわるか、によるわけですが、あらかじめ文献費用として数万から数十万の出費は研究予算に組んでおくことを勧めます。
他の研究テーマと異なり図書館の活用がしにくい点でも、ゴシック、ロリータ、ゴシック&ロリータ研究というのは、不利なテーマです。
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