33年ネット諸兄姉どの(2025.01.19)
20日はトランプの就任式だが、トランプの政策どうなるのだろう。
「エリオット・コーエン」の予言と「トランプの生涯を描いた映画」の案内を転載する。
予言が実現しないことを切に祈りたい。
2025.01.13(月)朝日新聞朝刊 最も恐るべき事態の出現をおそれる。
昨年 12月半ば、ワシントン郊外の社交クラブ。大きなクリスマスツリーが飾られ、年の瀬らしい華やかさに満ちていた。民主、共和両党の政治家や高官、各国の外交官らも会員に名を連ねるこのクラブはかって、米外交や国際情勢の行方を左右するような議論が交わされる場でもあったという。しかし、ワシントン政治を担ってきた既得権回を敵視するトランプ氏は、国際主義のエリ—卜たちによるこうした場での議論も忌み嫌う。長年の会員である共和党員の元政府高官は「トランプ氏が再登板すれば、米国は国際問題への関与から本格的に身をひく。世界にどれほどの悪影響をもたらすか。いくら心配しても足りない」と心情を吐露した。今年の国際情勢に大きな影響を及ぼす動きとして、主要メディアや研究機関が挙げるのは、まさに「トランプ再来」である。共和党のブッシュ大統領 (子 )のもとで国家安全保障担当補佐官や国務長官を歴任したコンドリーザ・ライス氏は昨年、「孤立主義・の危険性」と題する論考を米外交専門誌フォーリン・アフェアーズ ( 9 / 10月号 )に発表した。米中が激しく争う現在の世界情勢をかって、の米国と旧ソ連による「冷戦」というよりも 19世紀の帝国主義時代に近く、さらに危険な状況であると分析。米国が内向きになっていることこそが「最も顕著で憂慮すべき当時との類似点だ」と警鐘を鳴らした。
昨年 12月には、共和党上院トップを退任したばかりのミッチ・マコネル前上院院内総務 ( 82 )が、「米国の撤退の代償」と題した論考を同誌で発表。「米国は孤立主義を拒否すべきだ」 と訴えた。 いま欧州や中東では戦火がやまず、東アジアでも緊張が高まる。米国が自国の殻に閉じこもれば、世界はどこへ向かうだろう。「トランプ氏が何をするのか、我々も、彼自身もわかっていないという状況ではないか」ロシアによるウクライナ侵攻を予言し、侵攻開始後は米国の支援を訴え続けている米戦略国際問題研究所 ( C S I S )の国際政治学者エリオット・コーエン氏 =写真(略) =は、そう見通しを語った。はっきりしているのは、トランプ氏も共和党も、バイデン政権が進めてきたウクライナへの兵器供与を従来のようには実施しないだろうということだという。「トランプ氏は米国からの供与はしない一方で、欧州の国に対し、米国製の兵器を買ってウクライナに提供するように働きかけるのではないか」。日本に対しても、ハイテク兵器などを米国から購入し、ウクライナに提供するよう要請してくる可能性があるとみる。
では、最大の競争相手である中国との関係はどうなるか。
「中国を『脅威』とする考え方は超党派で深く浸透しており、米国の軍事的な資源も中国への対抗上必要な部分に向かうことに変化はない」。ただ、コーエン氏は、習近平匡家主席がトランブ氏を本当に恐れてはいないとみており、今なら「台湾統一」を果たせると考えかねない、とも付け加えた。シエークスピアの研究者でもあるコーエン氏は、年老いて子に裏切られ、身を滅ぼす「リア王」に現在のトランプ氏を重ねる。輩カや判断力が、 1期目 ( 2 0 1 7〜 21年 )に比べて衰えたことも、混乱を招く要因になりえるというのだ。「リア王はある時点で責任を放棄し、栄光のみを求めた。さらに周囲の人々の心情を把握する能力も失う。トランプ氏が同じ状況に陥る可能性はある」 そんな中で日本はどうしたらよいのか。
「米国との関係を見直し、一種の独立した 大国としてあし始めなければならない」。米国が唯一の超大国として国際秩序を担つた期間、日本やドイツなどは米国の庇護のもと、予見可能な世界で非常に心地よく過ごし、経済成長も遂げた。しかし、現実は様変わりし、米国のリーダーシップはもう戻って来ない。
「世界情勢について、予見可能性という感覚を我々は当面、持ち得なくなるのではないか」。それがコーエン氏の予言だった。第2次世界大戦の終結から今年で 80年。米国が国際秩序の維持を先導する時代は急速に終わりに近づく
ついでであるが、トランプの生涯を描いた映画「アプレンティスApprentice(見習い)」が公開される。この人間を理解するのに少しでも役に立てばと転載する。
朝日新聞2025.01.17夕刊
アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方 沈殿するグロテスクな生態
原題「アプレンティス」とは〃見習い〃の意。ドナルド・トランプがかって司会を務めたリアリティー番組の題名でもある。世界は今、大統領に返り咲くトランブの米国第一主義に恐々としている。そんな折に日本公開されるのは、彼の素地を映すような若かりし頃の逸話だ。
1 9 7 0 年代のニューヨ—ク。世間知らずのトランプ (セバスチャン・スタン )は、ある高級クラブの人混みの中で冷酷な辣腕弁護士コーン (ジェレミ—・ストロング )と出会う。父親が営む不動産会社が黒人差別や税金問題で訴えられていたトランプをなぜか気に入ったコーンは、指南役として彼を導いていく。一 勝利の法則は「攻撃、攻撃、攻撃」「非を絶対に認めるな」「勝利を主張し続けろ」の 3点。服装、振る舞い、父親からの自立に始まったコーンの教育は、政府関係者のセックス・スキヤンダルをネタにした脅迫に及び、優秀な弟子は凄まじい勢いでふてぶてしい男へと成長していく。政界を巻き込んで師を潰すほどに成り上がる様子は陰湿なジヨークのよう。映画はその過程を安定した構成、一貫したリズム、闊達な語り口、興味を煽る逸話で現実の卜ランプへとつなげていく。監督は「ボーダー二つの世界」などで評価されたアリ・アッバシ。赤裸々で刺激的な脚本は政治ジャーナリストでもあるガブリエル・シャ—マン。綿密なリサーチを重ねたというトランプのグロテスクな生態が沈殿していく。時としてトランプが "救世主“に映ってしまうらしいアメリカ社会。就任の前に始まっている「やりたい放題」に心が塞ぐ。
(稲垣都々世・映両評論家 )◊東京、大阪などで 17日公開
イチハタ