よくある質問 Q&A
スピーキングテストの作成
Q:ペアのQ&Aは、Qを出す方の内容や表現にAの回答が左右されるのではないでしょうか。
A:それがペアのQ&Aの弱点の一つになります。その点が気になるようでしたら、
(a) 発表のみでQ&Aの形をとらない
(b) 発表とQ&Aを行うが、発表のみを採点対象とする
(c) 発表とQ&Aを行うが、発表とQのみを採点対象とし、Aは採点しない などの方法もあります。また、
(d) 本事例(2. 話すこと(発表・スピーチ)+ 話すこと(やり取り・ペアでの質疑応答)実例1)にあるように、Qがわかりにくい場合に、Aの採点を甘めに調整する方法もあります。
一方で、ペアのQ&Aには、発表を聞いて自分で質問を考える、それに答えるという、スピーキングの重要な力を見ることができるため、利点もあります。どちらの点を重視するかを総合的に判断し、この形式を使うか使わないかの判断をすることになります。
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小泉利恵(編)(2022).『実例でわかるスピーキングテスト作成ガイド』 大修館書店
(2.3 STの作成 Q7 スピーキングテストのタスク形式にはどのようなものがあるのか?)
スピーキングテストの実施
Q:1クラス40名の生徒が学年で5クラスあり、話すこと(やり取り)と話すこと(発表)をいかに効率よく、公平性を保って評価までできるのでしょうか?
A:年間計画を立て、指導と関連づけながらスピーキングテストをいつ行うかを計画します。テストは、妥当性を重視しながら、信頼性・実現可能性も考慮してバランスよくできるような計画を立てます。その際に、実現可能性として、
(a) 1クラス40名の時に、授業時間が何分使えるのか、
(b) 採点を授業外で行えるか、
(c) 行える時には何分確保できるか を考えます。
その問いの答えによって、「スピーキングテストの実施」で書いた4パターンのどれを選ぶか決めます。そして、そのパターンを使うときには、どのテスト形式や採点方法が使えるかを具体的に決めていきます。また、指導目標や授業との関係で、発表・やり取りやどんな力を測りたいかを決めておきます。
例えば、
(a) 50分授業1回のみ使える
(b) 採点は授業内で行う
とすると、説明の時間を除くとテスト実施・採点には40分のみある形で、1人1分(話す時間は長くて40秒)が目安になります。これが可能な形式としては、例えば、発表だとスピーチを行う形、やり取りだと、例としてグループ型ディスカッションがあり、松尾美幸先生の実践では50分授業で実施・採点完了の形がとれています。
1年に何回行うかは、1学期に1回、3学期制ならば3回という形も、定期テストの前後にスピーキングテストも入れ、年5回実施の場合もあります。
小泉 (2022) では、高校2校の1年間の実施例や、妥当性・信頼性を高くするための手立てが載っています。
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・小泉利恵(編)(2022).『実例でわかるスピーキングテスト作成ガイド』 大修館書店
(2.4 学習のための評価に向けた手順、3.1 & 3.2 宮城県石巻高校・栃木県立宇都宮南高校
・松尾美幸 (2019). 「事例報告 テストが到達目標と指導に与える影響 セミナーレポート」 British Council.
https://www.britishcouncil.jp/programmes/english-education/japan/report/assessment2018-seminar/case1
Q:教員との会話やロールプレイで、何か特に注意したい点はありますか?
