「世界の友は今2021」 第5回
南アフリカSGI ブレイスウェイト・カボシャ理事長2021年5月12日聖教新聞
苦境の中で深まる助け合いの絆
新型コロナの変異ウイルスが猛威を振るっている。WHO(世界保健機関)が警鐘を鳴らす変異株が発見された南アフリカ共和国でも、創価の同志は智慧を湧かせ、励ましの輪を広げている。「世界の友は今2021」の第5回は、同国SGI(創価学会インタナショナル)のブレイスウェイト・カボシャ理事長に聞いた。
――現在の社会状況を教えてください。
南アフリカでは本年1月に第2波の拡大が頂点に達して以降、新たな感染者数は減少してきました。予断を許さない状況は続いていますが、現時点で爆発的な拡大は起きていません。今月17日からはワクチン接種も本格的に始まる予定です。
ですが、これまでに160万人が感染し、5万人以上が犠牲になってしまいました(10日時点)。感染防止政策によって愛する人の最期を見届けられなかった方や、葬儀に人数制限がかかったことで故人を悼む場さえ失った方もいます。また、昨年からのロックダウン(都市封鎖)の影響で多くの人が仕事を失い、経済格差が広がりました。現在、制限は緩和され、大半の仕事は再開しましたが、経済はいまだに不安定で、誰もが不安のただ中にいます。
他者とのつながりを大切に
一方で今回のコロナ危機は、国内に存在するさまざまな不均衡や食料供給の在り方に対する人々の意識を高めました。誰もが困窮している中で、多くの人が他者への思いやりを深め、より過酷な状況にいる人々を支えたいと考えるようになっているのです。
例えば、わが国では年間およそ1000万トン(「世界自然保護基金」調べ)の食料が廃棄されてきましたが、最近、一般の人々が協力して困窮者向けの無料食堂や食料調達事業を次々と立ち上げており、支援の輪が広がっています。
これらはまさに、南アフリカの伝統である「ウブントゥ」の表れだと思います。これは「あなたがいて、私がいる」という意味で、人間の尊厳、他者とのつながりへの認識を指す言葉です。
コロナ禍で一段と困窮している人々への支援として市場に寄せられた食料(2月、ヨハネスブルクで。AFP=時事)
――社会全体が苦境にある中、人々の間で助け合いの絆が深まっていることに、希望を感じます。
ええ。皆が困難な状況にあるからこそ、助け合って乗り越えていかなければならない――社会がそうした方向へと向かう中、SGIの同志もまた、各界で模範の献身の姿を示しています。
感染のリスクと戦いながら、看護師として患者に希望を届けようと奮闘する女子部員、毎朝、御書を拝し、パンデミック(世界的大流行)との闘争の最前線に立つ誇りを燃え立たせて医療現場へ向かう壮年部員、新しい技術を駆使して一人でも多くの人に教育の機会をと挑む友――全員が信仰を根本に、他者のため、社会のために尽力しています。
ロックダウンの中でも智慧を湧かせて励ましを広げる南アフリカSGIの友(1月)
南アフリカSGIでは現在、オンラインを活用した毎月の世界平和祈念勤行会、御書学習会、座談会を柱に活動しています。
地区やグループでは、“同盟唱題”や小説『新・人間革命』の研さんに力を入れてきました。御書講義では「立正安国論」を学び、皆で広布に生き抜く使命を確認し合っています。
また、青年部はオンラインセミナーを定期的に開催してきました。毎回、多くの友人が参加され、その姿から、南アフリカの人々は今、深い哲学を求めているのだと実感しています。
さらに、皆が少しでも池田先生の指導や同志の信仰体験に触れることができるよう、編集部の仲間たちが努力し、機関誌「ライフ・トゥ・ライフ」をPDFにして提供することにしました。
南アフリカSGIの機関誌「ライフ・トゥ・ライフ」
――苦難に負けず、立ち向かう南アフリカの同志の姿は、大きな励みになります。
先日は、ある婦人部員から素晴らしい報告が寄せられました。大学で研究職に就いていた彼女は、突然、解雇されてしまいました。しかし“絶対に負けない”と決め、猛然と題目に挑戦。“共に宿命転換していこう”と友人を折伏し、オンラインで“同盟唱題”を始めると、友人が新しい友人を誘い、今では10人もの友人が一緒に唱題をするようになりました。
そうした中、彼女が時間を見つけて描いていた絵画をSNS上で見た人から、作品を購入したいと申し出があり、さらに、他の芸術家との合作の提案も受けたのです。結果として、前職より収入も増えることになったそうです。
こうした喜びの体験が多く寄せられる一方で、毎日が戦いの連続であることには変わりありません。
人類の宿命転換は南アフリカから!
題目を唱えると常に私の胸中によみがえるのは、2013年に来日して参加した広宣流布大誓堂(東京・信濃町)の落慶記念勤行会です。あの時、師弟の深い縁を改めて深く感じ、池田先生の弟子として使命を果たし抜こうと誓いを新たにしました。
同じ年、南アフリカのクワズール・ナタール大学から贈られた名誉社会科学博士号の授与式の謝辞で、先生は述べられました。
「南アフリカの天地から、新たな『アフリカの世紀』すなわち『生命尊厳の世紀』の夜明けが告げられる光景を、私は深い感動をもって、仰ぎ見つめております」
現在の状況を変毒為薬し、“人類の宿命を転換する勝負の10年”との指針、そして「21世紀はアフリカの世紀」との師の言葉を断じて実現する――それが私たちの誓いであり、使命です。南アフリカから、アフリカ全土、そして世界に、希望の哲学を広げていきます!