南先生と南博ゼミ(1)
永年ほったらかしだった書棚をさぐって、次の4書を持出し、参照してみた。
いちいちの紹介は次回以降にさせていただくとして、書名を掲げておく。
「学者渡世ー 心理学とわたくし」
1985年4月 第1刷 B5判 227ページ 定価1000円
著者 南 博 発行 文芸春秋
「日本人の心理」(岩波新書)
1953年 第1刷
1983年 第44刷 新書判 212ページ 定価 480円
著者 南 博 発行 岩波書店
「社会心理ー照魔鏡 1956年版」(カッパ・ブックス)
昭和31年3月25日 初版発行 新書判 245ページ 定価150円
L.ホグベン「コミュニケーションの歴史」(岩波現代新書)
(原題 FROM CAVE PAINTING TO COMIC STRIP by L.HOGBEN)
1958年9月30日第1刷発行 B5判 238ページ 定価250円
壽岳文章 林達夫 訳者 平田 寛 南博
◎南ゼミと社会心理研究所
社会学部後期で南ゼミを選んだ。(マスコミの有名人にあこがれる性格か)
ゼミの場所は、国立ではなく、四谷の蕎麦屋の木造の二階であった。
私の住所*を告げたら、「ほらね」とおっしゃった。”南ゼミ志望は下町出身者が多い“というのが先生の持論らしかった。
*台東区浅草田中町(現在の日本堤)
当時、浅草ないし下町の大衆文化の調査。研究をされていた最中だったからではないか。
ゼミテンは以下の通り。
佐藤昭一 片田広士 小林博 高橋清之 西出穆克 斎藤光正 中西光 田中国男 長瀬博昭
研究所で出会った人 石川弘義 石原慎太郎 佐藤孝吉
斎藤光正 は東映の大監督。
佐藤孝吉は2期あとのゼミテン、日本テレビの大プロデューサー。
のちほど詳しく紹介したい。
◎「学者渡世」を読んで
久しぶりに読んでみて、
南先生の世界の広さに改めて驚嘆した。
多彩な活動を貫く研究者としての姿勢に注目したい。アメリカでの豚、ゴキブリまで使った、条件反射、学習の実験。
帰国後の日本人の心理学を中心に、集団行動、社会心理学の形成と発展は、膨大な著書、研究活動の開花には目を見張るものがある。
先生の恵まれた幼少時代は、歌舞伎役者との家庭的交流もあり、音楽、美術にも目開いた、”恵まれた環境“であった。とてもじゃないが我々とは土台が違う。
南先生の略歴等については「照魔鏡」によくまとめて紹介してあるので、以下にシェアしてみる。
南博
大正三年ヽ東京赤坂で生まれた。幼年時代を父大曹の経営する、築地魚河岸近くの南胃腸病院(現在の癌研病院)で育った。昭和十三年に東大医学部へはいったが、「医者ではオヤジと比較される」のがくやしく、心理学に転向して京大を卒業した。昭和十五年秋にアメリカへ留学.コーネル大学大学院で実験心理学と社会心理学を研究して博士号をうけた.その間.太平洋戦争が起り、友人はみな交換船で帰つたが、彼は、「日本に帰れば牢獄へ行く以外は、軍国主義者に間接的にせよ協力させられる」と言って、一人アメリカに残った。しかし、生活は苦しかった。大学の心理研究所へ通う自転車の後に芝刈り器をくくりつけ。金持の庭でアルバイトしながら戦争の終わるのを待った。昭和二十二年春、アメリカ軍用船の船底にくぐりこみ、中国の苦力にまじって、敗戦の祖国へ帰ってきた。
その後ヽ彼のあくなき探求心は、「資本主義の爛熟国で勉強してきたのだから、社会主義の新興国の実態にもふれてみたい。」と、昭和二十七年に学者として最初に、ソ連・中共を訪れている。かくて、実践、行動的な彼は、大学の象牙の塔だけにとじこもっていられず、民間に自由な研究室もとめて社会心理研究所をつくった。彼は、いま「人間に対しては科学的でありたい。しかし、科学においては人間的でありたい。」というモットーをかかげ、研究グループの若い人だちと協同して、日本の現実社会の実態を究明しようと努力している。本書「社会心理照魔鏡」は、この研究所のチームワークを土台にして生みだされたものである。主著、毎日出版文化賞受賞「社会心理学」(光文社)。現在、一橋大助教授。
以下 次回に
P大島昌二:南博著『学者渡世』から学んだこと2021.2.13
(33ネット編集:森 注)
P大島昌二さんより「W佐藤昭一さんは南ゼミで学びゼミの幹事を勤め、上記『学者渡世から学んだこと』を読んで、南さんの著書を再読した」とのメールを頂きました。
なお、大島さんより
「L.ホグベン原著『コミュニケーションの歴史』(岩波現代新書)1958年9月30日第1刷発行」
に関連して、下記の後継出版物を紹介されました。
洞窟絵画から連載漫画へ―人間コミュニケーションの万華鏡 (岩波文庫 青 430-1) 文庫 – 1979/12/17
ホグベン (著), 壽岳 文章他 (翻訳)
「学者渡世」はまだ手に入ります(Amazon中古マーケットプレイス)。
森は4/24発注、4/27配達予定。135円+送料
森はゼミテンではありませんが熱心な受講生で、前期試験のレポート自由論題「休講の心理」、
後期は「心理学の流行」でした。