A:例えば考えられることを以下に挙げます。これは生徒全体の英語力やクラスの雰囲気によって変わる部分もあります。
生徒のパフォーマンスに影響を与えすぎないよう、中立な立場・態度で行いたい場合:教員が話し過ぎないように注意する。生徒の沈黙に対してはこう対処するなど、ルールを作って、それを最初から最後まで基づいて行う。
生徒が今何が一人でできて、手助けがあればどこまでできて、手助けをしてもどこはできないかを見極めたい場合:最初に手助け無しに話す時間を設け、求める程度までできなかった時に少しずつ援助を加えていく。援助の方法は前もってこの順番と決めておいてもよいし、その場で判断してもよい。(ダイナミック・アセスメントの考え方。一般的なスピーキングテストの方法とは異なるが、これも、学習のための評価の一つの方法として確立している)
生徒からの回答がない場合の例:教員:Tell me about your favorite pastime. ー>答えを待つー>繰り返す(以後も同じ)ー>What do you do after school? ー>What do you do on Sunday? ー>I play the piano on Sunday. Do you play the piano? ー>(続く)
生徒が委縮しないような環境を作りたい場合:最初にWarm-up的な簡単な問いを入れる。最後にも易しめの問いで、全員が最後に答えられて終える形にする。
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小泉利恵(編)(2022).『実例でわかるスピーキングテスト作成ガイド』 大修館書店
(2.5 コロナ禍における学習評価 2.5.2 ダイナミックアセスメントの考え方)
Q:実際のテスト作成に当たって、動画撮影や録音など、技術的な部分の解決法を知りたいときにどうしたらよいですか?
A:注意点はいろいろありますが、何をどのように丁寧に行うかは、状況や好みもあります。一度小規模で事前に試してみると、ここはこだわりたい、ここはある程度の質でもなんとか採点はできるなどが見えてきます。その後、こだわりたい部分について調べていくとよいと思います。
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小泉利恵(編)(2022).『実例でわかるスピーキングテスト作成ガイド』 大修館書店
(column 2 スピーキングテストの録音・録画や編集を行うときの技術的な注意点は?)
スピーキングテストの採点
Q:国研の参考資料が出る前に使っていたルーブリックを若干修正して継続使用したいのですが、方法はあるでしょうか。例えば自分が使っていたものは、4~5段階評価で、観点ももう少し細かく分かれています。
A: 可能です。以下に、一つの方法を書きます。例えば「文法」「語彙」「内容」「アイコンタクト」のように4観点4段階(1~4)で評価していたとします。
(1) 4観点が、指導目標や「観点別学習状況の3観点」から大きくずれがないことことを確認します。ずれがある場合は、そのずれがないように修正を試みます。
(2) ずれがない場合には、以下のように当てはめを考えます。
例:
知識・技能:表現の適切さー>言語面の「文法」「語彙」
思考・判断・表現:内容の適切さー>「内容」
主体的に学習に取り組む態度ー>「アイコンタクト」
(3) 5段階の記述と国研資料の3段階の対応を考えます。例は以下です。これを使えば国研資料と紐づけられます。
a: 十分満足できるー>「文法」「語彙」のそれぞれ3以上、「内容」の4、「アイコンタクト」の3
b: おおむね満足できるー>「文法」「語彙」のそれぞれ2、「内容」の3、「アイコンタクト」の2
c: 努力を要するー>「文法」「語彙」の1、「内容」の2以下、「アイコンタクト」の1
なお、国研の1観点に複数の観点が入る場合の別な方法として「文法」「語彙」の得点を足し合わせて判断する方法もあります。
上に基づいた例:
b: おおむね満足できるー>「文法」「語彙」のそれぞれ2とすると、足し合わせて4ならばb
a: 十分満足できるー>「文法」「語彙」のそれぞれ3以上とすると、足し合わせて6以上ならばa
まとめると
a: 十分満足できるー>「文法」「語彙」合計の6~8(この場合は、文法が4、語彙が2でもaになることに注意。教員間で同意が取れるか要確認)
b: おおむね満足できるー>「文法」「語彙」合計の4~5(この場合は、文法が3、語彙が1でもbになる)
c: 努力を要するー>「文法」「語彙」合計の1~3
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小泉利恵(編)(2022).『実例でわかるスピーキングテスト作成ガイド』 大修館書店
第3章に、既存の基準と国研ルーブリックの紐づけの例が載っています。
