Q森正之:日本漢方の力 菅原健(漢方医)2024.2.7   Home

000035 (2024.4.24 08:17)

<文化>日本漢方の力 菅原健(漢方医)
2023413聖教新聞

 

治療のための実践的運用を重視

 皆さんは漢方に対して、どのようなイメージを持っているでしょうか。慢性病にしか効果がない、長く飲まないと効かない、体質改善のためのもの、西洋医学の補助的役割、などでしょうか。
 当院には「ほかでは治らなかった」と、さまざまな患者さんが来院します。そして、多くの方が漢方治療によって改善しているのです。
 漢方の起源は、2000年以上も前の中国、漢~三国時代に完成したといわれる、中国医学にあります。この頃、張仲景が著した『傷寒論』『金匱要略』をはじめ、『黄帝内経』『神農本草経』などによって、漢方の処方はほぼ完成したとされています。これらの医学書が日本に伝えられ、江戸時代に花開いたのが日本漢方なのです。中でも傷寒論と金匱要略は一番の根本的な教科書といわれています。
 その後中国では、中医学という思想や理屈にこだわった学問が発展したのに対し、日本では、吉益東洞らによって「患者が治ればよし、効くものはなんでも取り入れる」と実践的な運用が重視されました。これが本来の日本漢方なのです。
 具体的には、病気の根本原因のありかを六病位に分けて、それを治すための処方を行います。そんなことで実際に治るの?と思うかもしれません。でも、診断によって病気がどの位置にあるかを位どりすることで、多くの患者さんが軽快しているのです。

 

同じような肺炎でも異なる処方

 西洋医学との違いを新型コロナを例に紹介しましょう。
 2019年の終わりに中国・武漢で発生した肺炎は、のちに新型コロナウイルス感染症と呼ばれ、世界的な流行を引き起こしました。当院でも、日本での医療体制が決まるまでの数カ月、新型コロナと思われる多くの患者さんを診察しました。
 漢方の脈診では少陰病という見立てでした。普通の風邪の場合、太陽病になるので、単なる風邪ではないと判断したのです。漢方の考え方に従い、真武湯を処方しました。そうしたところ、呼吸困難の一歩手前で苦しんでいた患者が、咳もおさまり3日後には改善したのです。
 西洋医学のアプローチでは、肺炎で高熱と咳が出ている場合、解熱剤と咳止めを処方します。しかし解熱剤は、漢方では太陽病に対する薬なので、この場合は誤った使い方となり、病態が悪くなる可能性さえあるのです。
 その後、デルタ株に感染した患者も、数例診る機会がありました。初期のコロナとは違い、厥陰(体の最深部)に仮熱がある状態でした。この場合、漢方では涼膈散を処方します。解熱剤が発汗によって熱を下げるのに対し、これは清涼感のある生薬で熱を下げる働きをします。まさにデルタ株のためにあるような薬なのですが、西洋医学にはこのような働きをする薬はありません。

互いの良い部分を取り入れる

 漢方治療で大切なのは診断です。六病位のどこに位どりするか。中でも脈診が重要なのですが、感覚的な部分が大きいため、非常に勉強しにくい。それで、脈が診られたら大きく間違えることはなくなります。多少違ってはいても、治療によって悪くなることはないのです。
 ここまで漢方の力を紹介してきましたが、西洋医学が下で、漢方が上だと、言いたいのではありません。それぞれ、得手、不得手があるということ。
 例えば、漢方で手術をすることはまれです。江戸時代の漢方医・華岡青洲は、日本で初めて、全身麻酔を使用した乳がんの手術を行いました。しかし、盲腸などは薬の処方だけで治せますし、癒着なども剝がしやすくする処方があります。
 ただ、胃潰瘍が悪化するなどして消化管自体に穴が空いたようなケースでは、漢方では手の出しようがありません。外科手術した方が治療にもいいでしょう。
 実は現代では、内科よりも外科の方が、漢方薬を使っています。手術をすると一時的に消化管が動かなくなることがあります。その時に、大建中湯が使われるのです。多くの外科医がやっている方法ですが、これに代わる西洋薬がないのです。
 漢方と西洋医学と区別せず、両方用いていけばいいのにと思うことがあります。実際、江戸時代の文献を見ると、カタカナで書かれた薬がたくさんあります。従来の漢方薬だけでなく、蘭学で使用されていた薬も使われていたのです。=談

 

 すがわら・たけし 健友堂クリニック院長。麻酔医として、山梨医科大学付属病院、県立中央病院などに勤務。開業前の8年間は大学病院の漢方外来に。2011年に漢方、ペインクリニックの健友堂クリニックを開業。山梨大学医学部非常勤講師、健康科学大学特任教授。著書に『知られざる日本漢方のチカラ』『校正方輿輗解説講義』など多数。