Q:全ての評価が3段階というのは少し無理があるのではないですか。もう少し細かく分けたほうが評価として適切であるように感じます。
A:「スピーキングテストの実例と解説」に書きましたように、本事例と解説は、国立教育政策研究所(国研)の「学習評価の参考資料」に基づいています。こちらの評価方法についても議論があると思います。
Q:採点基準は、学校や教員によって違っていてよいのでしょうか。
A:はい、学習段階や学習目標、授業で焦点をあてた部分の違いなどによって違ってきます。以下から、研修で説明する時に使うスライドがダウンロードできます。
https://drive.google.com/file/d/1cPnW3xdHJbxbGt2csf_l64HZjz0ICr5J/view?usp=drive_link
Feedbackについて
Q:feedbackの「明確で建設的、かつ一貫性のあるもの」は、どんなものですか。具体例はありますか。
A: 明確というのは、生徒が読んでわかりやすいこと、建設的というのは、将来に向けたポジティブな言葉を入れること、一貫性というのは、あるテストへのフィードバックの時に、最初から最後まで一貫していることと、前回と今回、また次回の内容が一貫していることです。具体例は、以下に載っています。
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小泉利恵(編)(2022).『実例でわかるスピーキングテスト作成ガイド』 大修館書店
(2.3 スピーキングテスト後の活動、3.2 栃木県立宇都宮南高校での年間を通したスピーキングテスト)
Q:「フィードバックの注意点」に留意した実際の紙ベースでのフィードバックの例をサンプルはありますか。口頭でフィードバックしている場面の映像などもあるとありがたいです。「スコアレポート」について、具体例が見たいです。また、その読み方をどのように指導するのかなどについて、説明していただけますか?
A:以下に具体例が載っています。ご参照ください。
(2.3 スピーキングテスト後の活動、3.2 栃木県立宇都宮南高校での年間を通したスピーキングテスト)
Q:「フィードバックの注意点」には、「現時点のスピーキング力ばかりでなく,今後どうやって伸ばしたらよいかを含める」とあります。フィードバック時に教師が生徒にお勧めできるような、生徒が自主学習的に利用できるスピーキング力アップの一助となるサイトはありますか?
A:無料 英語 スピーキング力 向上 などのキーワードを入れてインターネットサーチをすると、役立つアプリやウェブサイトの情報が出てきます。日々更新されていくので、ご自身の授業や指導方針にあうものを探していただければと思います。
スピーキングテストの実例と解説
Q:たくさんのビデオがあって、どれから見たらよいのか迷ってしまいます。
A:「スピーキングテストの実例と解説」のトップページ(以下)を見て、どんなビデオがあるかを確認してみてください。
タスクは大きく以下3つに分かれています。
(a) やり取り・教員とのロールプレイ
(b) やり取り・ペアでの質疑応答
(c) やり取り・ペアでのディスカッション または やり取り・ペアでのロールプレイ
教員とのロールプレイでは、CEFR-Jに基づくレベルも付いています。自分の指導の状況に応じたものを探していただければと思います。
今後別なタスクのビデオを追加なども検討しています。
Q:(X) 生徒の伸びや、(Y) 同じ生徒のタスクによるスピーキングの違いが感じられるビデオはありませんか。
A:(Y) については、「スピーキングテストの実例と解説」のビデオの中で、やり取り・教員とのロールプレイのタスクでは同じ方が出ているものがありますので探してみてください。タスクの内容や難易度によってスピーキングが微妙に変わることが感じられると思います。
(X) については、今のビデオではないので、今後検討したいと思います。これに関しておすすめなビデオが以下です。同じ生徒の小学校5年生と6年生のスピーキングのビデオが入っており、成長が感じられます。ご興味がおありの方は、田村先生に問い合わせてみてください。
田村岳充 (2022). 『これで分かる,できる! 小学校外国語パフォーマンステスト―話すこと【やり取り】の評価―』 [ビデオ; DVD]. https://researcher.utsunomiya-u.ac.jp/html/100003663_ja.html
Q:ビデオの下にScriptが隠れていて、見た後に確認できるのでありがたいです。それと同じように、評価が最初隠れていて、採点の後に見られる形に変えられませんか。
A:こちらはそうできるといいのでしょうが、時間が取れていません。現状では、評価(採点結果)を隠した状態で、ビデオを見て採点する形でお願いできればと思います。
Q:ビデオはYouTubeに載っているようですが、本学の職員室や教室では見られません。他の方法でアクセスできませんか?
A:ご連絡いただければ、ファイルをお渡しすることもできます。トップページに連絡先が載っています。
Q:各ビデオの最初に30秒ほどの待ち時間があるのは無駄なように思います。実例ごとに場面設定の説明が長いところを短くできませんか?
A:YouTubeにタイムスタンプがついていますので、発話から見始めることも可能です。事前にタスク設定を確認せずに見る方のために、画面で内容が確認できる構成にしています。
Q:録音状況や生徒の声のボリュームなどにより、サンプルとしては聞きとりづらい動画もあるのですが、改善できませんか。
A:実際のテストの録画を使っているため、そのような場合はあると思います。実際にテストを採点する際にはこのような状況で行うので、それの実体験と思っていただけるとよいかもしれません。ボイスレコーダーで音声があるものもあり、その音を重ねることもできましたが、その場合、耳で聞こえない音も拾ってしまい、実際のテストの採点の感覚と大きく異なってしまいます。
Q:タスクの設定部分にある 「先生」は、その他の部分の表記とそろえて「教員」に統一するよよいのでは?
A:教員が読むものについては「教員」、生徒が目にするものは「先生」と、一般的な書き方で統一しています。
Q:発表・ペアQ&AはCEFR-Jは明示できないのでしょうか?
A:このタスクは、CEFR-Jに基づいて作っていないため、現時点では表示していません。
Q:教員とロール・プレイ(道案内)の実例の図について、「ある場所(A)からある場所(B)へ道案内をする際、いきなりTurn leftやTurn rightと言っていいのか迷う」と生徒から言われたことがあります。その建物(A)の目の前の道に出るときにいきなりTurn left等の表現で言い始めていいのか、この点で迷わないようにするために、以下の工夫が考えられると思いますが、どうですか?
① 道に名前をつけておく。
② 東西南北を示しておく。
こうすると、Go along ○○street to the northのような表現も可能となり、受験者がやりやすくなると思いました。
A:重要なご指摘ありがとうございます。その方がタスクを行いやすくなると思います。将来行う際には、その形で録画し、本ポータルにも入れてみたいと思います。
Q:評価をする際、単純に「文の数」で判断をする方法が例に載っています。これはある意味分かりやすいのですが、(a) とても短い文を2つと,(b) and ... などでつなぎながら1つの文でも豊かな情報を表現するものがあった場合に、数的には (a) が高いですが、(b) の方が質として高いように思います。そのあたりをどのように対処したらよいでしょうか。
A:こちらについては、指導や採点の状況によります。シンプルに伝えるとすると以下でどうでしょうか。たたき台で考えていただければと思います。文というと紛らわしければ、単位・ユニットとして数えてもよいと思います。
文の定義の例1:主語+動詞 があったら1文と考える
例:I like English (1文). I like English / because I can see many new worlds (2文). I like English / and I want to study abroad (2文). I like books that my father gave me last year (2文). This is what I mentioned before (2文). Books my father gave me were excellent (2文). I like books given by my father last year (2文:books that were given のthat were は省略されていると考え、それも含めて数える). I like English and want to study abroad (2文:I want to ... のIが省略されていると考え、それも含めて数える). I think it is nice (2文).
文の定義の例2:例1に加え、動詞があったら1文と考える
例:I like / studying English (2文). I like English and want to study abroad (3文).
文の定義の例3:例2に加え、意味の固まりがあったら1文と考える
例:Oh, thank you (1文). Oh, no (1文). Yes (1文). My favorite subject is math (1文). My favorite subject math is the most difficult (2文). My favorite subject math is considered to be most difficult (3文).
採点者でも文法処理が得意な方とそうでない方がおられるので、定義1あたりが運用上の原則として使いやすいのではと思います。原則としておき、これは例外的に複雑な文を言っているとなったら、採点者が考慮してもよいとすると運用しやすいと思います。
なお、例3は以下のスピーキング研究でよく使われるASユニットと呼ばれる単位の定義を一部使った提案です。
📚 FURTHER READING
Foster, P., Tonkyn, A., & Wigglesworth, G. (2000). Measuring spoken language: A unit for all reasons. Applied Linguistics, 21(3), 354–375. https://doi.org/10.1093/applin/21.3.354
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