持病の糖尿病や前立腺がんの他にこのところ夜中の尿意に悩まされている。ネットでたまたま「菅原健先生」と出会い、この本を今日読み始めた。なんとか漢方力で昼間の頻尿も治したいものです(森)。


健友堂クリニック 漢方内科の特徴

漢方を利用するメリット

漢方薬は、錠剤や顆粒、丸薬など、漢方にもいろいろな種類があります。

有効成分だけを抽出した一般的な薬(西洋薬)とは違い、漢方薬は少なくとも2種類以上の生薬が組み合わさってできています。


一般的な薬は病名に応じて薬を決めますが、漢方は患者さまの体質や症状に応じて、最適な薬を決めます。

漢方診断を正しく行うことで、体への負担を少なくし、患者さまそれぞれの症状に適した治療をすることができるのです。


保険治療で、お薬代を節約できます

通常漢方薬を使用する場合、自費による治療となることが一般的で、比較的高めの費用がかかることが一般的です。


当クリニックでは、漢方薬の処方を保険治療として行うことができます。 例えば葛根湯の薬代は1日の使用料で計算すると薬70円ですが、一般的な健康保険の患者様の負担は23円となります。


こんな症状に漢方治療が適しています

検査の結果以上に自覚症状があるような、ほぼ全ての症状に適していますが、一例として下記のような症状などが挙げられます。


風邪、二日酔い、冷え性、生理痛、月経不順、むくみ、便秘、下痢、腰痛、消化不良、頻尿便が出にくい喘息、アトピー、アレルギー、頭痛、膝関節痛、腹痛、下肢痛、神経痛、微熱、目赤、難聴副鼻腔炎不眠、不整脈、動悸など


※患者さまの状態により漢方薬以外の薬を使用することがあります。また手術が必要な場合は適切な病院を紹介いたします。


主な治療方法

 

むち打ち 積極的に動かして、体の構造の安定を目指します

 

一般的にむち打ちの治療は安静を基本として行われています。

当院では逆に積極的に「動かす」治療をします。

具体的には脊椎を動かし、透視装置を使ってミリ単位で徹底的に問題となる脊髄を明らかにします。

 

患者さまの体全体の構造に適しているのかを検討した後、針治療やアジャスターを使って構造的に安定した位置に脊椎をはめ込みます。

疼痛の原因が神経にある場合は、神経ブロック療法を行います。 さらに薬(漢方、西洋)を併用して治療効果を高めます。

 

腰痛、肩こり 漢方で筋肉の緊張をとりながら、骨格のズレを解消します

 

まずはX線による骨格の診断を行います。

構造力学の知識を用いて、症状の原因となる骨格のズレを見つけます。

針治療やアジャスターにより正しい位置に骨格を矯正し、漢方薬などを利用して筋緊張をとります。

また神経が原因の痛みの場合は、ブロック療法を行います。

 

片頭痛 体内環境を整え、漢方薬で根本的な原因を解消します

 

頭痛と言っても、片頭痛や群発頭痛といわれる脳血管拡張性の頭痛や筋緊張性の頭痛などいろいろなものがあり、それぞれ治療法が異なります。

 

まずは頭痛が起こらないような体内環境を整えることが重要で、そのために漢方薬を使います。

頭痛が起きた時には状況に適した漢方薬西洋薬を使い、交感神経が関与していると判断した場合には、交感神経ブロックを中心としたブロック注射を併用します。

 

スポーツ選手のケガ・調整 積極的に動かして、体の構造の安定を目指します

 

スポーツ選手の場合は特定の筋肉を使うことで、骨が筋肉によって特定の方向に動かされるため、骨格に微妙なズレが生まれます。実はこのズレが多くの場合筋肉の痛みの原因です。

そのズレを正せば筋肉痛、もしくは筋骨格系の痛みは自然と治っていくのです。

骨格をニュートラルポジションに戻すことで、全身の筋肉が弛緩します。それによって必要な筋肉のみ動かすことが可能になります。

 

治療は針治療、整体治療を組み合わせます。

漢方薬にはドーピングに当てはまらない薬も多いのでそれらも使えます。

それぞれのスポーツに適した調整も可能ですので、学校の部活から、トップアスリートとしてご活躍の方まで幅広くご活用できます。

 

妊婦の腰痛など 妊娠している方の体をいたわる治療法

 

妊娠中や授乳中は投薬による胎児への薬物移行があるので、薬は使えないことが多いです。

それにもかかわらず出産前の腰痛や出産後の骨盤恥骨周囲の疼痛は起こりやすいのが実状です。

 

当院は東洋医学の鍼治療や骨格解剖学に基づいた整体治療が可能です。